表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
袁紹的悪夢行  作者: 青蓮
第1章~公孫瓚伯珪について
5/196

公孫瓚~裏易京楼にて

 サイレントヒルでは異世界へは穴を通って行くことが多いですが、この話にも自然な形で穴を登場させることができました。


 袁紹がこの城を落とす際に、地下道を掘って幾重にも築かれた城壁を無効化する作戦をとったからです。これだけ防御しておけば大丈夫と思っていたところで、穴から大量の敵兵があふれだしてきたのですから、公孫瓚にとっては確かに悪夢だったでしょう。

 公孫瓚は穴の中をひた走った。

 飛び込んだ穴は、思った通り地下道のようだった。

 暗い地下道の先に、光が差し込んでいる。


(おお、出られるぞ!)


 公孫瓚は喜んで穴の出口から這い上がった。


 そここそが、二度と出られぬ悪夢の罠だとも知らずに……。



 穴から出て体についた土を払って、公孫瓚はぐるりと周りを見回した。


「な、何だこれは!?」


 外に広がる景色は、先ほどの場所とそっくりだった。

 霧にかすむ市街地、背後には城壁……霧のせいで、完全に同じかどうかは分からないが。


 しかし、これは有り得ないと公孫瓚には分かった。

 自分はこの城を幾重もの城壁で覆ったが、市街地があるのは一番中だけのはずだった。


 有り得ないのはそれだけでは無かった。


  空が暗く、夕闇のように赤く染まっている。

  霧が重苦しく、ねっとりと粘りつくように感じる。

  それに……一歩踏み出すと、市街地が骨組みを露にした廃墟のようになっていた。


 似ているようで、明らかにさっきの場所とは違う。


(こ、これはいかん……!!)


 公孫瓚の背中を冷や汗が流れた。

 ここの気味の悪さは先ほどの比ではない。

 まるで、世界そのものが呪われているようだ。


(これはだめじゃ、早く逃げなければ!)


 出てきた穴に入ろうとして、公孫瓚は思わず悲鳴をあげた。


「げえっ!?」


 驚いたのも無理はない、つい今しがた出てきた穴に土がつまり、埋まっていたのだ。

 自分が出てからまだ一分も経っていないのに、音もなく穴が埋まってしまった。


(しまった、退路を断たれたか!)


 後悔したがもう遅い、公孫瓚はこの恐ろしい世界に閉じ込められてしまったのだ。



 公孫瓚は剣を抜いたまま、とりあえず歩き出した。

 帰れぬものは仕方がないし、ここに留まっても事態は解決しない。

 それに、先程の場所と違うならば、出口がどこかにあるかもしれない。


  公孫瓚の体をなめるように、霧が流れていく。


 少し歩いて、公孫瓚はふと立ち止まった。

 目の前に、見たこともない屋敷が立っていた。


(どこだ、ここは……?)


 公孫瓚は困惑した。

 こんな建物は城の中になかったはずだ。

 ここはまだ、城の中のはずなのに。


(不思議じゃ、まさに奇怪じゃ)


 さすがの公孫瓚も気味が悪くなってきた。

 これは本当に現実なのだろうか。


 公孫瓚は恐る恐る、屋敷の壁に手を触れてみた。

 感触は……本物だ。


  ただ、触ったとたんに毛虫が背を這うような不快感が走ったが……。


 公孫瓚は頭を振って思い直した。


「ええい、考えても仕方がない!

 これが妖魔の仕業であれば、元を断てば治まるであろう」


 理解できない事に遭遇したとき、深く考えることを止めてしまうのが公孫瓚の愚かなところだ。

 公孫瓚はあえて妖魔の巣くうおぞましい館に侵入する方を選んだのだ。


  来たよ、袁紹。


 おっかなびっくり門をくぐる公孫瓚の姿を、さっき殺されたはずの少年が建物の陰から見ていた。

 公孫瓚の背後で、門が大げさな音を立てて閉まった。

 この館のステージから、袁紹の悪夢の影が濃くなります。

 公孫瓚編はこの辺りで中間地点ですので、ゆるりとお付き合いください。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ