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fukuショートショート集
作:隆伊



幸福のボート


               幸福のボート


 海はどこまでも凪いでいた。
 男は一人小さなボートで漂流していた。
 
 彼はどこまでも運に見放された男。
 人生が船路なら、男の船は不幸のボート。
 生い立ちから幼少期少年期思春期青年期、そして成人した後も、
 良い事なんて一つもなかった。
 不幸な記憶ばかり。
 
 すべてをリセットして外国でやり直そうと船に乗ったら沈没した。

 もう、いい。

 すべてをあきらめている。

 だけど悔しくてたまらないのだ。
 死ぬ前に一言くらい言わせてくれ、というものだ。

 彼は立ち上がり天に向かうと罵倒した。
「やいこらてめぇ、神様って野郎、いるんなら聞きやがれ。どんな人生でも一つ位良いことがあるもんだろうが。てぇめぇ、俺のこと忘れてやがったろう。何が全知全能だっ。聞いてあきれらぁ。いいか。俺はこのまま死ぬんだ。てめぇの片手落ちだ。ざまぁみやがれ」
 言うだけ言ったらすっきりした。後はもう死ぬのを待つばかりだ。

 しかし何週間経っても、死は、その影すら訪れず、3年と3ヵ月後、男は通りかかった船に救助された。















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