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一日遅れの八月十五日

作者:七沢ゆきの
 私は駈けていく

(喜び勇む金色の髪とは別方向に)

 私は駈けていく

(丸刈りにされ顔に墨を塗られた少女たちと同じ方向に)

 私は駈けていく

(援護の艦砲射撃を受けながら港を出ていく船を横目に)

 私は駈けていく

(誰もが白旗を上げた次の日に襲い掛かってきたモノが上陸した島へ)

 私は駈けていく

(我々十一師団はサムライ師団であると、鹵獲したマンドリンをかき鳴らし次々と玉砕する兵士たち)

 私は見晴らしのいい占守島の丘の上で立ち止まる
 爆破音と銃声のなか、かすかに聞こえる兵士たちのコーラス

(この一戦を持ち堪えねば北海道はソ連のものとなってしまう)

(断じて我々の祖国が二つに引き裂かれることのないように。残してきた銃後の者が悲しまぬように)

(母さん さよなら さよなら さよなら!)

 彼らは知らない。
 自分たちの成し遂げた偉業がほとんど知られずに終わることを。

(この国が分割統治されなかったのはソ連軍の南進を彼らが足止めしてくれたからだというのに)

 彼らは知らない。
 これから戦争よりも恐ろしいものに出会うことを。

(敗戦後も長く捕虜収容所に押し込められ、無事に帰れてもアカだと倦厭される日々)

 八月十六日、占守島防衛戦
 旧日本軍唯一の勝利した対ソ軍戦

 そこは八月十五日が一日遅れで来た島

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