ブックリスト登録機能を使うには ログインユーザー登録が必要です。
◆Logos 2◆
03  /降臨
 その男との出会いは、ルイーザが(とお)にもならないときだったように思う。
 その頃から、ユーデリウスの侵攻はルイーザの住む星にも聞こえていた。
 それは、遠い未来のことではなかった。
 またたくまに星は焦土と化し、生命のなぎ払われた黒ずんだ大地へと変貌する。噂通りユーデリウスは交渉決裂すると、徹底的な焦土作戦をとる人物だったらしい。つまりは大虐殺なのだが。
 生き残った人々は、無残な光景に絶望しながら抵抗するすべもなく、降伏の文字すら意思表示するまもなく蹂躙された。
 地表をなめていた禍々しい炎が沈静化してきたころ、息も絶え絶えに再び噂が流れた。
(悪魔(ユーデリウス)が降りてくる)
 パニックにすらならない無気力な中、奇跡的に生存できたルイーザは幼心に決意する。悪魔を討つ――!
 
 “……家族の仇?”
 感情のない瞳で、悪魔は少女ルイーザを見下ろした。
 多くの人々が死んで、家族を失って、絶望に背押されて。
 非力でも一矢報いる勇気が少女にはあった。
 だが、あまりにも無力だった。
 “ならば何故、私を殺しそこなったのだ”
 勇気ある少女に、子供を相手にしているとは思えない冷淡な口調が、傷ついた心に冷たい針を刺す。
 “――しかし――お前か……そうか………いいだろう…生き延びたのだ。今ある過去を全て捨てろ。そして遠い未来を観るのだ。それがお前の成すべき事”
 遠い未来を――
 
 悪魔の名は、ユーデリウスと云った。
 彼に殴られて赤くなった頬がなければ、ユーデリウスの抽象的で理解を超える言葉に囚われていただろう。
 ルイーザの内面的な変化を知ってか知らずか、彼は戦災孤児のルイーザを警備兵に預けて立ち去った。
 ――あれが人なの……?
 ルイーザのまだ成熟していない心に、ユーデリウスは微かな陰影を落とす。
 彼女はそれを認識した。
『あの人は、ここに生きていない――』
 これからの生活が恐ろしく思ったことは、鮮明に記憶されることとなった。
 できれば二度と会うことがありませんように、という願いは空しく打ち砕かれる。
 ユーデリウスが、ルイーザの身柄を預けた部下の名前をグランスという。
 少し彼女が成長してから事実に驚くのだが、グランスはユーデリウスの忠臣であり、片腕以上の存在だった。あまり人間的でないユーデリウスと比べて、グランスは温厚且つ人間味にあふれる人物である。
 ユーデリウスと同様、妻子は持たないが好い人はいたようだった。
 そしてなにより、グランスにはユーデリウスには無い優しさがあった。
 行き場のない戦災孤児を引き取って、傷ついたルイーザを癒そうと努力してくれた。ユーデリウスと戦場を共にすることが多かったため、留守勝ちではあったが一人残る彼女に心を配ることは欠かさない。
 自然、ユーデリウスへの憎しみに心を閉ざしていたルイーザは、グランスに向かって開放していく。当然の流れといえば流れであった。
 だから、まさかそんなことはあるまいと、考えもしなかった。


◆主要キャラ

◆小説チャート

◆本館Site

・当作品より1千年後 →  Galactic ILLUSION
・当作品より2千年後(推定) →  異伝 『千年の夢幻』
・シリーズ完全独立物語:地球篇 → ダブル・イノセンス





+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。