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袁紹的悪夢行  作者: 青蓮
第6話~辛毗佐治について
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辛毗~霧の許昌にて(5)

 辛毗と許攸は、一緒に霧に包まれた許昌を探索します。

 二人は手を取り合って出口を見つけようとしますが、それほどうまくいくでしょうか。

 どれくらい歩いただろうか。

 辛毗は許攸と並んで肩を落としていた。


「ここも、だめか……」


 目の前には、底の見えない穴がぽっかりと口を開けていた。

 その穴は道幅一杯に広がり、すっかり道を塞いでいた。


「やれやれ、これでほぼ全ての道がつぶれたな。

 この霧の主は、どうあっても我々を脱出させぬつもりだな」


 許攸が困った顔で、お手上げのポーズをとる。


 辛毗は苦笑して、それにうなずいた。


(こうして一部の隙もなく封鎖するところが、いかにも審配らしい。

 あいつは、やると決めたらとことんまでやり抜くからなあ……)


 辛毗と許攸は、とりあえず怪異からの脱出を目指して出口を探してきた。

 だが、どの通りも一定のところまで行くと塞がっていて通れないのだ。


  今のように、地面に大穴が開いている。

  もしくは、内側に棘を向けたバリケードのようなものが組まれている。

  もっとひどい時は、いつの間にかその通りの反対側の入り口に出てしまった。


 障害物は、どうやっても取り除けないものばかりだった。

 そのうえ、周囲の建物は残らず閉まっていて、通り抜けることもできない。


 辛毗と許攸は、この市街地の一角に完全に閉じ込められていた。


  いや、まだ一か所だけ行っていない通りがある。


 辛毗は最後に残った選択肢を思って、許攸に声をかけた。


「のう許攸殿、ここはやはり、あの道しかないのではないか。

 あれ以外の道があれば良かったが、そうもいかぬ感じだぞ」


 許攸も、渋い顔でうなずいた。


「ああ、そのようだな。

 最初から我々の進む道は、あそこしかなかったということか」


 辛毗と許攸は再び身を寄せ合って、市街地の中央に向かった。

 他の道がないなら、たとえ嫌な予感がしてもあの道を進むしかない。

 二人は追い立てられる獣のような重圧を感じながら、大通りを歩いて行った。



 まだ行っていない道、それは現世ならば丞相府へと通じる大通りだ。

 いや、そこも途中までは行った。

 だが、そこは他の道とあまりにも違いすぎていたため、怖くなって途中で引き返したのだ。


 今、二人はまたその大通りに戻ってきていた。

 歩いていくと、さっきと同じように急に雰囲気が変わる場所がある。


「きたぞ……ここからだ」


 許攸が低くつぶやいた。

 辛毗も眉間にしわを寄せ、霧の中に目をこらした。


  霧がたなびき、一瞬周囲の建物をあらわに見せてくれる。


 そこは途中までは、間違いなく許昌の大通りだった。

 しかしあるところから急に、建物が小さく、質素になる。


  まるでそこから先を、田舎の別の町とつないだように。


 許昌の中で通りと別の通りが不自然につながっていた場所はあるが、それ以外の場所とつながっているのはここだけだ。

 だから二人とも、ここには踏み込みたくなかったのだ。


  この道を進んだら、もう二度と戻れない気がして。


「しかし、結局ここしかないのだな」

「ああ、畜生め」


 緊張して肩をすくめる辛毗の隣で、許攸が毒づいた。

 許攸の目には、あからさまな憎悪が宿っている。


 それをちらりと見て、辛毗は違和感を覚えた。


  初めて見るものに、こんなに憎悪を覚えることがあるのだろうか?


 どうも許攸は、自分の知らない何かを知っていそうな気がしてならなかった。

 そもそも、この通りがおかしいと最初に気づいて警戒を促したのは許攸なのだ。

 だが、注意して見なければ周囲の建物さえはっきり分からないこの状況で、なぜそんなに早く通りの不自然さに気づけた?


  自分なら、まず気づけないようなところに目がいった?


 この霧の怪異よりも、許攸の態度が分からなかった。

 だが、許攸の思惑がどうであれ、今はこの道を進むしかないのだ。


「やむをえぬ、ここは助け合って進むしかあるまい」


 辛毗は鉄の鞭を汗ばんだ手でぎゅっと握り、異邦の通りに踏み出した。

 許攸は少しためらっていたが、置いて行かれることは怖かったらしく、しぶしぶ辛毗の後ろについた。

 目的とする以外の方向に進めないのは、ホラーゲームによくある話です。

 行きたくない方向にしか進めない、それ自体が恐怖なのです。


 辛毗と許攸は知らない場所につながる通りを見つけますが、許攸はどうもそこを知っているようです。

 許攸はなぜそこを知っており、そしてそこはどのような場所なのでしょうか。

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