静かな鼻をすする音だけが響く卒業式を終えた今、私はたくさんの事にさようならを告げて回っている。
ちっぽけな考えしか持てない自分。
人を傷つけてしまう心を持った自分。
人の目ばかり気にしてる自分。
そして・・・気持ちをうまく伝えられない自分に。
冷たい校舎を静かに歩く。
使っていた机。
黙っていたけど友達とふざけていてへこましてしまった棚。
友達の机。
昼休みに座り込んで喋った日のあたるベランダ。
教卓。
細かいことにうるさい教師が神経質にチョークを動かしていた。
全てにたくさんの人の想いが詰まっている。
授業に集中できなくて窓から外を眺めたあの日。
部活中に意見が食い違って言い争いになったこともあっけ。
校舎の冷たい空気を胸一杯に吸い込んで歩き続ける。
もう少し。
あの角を曲がってすぐの階段に居るはずだ。
私が今までの自分にさよならを言うのに欠かせない人が。
私が好きになった人。
すごく不良っぽい感じなのに話してみるとすごく明るくて、おもしろくて、優しくて・・・。
1人、空を見上げて遠くを見つめていた。
行き交う人の足に潰されそうになるてんとう虫をそっと草の上にのせてあげてた。
落ち込んでる人を見るとさりげなく声をかけて話を聞いてあげてた。
いつでも彼は眩しくて・・・私の憧れだった。
話す時はいつも素直になれなくて、言ってから後悔してたっけ。
彼が好き。
心から笑い合える人。
人の心を受け入れることの出来る人。
彼の全てが私を励ましていた。
眼差し。後姿。声。
全てに私は励まされてきた。
それはこれからもきっと変わることはない。
鼓動がテンポ良くリズムを刻んでいる。
少しの不安と少しの緊張。
あと数秒で彼の黒く染めた髪が見えるはず・・・。
バイバイ。
ちっぽけな自分。
バイバイ。
人の心を知ろうとしない自分。
階段に腰掛ける彼は私を見て微笑んだ。
バイバイ・・・。
うまく気持ちを伝えられない自分。
「好きです。」
彼の目をしっかりと見つめて言う。
大きく見開かれた彼の瞳に自分が映る。
彼はゆっくりと腰を上げると私をもう一度見つめた。
私たちは唇を重ねた。
少し背伸びした私と少し屈む彼。
午後の日差しが私たちを映し出す。
これからの日々を私たちはどう生きていくのかな・・・。
私は彼の腕の中でそんなことを思った。
きっと幸せな時が待っている。
BYE BYE
弱っちい自分。
きっと近くに幸せの欠片は落ちている・・・。
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