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袁紹的悪夢行  作者: 青蓮
第2章~袁譚顕思について
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袁譚~霧の中にて(3)

 この章では、袁紹の家族環境が徐々に明かされていきます。


 今回、袁譚の会話の中にリュウ氏という女性が出てきますが、この人は袁紹の後妻です。袁譚の本当の母ではなく、三男の袁尚の母親で、袁尚を跡継ぎにするよう相当激しく袁紹に迫っていたようです。息子が曹操に追い詰められて殺されても自分はちゃっかり曹操に保護されて生き延びている辺り、いろんな意味で女傑だったようです。

 それから、袁譚は何度となく同じような怪物に出会った。

 皆、袁譚を見つけると嬉しそうに尻尾を振りながら襲い掛かってくる。


(こ、ここは危険だ!

 とにかく、ここから離れた方がよさそうだ!)


 袁譚は霧の中から響く唸り声から逃げて、できるだけ一直線に走った。


 どのくらい走っただろう。

 袁譚はへとへとになって、とぼとぼと歩いていた。


「グルルル……」


 また、近くで唸り声が聞こえる。

 見れば、すぐ横に犬のシルエットが浮かび上がっている。


「う、うわあ!?」


 震え上がった袁譚の手を、つかむものがあった。

 驚いて振り向いた袁譚の前に、袁譚の腰くらいの背丈しかない子供がいた。


「お兄ちゃん、こっち!」


 子供の背後には、建物と思しき影があった。

 袁譚は子供に手を引かれて、転がり込むように廃屋に逃げ込んだ。


 慌てて廃屋の扉を閉めて、袁譚ははあはあと荒い息をついた。


「危なかったね、お兄ちゃん」


 子供が、袁譚の顔をのぞきこむ。

 その瞬間、袁譚はその子供の顔に懐かしいような感覚を覚えた。


(この子、誰かに似ている……?)


 袁譚は思わず、その子供の顔をまじまじと見つめた。

 子供の顔には、確実に自分の知っている面影がある。

 確か、自分は以前に、この子によく似た同じ年くらいの子供を見たような気がする。


  それは、古い記憶だった。

  まだ自分も成人する前、汝南の実家で……。


(そうだ、こいつ袁尚に似てるんだ!!)


 その子供の顔には、袁譚の兄弟たちと同じ面影があった。

 それに気づいたとたん、袁譚はその子供に親近感を覚えた。

 もしかしたら、親戚の子かもしれない。


「君、名前は?」


 袁譚が聞くと、子供は怯えたように目を伏せた。


「言わないと、だめ?」


 子供は消え入りそうな声で聞き返した。

 その目には、深い憂いがある。


「言わないと、ぶつ?」


 そこまで言われて、袁譚はしょうがないなあというように首を横に振った。


「言いたくないなら、別にいいよ。

 じゃあ、質問を変えようか。

 君の姓は、袁だね?」


 それを聞くと、子供は少しためらって、かすかにうなずいた。

 袁譚の予想通りだ。


(この子はやっぱり、袁家の血を引いてる……。

 でも、今生き残っている袁家となると……もしかして、父上の隠し子?)


 袁譚は知っている。

 父である袁紹の死後、正妻の劉氏が妾とその子供たちを皆殺しにしたことを。


(きっとこの子も、そうやって殺されたか……。

 それを逃れて青州に隠れていて、戦に巻き込まれたのかも)


 自分は確かに袁紹の長男である。

 しかし、袁紹の子供を全て把握している訳ではない。

 だいたい、青州の太守にされて遠ざけられてからは把握しようがないではないか。


(ったく、おれを後継者にしてくれたら、ここまでひどい事はさせなかったのに)


 そう考えると、腹が立ってきた。

 そもそも自分たちがこうなった原因は、父が三男を溺愛して自分を邪険にしたからではないか。


  だって、自分は今まで父に孝行してきたし。

  何も悪いことなんてした覚えがないし。


 なぜ自分が邪険にされねばならなかったのか、袁譚には全く分からなかった。


「お兄ちゃん、怒ってるの?」


 子供が少しだけ距離をとって、袁譚の顔色を伺うようにつぶやいた。

 いつの間にか、怖い顔になっていたらしい。


「いや、おまえの事じゃないんだ。

 ちょっと兄弟のことを考えててさ」


 袁譚は慌てて愛想笑いを浮かべ、子供を安心させるように組んでいた腕をほどいた。


 それでも近寄ってこない子供の顔を、袁譚は改めて見つめた。

 やっぱり、自分の兄弟たちに似ている。


(やれやれ、こいつも父上の偏愛と劉氏のせいでひどい目に遭ったのかな)


 もしかしたら、そのせいで怯えているのかもしれない。

 袁譚は少し試してみるつもりで、子供に話しかけた。

 袁譚の記憶として劉氏が兄弟を皆殺しにしたと書きましたが、実はこれは実際に演義にあるシーンです。


 劉氏は袁紹の死後、五人の妾とその子供を皆殺しにし、「死んでも袁紹に会えないように」とずたずたに切り刻んだとあります。そんな奥方と毎日暮らしていたら、それこそ袁紹の日常は針のむしろだったと思われます。

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