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フォーマルハウト流星群

作者: てこ/ひかり

 「それで、フォーマルハウトはどんな具合だ?」

「はい。今も流星群の衝突が続いていて、予断を許さない状況です」


 軍曹からの報告を受け、私は机に肘をついたまま唸り声を上げた。モニタの向こうでは、被災した星の凄惨たる様子が映し出されている。住宅は潰れ、道路にはヒビが入っている。敵星との交戦中に、まさかこんな惨事に見舞われるとは…。


「どうされますか?」

「もちろん、現地の住民達、そして戦士達の安全が最優先だ。急いでベテルギウスには停戦要請を送れ」

「はい、すでにあちらからも停戦の申し出が届いております。流星群の被害が治まるまでは、一旦星間戦争を中断しないか、と」


 痛手を被ったのは向こうも同じ、か。

 私は部下達に頷いた。こうして、数百年続いたうお座とオリオン座の戦争は、たった数キロメートルの彗星の群れによって幕を閉じることになった。

「急いで救援物資を前線に送れ!」

「はい!」


 心なしか、部下達の表情も晴れやかに見える。長らく続いていた戦争から解放されたのだから、無理もないことだろう。食料、水、毛布、キャンピングカプセル数百個…瞬く間に物資が積み上げられ、被災星へと船が飛び立っていった。誰ともなしに、自然と軍部に歓喜の輪が広がっていく。久々に味わう閉塞感からの解放に、私も星を見上げながら思わず涙を流していた。






「それで、フォーマルハウトはどんな具合だ?」

「はい。今も住民同士の衝突が続いていて、予断を許さない状況です」


 数日後、モニタに映し出されたフォーマルハウトの様子を観察しながら、軍曹が悲痛な声で答えた。私は唸り声を上げた。


「数百個のキャンピングカプセルに、数万人の住民達が押し寄せてきて…現地は奪い合いになっています、まるで戦争です」

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