ネコがオレの腹の上に乗っかってるので重くて眠れない。
おまけにこのネコ、体重が百キロ以上ある。
たちの悪いことにオレが飼ってるわけではない。オレはヘビースモーカーだから換気のために窓を開けっ放しに寝るくせがある。どっかからやってきて勝手に寝やがるのだ。
うーん。うーん。苦しい。
「そんなに苦しいですかニャ?」
いまいましい。このネコ、人間語を操りやがるのだ。おまけに、語尾に必ずニャをつけやがる。いまいましい。
「苦しいよ。マジで苦しいよ」
すると、ネコはオレに乗かったまま、ため息をついてこう言い放ちやがった。
「恋より・・・・ですかニャ?」
むかっ。痛いとこ突きやがる。確かに恋に比べればこんなの苦しさのうちに入らねえ。
オレはうんうんうなりながら叫んだ。
「恋の方が苦しいよ! わかってんだろ!」
ネコは、はははと笑いやがった。
「もちろん。この前、たけしさん、女性に叩かれてましたもんニャ」
くそ。よしこちゃんのことか。確かにオレは叩かれていた。ムチで。よしこちゃんはストレスがたまるとオレをムチで叩くくせがある。昔、SMクラブで女王様をやってたそうだから、叩き方はうまいのだが、それはMから見ての話だ。あいにく、オレはMではない。痛いだけだ。
「見てやがったのか。ちきしょう」
オレの上でネコはけたけた笑ってけつかる。
オレは苦しくて苦しくてうんうんうなり続けた。ネコの重さか、それともよしこちゃんのことか。わからねえ。
「どいてくれよ」
「いやですよ。ここ、気持ちいいんニャもの」
「ちきしょう、ちきしょう」
オレは悲しくて悲しくてたまらない。ネコがどいてくれないから悲しいのではない。
よしこちゃんと来春結婚せねばならないことがたまらなく悲しい。うーん。うーん。ムチやだよう。ローソクやだよう。ハイヒールやだよう。(了)
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