夏のある日、哀は阿笠博士の家のリビングでファッション雑誌を読んでいた。
それはそうだろう。
哀は子供ではないのだから。
本当なら、コナンと何か話をしたかったのだが、当のコナンは朝早くから本日発売の推理小説を買いに行っていて、いなかったのだ。
哀「(工藤君も好きねぇ・・・推理物・・・まぁ、そんな彼が好きなんだけど・・・)」
そんな事を考えていると、博士がリビングにやってきた。
阿笠「哀君、君の母親から手紙がきておるぞ」
哀「えぇ!!?」
阿笠「ほれ、ここに・・・」
哀「博士、貸して!!」
そう言うと、哀は博士から手紙を引ったくった。
手紙を読んだ哀は、その場に凍り付いた。
{拝啓・阿笠博士様。
私は灰原小雪と申します。
このたびは私の娘を預かっていただき、ありがとうございました。
今度、帰国しますので1日だけあの子と話をさせてください。}
哀はガクガクとふるえた。
なぜなら「灰原哀」は彼女が博士と一緒に考えた江戸川コナンと同じ架空の名前、その哀に親がいるわけがない!!
女のカンかはわからないが、哀はすぐに直感した。
哀「(まさかこれは、黒の組織のしわざ・・・!?工藤君に知らせなきゃ・・・)」
哀がイヤリング型携帯電話を出そうとした時、玄関のベルが鳴った。
博士が出ると、20代前半の女性が立っていた。
小雪「哀、元気にしてた?」
哀「あなた、誰?」
哀は即、言い返した。
小雪「まったく、文代のトコのコナン君といいすぐスネるんだから・・・こんちには阿笠さん、私が哀の母の小雪です。」
『ちがうの、博士!!』と言おうとした哀だが、小雪に口を塞がれてしまった。
阿笠「はぁ、あなたが・・・哀君は元気にやっておりましたぞ」
哀「モゴモゴモゴモゴモゴ〜〜〜〜〜〜!!モゴモゴモゴモゴモゴモゴゴゴゴ〜〜〜〜〜〜ッ!!!(何納得してるのよ博士〜〜〜〜〜〜!!これはりっぱな誘拐よ〜〜〜〜〜〜っ!!)」
小雪「じゃあ、今日1日哀を預かりますので・・・」
暴れる哀だったが、口を塞がれている上に小雪の方が力が強い。
あっさり連れ出され、助手席に座らされてしまった。
哀は困ったが、この女の正体を確かめようと思い、ついて行く事にした。
哀「ねぇ、あなた、誰なの?」
哀は冷静に聞き出した。
小雪「あら、自分の胸に聞いてみれば・・・?それとも、まだ自分の立場がわかってないのかしら・・・シェリー?」
小雪の低く冷たい口調に、哀は、えぇっ!!?という顔をした。
哀「(バ、バレてる!!!この人、やっぱり組織の・・・!!に、逃げなきゃ・・・)」
哀はシートベルトを外そうとした。
しかし小雪は、不敵な笑みを浮かべた。
小雪「やっと気づいたようね・・・でも、もう遅いわよ・・・」
小雪がそう言うと同時に、後部座席にいた何者かが、哀の口をハンカチで塞いだ。
哀「うっ!!!(ク・・・クロロホルム・・・!!工藤君・・・助け・・・て・・・!!!)」
気を失った哀は、バッタリと助手席に倒れてしまった。
気絶した哀を乗せたまま、車はどこかに走り去った。
哀「うぅ〜・・・」
哀はうめき声と共に目を覚ました。
哀「うぅ〜ん・・・まだ気分が悪いわ・・・さっき嗅がされた薬のせいかしら・・・」
哀はひとまず立ち上がろうとして、自分の状態に気がついた。
哀「て・・・手が・・・!!」
哀の両手は、動かせないようにしっかりロープで縛られていた。
その上、体も身動きできないようにぐるぐるに縛られている。
だが幸い、両足は縛られていなかった。
哀「これなら、なんとか立てそう・・・」
哀は立ち上がろうとしたが、バランスを崩して転がってしまった。
哀「キャ〜〜〜〜〜〜!!!」
しばらくゴロゴロ転がった後、何かの箱にぶつかってやっと止まった。
哀「イッタ〜い・・・こんなトコ、工藤君には恥ずかしくて見せられないわね・・・」
哀がそんな事を考えていると、突然足音が聞こえた。
哀「だ、誰か上がってくる・・・!!(そうだ、寝たフリしていよう・・・)」
そう考えた哀は、気絶しているフリをした。
その後、ドアが静かに開いた。
???「コイツか、シェリーという科学者は」
小雪「ええ、まだ薬が効いて寝てるみたいだわ」
哀は、後ろをチラリと見た。
哀「(か、仮面の男・・・!?)」
男の姿を見た哀は、体がビクビクとふるえた。
なぜならその男は、シルクハットにマントと全身黒ずくめで、不気味な仮面をつけていたからだ。
哀でなくともふるえるだろう。
仮面の男「それで、この娘を匿っていた工藤新一というガキは、まだ見つかってないのか?」
小雪「ええ、マンダリンが必死になって探しているところよ・・・」
仮面の男「そうか、では下に降りていろ、サングリア」
サングリアと呼ばれた小雪は、ゆっくり下に降りていった。
仮面の男「工藤新一を捕らえるまで、オマエは生かしておいてやる。せいぜい寝たフリをしている事だな、宮野志保君・・・」
そう言うと、仮面の男は下に降りていった。
哀「バレてたのね・・・これからどうしよう・・・なんとかこの縄を解いて、工藤君に危機を知らせたいけど・・・」
哀は、自分の両手を縛っている縄に目をやったが、どう考えても子供の、しかも女の力では解けそうもない。
とりあえず、縄を解くのはあきらめた。
哀「そうだわ、探偵団バッジは・・・」
幸い、探偵団バッジは気づかれていないらしく取られていなかった。
続いて、携帯はと目をやった。
これも取られていない。
哀「これならいける!」
哀は転がった反動でイヤリング型携帯電話を取り出すと、急いで電話番号をプッシュした。
哀「お願い工藤君・・・早く出て・・・」
その頃コナンは、毛利探偵事務所で涼んでいた。
コナン「あっつ〜・・・マジで暑い・・・」
あまりにも暑いので、なにか飲もうと冷蔵庫を開けた。
コナン「それにしても、灰原はどうしたんだ・・・?話がしたかったのに・・・」
コナンがジュースを飲もうとした時、イヤリング型携帯電話が鳴った。
コナン「誰だよいったい・・・はい、もしもし・・・」
電話から聞こえてきたのは、哀の叫び声だった。
哀「工藤君、助けて!!私、誘拐されたの・・・」
コナン「なんだって!!それで今、どこにいるんだ?」
哀「古いアパートみたいな所よ・・・」
コナン「それでオマエ、動けるのか?」
哀「動けないの・・・後ろ手に縄で縛られてて・・・」
コナン「オマエをさらったヤツは、どんなヤツだった?」
哀「1人は私の母親と名乗ってる小雪って女で、もう1人は仮面の男よ・・・あ、そうだわ工藤君!あと1人マンダリンっていうのがいて、あなたを捕まえようと探してるわ・・・」
コナン「小雪、マンダリン、そして仮面の男か・・・(妙な感じがするな・・・)安心しろ、すぐに助けに行ってやる!おとなしくそこで待ってろ!」
哀「うん・・・待ってるわ・・・」
コナンは電話を切ると、毛利探偵事務所をあとにし走り出した。
コナン「灰原待ってろよ!すぐに助けてやっからな!!」
コナンが走り出した頃、哀は彼の事を考えていた。
哀「待ってる、か・・・私、やっぱり工藤君の事が好きなのかな・・・こんな絶望的な状況でも、必ず彼が助けに来てくれるって信じてる・・・」
そんな事を考えている哀が、気づくはずもなかった。
背後から忍び寄る仮面の男に。
仮面の男は哀に近づくと、一瞬のうちにハンカチを哀の口に押し当てた。
哀「うっ!!!(ダメ!クロロホル・・・ム・・・!!)」
気絶してしまった哀。
仮面の男は縄を取り出し哀の両足を縛ると、布で哀の口を塞いで部屋から出て行った。
なぜか、窓を開けて・・・。
一方、こちらは米花町を全速力で走っているコナン。
コナン「灰原が探偵バッジを持っていれば、このメガネで居場所がわかる・・・」
コナンは犯人追跡メガネのスイッチを入れた。やはり、バッジがメガネに反応した。
コナン「ここから700メートル先か・・・待ってろよ灰原!!」
あっという間に、コナンはアパートにたどり着いた。
コナン「着いたはいいが、どうやって入ればいいんだ?」
コナンが上をのぞくと、なぜか窓が開いていた。
コナン「窓が開いてる?不自然だが、まあいいか・・・」
コナンは違和感を感じながらも、塀に軽々とよじ登って窓の下の屋根に飛び移り、窓をのぞき込んだ。
コナン「は、灰原!!」
そこには手足を縄で縛られ、口を布で塞がれている哀が寝かされていた。
哀「ん、んん〜んん!?(く、工藤君!?)」
コナンは窓から入り込むと、哀にかけ寄り、縄と布を解いた。
コナン「大丈夫か、灰原?」
哀「工藤君!ありがとう・・・!!」
哀はコナンに抱きついた。
少し赤面気味のコナン。
コナン「ここから脱出するぞ。窓も空いてるしな」
哀「でも、ここから飛び降りても下で捕まるんじゃ・・・」
コナン「大丈夫だ、オレを信じろ!今はヤツらより灰原の方が大事だ!!」
哀「工藤君・・・」
仮面の男「フッ、今回は合格だな・・・」
コナンと哀が振り向くと、そこには仮面の男と小雪、マンダリンが立っていた。
哀「工藤君、この人達よ!私を誘拐したのは・・・」
コナンはしばらく3人を見つめていたが、突然大声で笑い出した。
コナン「フフフ・・・ハッハッハ!!!」
哀「く、工藤君・・・?」
哀はきょとんとしている。
コナンは仮面の男に向かって叫んだ。
コナン「もうヘタな芝居はやめようぜ・・・なあ父さん?」
哀「えぇ!!?」
驚く哀の前で、男は仮面とシルクハットを取った。
その正体は新一の父、工藤優作だった。
優作「さすがだな、新一・・・」
哀「こ、この人って、あの有名な工藤優作!?」
コナン「そう。世界的な推理小説家さ。それに母さんと博士も、とっくにバレてるぜ?」
有希子「さすがね、新ちゃん・・・」
阿笠「スマンな、哀君・・・」
有希子と博士は笑うと、次々に変装を解いた。
哀「ゆ、有希子さんに博士・・・」
有希子「それにしても、よく私達だってわかったわね?」
コナン「バーロー、わかるよ・・・仮面の男っていえば、父さんの小説に出てくるナイトバロン・・・オレは前にも同じ事をやられたからな・・・」
哀「でも、有希子さんは?」
コナン「オマエ、「コユキ」って言っただろ?ひらがなに直して並べ替えれば、「ユ・キ・コ」になるじゃないか・・・」
哀「あ、そうか・・・」
哀はやっと納得したらしい。
コナン「最後の1人が博士だってわかったのは、オレとオマエの正体を知っていて、かつこんなイタズラに協力するのは、博士か服部しかいないって思ったからさ。」
阿笠「見事じゃ、新一君!」
コナン「で?なんでこんなイタズラしたんだよ?なんか理由があるんだろ?」
優作「さすが新一だ、そこまでバレていたか・・・実は、インターポールの友人からオマエ達を小さくしたAPTX4869のデータが手に入ったと聞いたんだ。それで、この事を報告する前にオマエの覚悟を試そうと思って、この計画を立てたんだよ・・・オマエがドアを破ってオレ達を捕まえようとするようなら、不合格にしようと思っていたんだが、オマエはオレ達を倒すよりも、哀君の事を先に考えた・・・100点満点で合格だよ、新一・・・」
コナン「ああ・・・オレは何があろうと、灰原を守る!!」
有希子「それで、哀ちゃんはどうするの?」
哀「私も、絶対に工藤君を元に戻します!!」
優作「うむ、これで安心して新一を任せられる・・・」
有希子「来年ぐらいには、孫の顔も見られそうね・・・」
コナン・哀「な、何言ってるの?2人共・・・」
優作「いや、新一を婿にもらってほしいと話しているのだが。」
コナン・哀「えええええ!!?」
コナン「な、何言ってるんだよ父さん!!」
哀「そうですよ、私は工藤君を元に戻すって言っただけでー!!」
優作「いや、仲よさげなのでてっきり互いに好意を持っているモノと・・・なんだ、ちがうのか・・・?」
コナン・哀「い、いやそれは・・・」
優作・有希子・阿笠「ん〜〜〜〜〜〜?」
コナン「す、好きだよ!灰原の事・・・」
哀「わ、私も工藤君が好きです・・・」
優作「やっぱりそうか!」
有希子「じゃあ、今から5人で遊びに行きましょうか!」
と、なかば強引に白状させられたが、オレと灰原は両想いになった。
しかし、この時黒の組織の魔の手は、すぐそこまで迫ってきていた・・・
「黒の組織との決戦!!そして・・・」に続く!!
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