公孫瓚~易京楼にて(3)
話の流れの都合で、今回は少し短いです。
だいたい1000字~2500字くらいを一部として投稿していくつもりですが、内容の切れ目によってもう少し幅があるかもしれません。
城門にたどり着いて、公孫瓚は愕然とした。
門がどうしても開かないのだ。
門のつかえ棒が、錆で塗りこめられたように固まって、いくら力をこめても動かない。
(な、なぜ開かぬ!?)
剣で壊そうとしても、傷一つつかない。
むしろ剣の刃が少し刃こぼれしてしまった。
背後から、また唸り声とも呻き声ともつかない嫌な響きが聞こえる。
またも怪物が現れたのか。
(こ、これでは殺される!!)
公孫瓚はじわりと恐怖にかられていった。
霧の向こうで正体が見えない事が、余計に恐怖をあおった。
(な、何とかして城から出なければ!)
公孫瓚は城壁に沿ってがむしゃらに走り出した。
すると、いくらも行かないうちに、穴があった。
地面にぽっかりと、真っ暗な口を開けている。
入るべきか止めておくべきか……。
公孫瓚は迷った。
まず頭に浮かんだのは、これが袁紹の罠ではないかということ。
それに、自分はこのような穴を見たような気がする。
穴から、袁紹軍の兵士が止めどなくあふれてくる。
彼らが火を放ち、城は炎に包まれ、追い詰められた自分は……。
突然頭に浮かんだイメージに、公孫瓚は思わずよろめいた。
それは、まぎれもなく敗北の記憶だった。
いや、記憶のようにリアルなイメージだった。
この内容は、素直に記憶と認める訳にはいかない。
(もしこれが事実なら、わしはどうして今生きているのだ!?)
公孫瓚は必死で頭の中の悪夢を否定した。
何が何でも否定しなければ、生きていられなかった。
とにかく、今は逃げる事だ……。
公孫瓚は眼前の穴に視線を落とした。
もし今の記憶が正しければ、この穴は城外に通じているはずだ。
ここにいても事態が好転するとは思えないし、だめならまた戻ってくればいい。
「ええい、ままよ!」
公孫瓚は意を決して、穴に飛び込んだ。
血と膿と錆に埋もれた世界で、袁紹はほくそ笑んだ。
かかったな、公孫瓚め!
もうすぐ、あの愚かな男が穴を通ってこちらにやって来る。
悪夢で満たされた、こちら側に……。
だいぶ痛い思いをさせてもらった。
たっぷりお返しせねば。
べとべとに血糊がついた剣を片手に、袁紹は歩き出した。
扉が開かなかったり、道が崩れていたりしてルートが限定されてしまうのはホラーの王道ですね!