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第二部 第五章 切ない気持ち
 葛城町という地名の駅近く。この夕方という時刻からか、かなりの賑わいを見せている駅周辺より少し北に外れた、駅近く。
 大分人通りも少なくなったその場所に、長く真っ直ぐに続くとある大道があった。それは、両端にマンションやら商店やら、色々な建物がごちゃ混ぜに建てられた、雑多とした舗装道路であり……。また、交通量はありながらも、歩行者用通路は白線で引かれただけという、歩く者にとっては少し危険でもある舗装道路であり……。そこに、ドキドキと胸を高鳴らせながら、早足で道をゆく少女がいた。それは、十六、七歳くらいの、大きな目をした愛らしい少女。先を削いだ、セミロングの黒髪を、軽やかに風になびかせながら、ほころびそうになる口元を必死で堪えて、
 会えた。
 もう一度、会えた!
 少女の胸の中は、そんな思いでいっぱいだった。舞い上がったような、ふわふわと空を飛ぶような気持ち。ハイというか何というか、とにかくいい気分全部ひっくるめたようなその感覚に、周りの景色すら分からず、ひたすら少女は道をゆく。
 そしてその少女とは……黛彩花。彩花はその思いをしっかりと胸に噛み締めながら、不意に歩む足を緩めてゆくと、しばし立ち止まり、
 しかも、名前まで分かっちゃった。
 そうして手にしていた鞄をギュッと胸に抱きしめ、
 柚月祥君……。
 その名前に陶酔するよう、そこに顔をうずめてゆく。
 もしかしたら、もう二度と会えないかもと思っていた。
 だが、叶った。
 そう、わずかな可能性にかけ、毎日、毎日、一生懸命図書館に通い……。
 良かった……。
 つくづく思うはそんな気持ち。
 それは彩花の、心の底からの切ない気持ち。
 そしてその始まりは……ニ週間前の、本当に偶然に起こったとあることだった。
 そう、兄と同じ大学へ行って、教師になりたい。それがずっと昔からの、彩花の夢であって……。
 だが、ずば抜けて頭がいいという訳ではない彩花、今のままではとても合格圏内に入るのは難しく……。
 まだ二年生ということであったが、暇を見ては図書館に通い、勉強していたのであった。
 特に今は夏休み。苦手を解消したり、忘れてしまったところを復習したりするにはもってこいと、遊びも控えて勉強してゆく彩花だったのだ。そんな彩花が、たまには息抜きと、趣味である読書の為の本を選んでいると……。
 あ、松野洋子の、「揺らされた椅子」だ。借りられてない!
 以前、読みたいと思っていたのに、借りられていて断念していた本があり、彩花の顔はわずかにほころぶ。そして、それを取ろうと手を伸ばすが……。
 と……届かない……。
 高いとはいえない自分の身長ではわずかに本に手が届かなく、困ってしまう彩花。そして、どこかに踏み台はないかと、辺りを見回してゆくと……。
 あ……使われている。
 少し離れた斜め後ろで、踏み台を使っている若い男性がおり……、
 うううー、
 と残念な気持ちになる彩花。そして、ならば仕方がないと、他に踏み台はないかキョロキョロ辺りを見回してゆくと……。
 ない。
 通路を挟んで向こう側も見たが……ない。
 探すのが何となく面倒くさくて、後ちょっとで届かないのが悔しくて、もう一度背伸びをしてみたり、ジャンプしてみたりして本をとろうとするが、やはり届かないものは届かず……。
 仕方ない、辺りをぐるっと回って踏み台を探してくるかと、振り返った、その時、
「あの……」
 目の前に、若い男性の姿があった。そして、その手には……、
「もしかして、踏み台探してる?」
 そう、彩花が欲していた踏み台があったのだった。それに、この人は先程の踏み台を使っていた人だと察すると、
 コクリコクリ、
 そう何度もうなずいてゆく。すると、それを見てその男性は、
「もう使わないから、これ、どうぞ。気がつかなくて、ごめんね」
 そう言って、手に持っていた踏み台を彩花のすぐ脇の床へと置いてゆき……。
 それで察するは……そう、
 どうやら、彼に気を使わせてしまったらしい。
 その途端、彩花は申し訳ない気持ちになってしまって……。
「い、いえ、すみません。こちらこそ。わざわざ声をかけていただいて……」
 ぺこりと頭を下げる。するとその時……。
「あ……」
 踏み台を持っていたのとは反対の彼の手、そこに持っていた本に目が留まる。そう、
 郷田弘の「解けないパズル」だ。
 それは、以前彩花が読んだことのある本で、めちゃめちゃ良いと感じた本であった。ジャンルは純文学。
 あまり有名でないながらも隠れた名作。それを彼が持っているのを見て、彩花はどこか親近感を覚えると、興味と嬉しさと共に、はっきり見ていなかった彼の顔を今一度見る。すると、
 ……意外。
 純文学とは程遠そうな、健康的に日に焼けた、今どき風な少年だったからだ。しかも、ちょっと彩花好みの容姿をしていて……。
 どきりとなる胸の鼓動。だが、時は容赦なく無情に過ぎ、
「じゃ、俺はこれで」
 そう言って、その場から彼は立ち去ろうとする。それに、彩花はどこか惜しい気持ちになり……。いや、自分の好きな本を持っている親近感、それを持っているのが純文学とは程遠そうな印象、つまりいい意味でのギャップ、そして容姿の好み。詳しく言うとそれらの気持ちから、このまま別れるのは惜しくて、そして、もし好みが同じなら、是非もっといい本を読んでもらいたくて、
「あ、あの……郷田弘の「解けないパズル」が面白かったら、崎谷藤次郎の「堕天使たちの夜」も、きっと面白いですよ!」
 つい、でてしまった言葉。
 それに、彼は振り返ってキョトンとすると、不意ににっこり微笑み、
「ありがとう、とりあえず探してみるよ」
 そう言って、再びその場から去っていったのだった。
 遠ざかる彼の背中、それを見送る彩花の心は乱れに乱れたもので……もうこれ以上本を探すことは出来ないと、ドキドキを抑えながら、彩花は席へと向ってゆく。そう、
 見ず知らずの人に、まさか自分があんなことを言えるなんて……。
 そして、出入り口付近、またカウンター付近でもある自分の席に戻ると、帰りにあの人がこの近くを通るかもしれないと、その思いでもう彩花は勉強どころではなくなっていた。
 なんだろう、これはなんだろうと思いながら、また、脇を人が通るたび、ドキリと胸を鳴らしながら、そちらの方へと向って顔を上げてゆく彩花。そして、ホッとしたり、残念なような気持ちになったり、色々複雑な気持ちを何回か繰り返していると、しばらくして……。
 あ、あの人……。
 本を持って、先程の人物が貸し出しカウンターへと向って歩いているのが目に入る。
 相変わらず手には本があり、一番上の本だけ、ここからでもその表紙が見える。それは、先程持っていた郷田弘の「解けないパズル」。そして……。
 本が、増えてる……。
 先程まで、手に持っていたのはあの本一冊だけだった。それが、二冊に増えている。外側にある本で、それが何の本だかは分からないが、何となく形やチラリ見える本の裏側などから、自分がすすめたモノのような気もして……。
 思い込みなのかもしれないが、少し確信に近いものを感じて、彩花の胸は更に締め付けられるように痛む。そして、カウンターで本を借りて、そのまま館内から出てゆく彼を、彩花は横目で見送ると、
 見当はずれかもしれないけど、とりあえず!
 そう思って、検索する為のパソコンへと急いで駆け寄った。そうして探すのは、勿論彩花が彼にすすめたあの本。パソコンの画面を食い入るように見つめながら、操作をしてゆくと、
 やっぱり……。
 貸し出し中となっていた。もしかしたら、違う人が以前から借りているのかもしれない。だが、すすめたその本も、特に有名という本ではなく……。
 他の人の可能性は、少ないかもしれないよね。
 自分に言い聞かせるようそう心で思って、彩花は深くうなずく。
 そして、次に思ったのは、
 借りたということは、いつかまたここに来て返す可能性も高いということ。返却ボックスを使ったり分館などで返したりしたら別だが、やはり、ここに返しに来る可能性のほうが高く感じ……。そして、
 はぁ。
 そこで彩花は、我に返ったようため息をつく。一体自分は何をやっているのだろうと、呆れ返って。だが……。
 だが、もう一度、彼に会いたいと思っている自分がいた。
 もっと受験勉強を頑張って、毎日毎日図書館に通ってくれば、また会うことが出来るだろうか?
 ふとこぼれた、切ない思い。
 会えるかどうかも分からないことにかけて、毎日図書館通いもどうかと思うのだが……。
 それでも、少しでも望みがあるのなら……。
 そうして毎日、出入り口とカウンターが視界に入る場所に陣取り、そわそわと館内に入ってくる人くる人を……本当に、全く勉強どころではなく……チェックする彩花がいるという訳であった。
 そう、毎日、毎日。そうして今日……。
 嬉しい! 嬉しい! でも……。
 歩道の真ん中で立ち止まっていた彩花、不意に何かを思い出したよう表情を曇らせて、鞄を胸に抱えたまま再びゆっくり歩き出す。
 そう、確かに、会えた。ずっと待ち望んで、もしかしたら来ないかもしれないとさえ思った今日という日が。
 家の家事もある為、一日中図書館にいる訳にはいかない自分、流石にこれだけ時が経つと、もう返しにきてしまったんじゃないかと、諦めの気持ちも少し出ていたのに。
 今日、それはあれからもう二週間もの時が経ってしまった日。
 流石にモチベーションを保つのにも疲れてきて、人探しもどこか投げやりになってしまっていた自分。
 諦めの気持ちに、やはり恋より勉強かと、少し思いに薄れがでてきてもいた、自分。
 だが……突然その日はやってきたのだった。
 時間は、もう四時を回ったころだろうか、不意に開いた扉に、もう条件反射のようになってしまった 顔を上げて確認、という行為を、何の期待もなくやってゆくと……。
 あ……。
 そう、彼だったのだ。
 肩から鞄をかけ、手には何か買い物をしてきたのか、白いビニール袋を提げて、カウンターの方へと向かって歩いている。そして、彼は鞄の中から返す本らしきものを取り出すと、
 あっ!
 そう、それと同時くらいに、ひらひらと四角い紙のような何かが床に落ちてゆき……。
 それを、少し驚いたような思いで見つめてゆく彩花。
 だが、彼はそれに気付くことなくカウンターの前に来て、手に持った本を司書の女性へと渡してゆき……。
 そして返却はあっという間、バーコードで読み取ることもせず、すぐに、「はいどうぞ」という女性の声がこちらの方にまで聞こえてきて……。当然の如く、そのまま回れ右をして去りゆく彼。どうやら、落としたその紙らしきものに気付く様子もなく……。周りの人間もそれに気付いてないようで、彩花は慌ててそれに近づくと……。
 書籍のコピー申し込み用紙……。
 拾って手にしたそれ、宿題か何かの調べに使ったのだろうか、生物に関する著作が何作か書いてある。そして、それは途中で止まっていて……。
 書き損じだ……。
 だが、それより彩花の胸を高鳴らせたのは、
 名前が書いてある! あと、住所も!
 柚月祥という名前を見て、ドキドキする彩花。
 住んでいる場所も、ここからそう遠くないことが知れ……。
 欲しい!
 この紙が欲しい!
 書き損じなのだから、もういらないだろうと、思わずそんなことを考えてしまう彩花。だが……。
 これは話しかけるいい切っ掛けでもあった。とりあえず、住所や名前なんかをどこかに書き写してから渡したい気持ちもあったが……それでは遅い。彼はもうどこかに行ってしまっている可能性もあったから。ならばと、
 柚月祥、柚月祥。
 頭に刻み込むように、何度もその名前を心の中で繰り返しながら、彩花は慌てて彼の後を追って、図書館の外に出る。すると、
 大分遠くなっているが、まだ視界に入る範囲にいた彼。それを見て彩花は、
「すみませーん!」
 大声で彼の背に向かって叫ぶ。すると、何度かのすみませんの後、
「?」
 一体何だという様子で、振り返る彼。そうして、足を止め、駆け寄ってくる彩花を待っていると、
「こ、これ、落としましたよ……」
 少し息を切らして、そう言って彩花はあの紙を渡していった。だがそれに、彼は訝しげな表情をしてその紙を受け取ってゆき……、
「ああ、昔書いたやつね。レポートで調べが必要になって……でも書き損じちゃって。入れっぱなしになってたんだなぁ……」
 しばしの時の後、目に理解の色を浮かべながら、彩花が思ったとおりのことを言ってゆく。そして、
「わざわざ悪いね。いらないものだから捨てちゃっても良かったんだけど……」
「いえ、でも、名前とか入っているし」
 彼の言葉に、やっぱりもらっておけばよかったかと、少し胸に後悔が走る彩花。だが、それは既にもう遅く……。ならば……、
 何か話さなきゃ。何か話さなきゃ
 これはお近づきになる絶好の機会。その為にわざわざ追いかけて、これを渡しに来たってのも少し……否、かなりあるのだから……。そして、
 この前読んだ本、どうでしたか?
 崎谷藤次郎の「堕天使たち夜」も是非読んでみてくださいね。
 どこの学校ですか?
 会ったら言おうと、前もって考えていた言葉達。
 だが、色々頭に巡らせても、どうしても勇気がなく、それらの言葉を口に出すことが出来なくて……。
 すると、
「わざわざどうもありがとう。走らせちゃったみたいで、悪いね」
 そう言って、彼は身をひるがえそうとする。
 それに、ずきりと痛む彩花の胸。
 そう、どうやら彼は自分のことを覚えてないらしいことを察して。
 途端に、心臓の鼓動は倍くらいに速くなり、余計言葉を続けることが出来なくなる彩花。緊張も増大して、
「いえ、いいんです……」
 か細く、そんな言葉だけが、彩花の口からこぼれる。すると、それに彼はニコリと微笑み、そして……。
 背を向け、去りゆく彼。彩花はその背を見つめながら、呆然と立ち尽くす。
 彼の名前を知れて嬉しい。でも、でも、
 いえなかった。何を話そうか、いっぱいいっぱい考えたのに、結局何も言えなかった……。
 確かに覚えてもらってなかったことも悲しかったが、それはこれだけ時が流れていて顔を合わせたのがあの瞬間だけであれば、致し方のないことかもしれない。
 だが……。
 あまりにも不甲斐ない自分の行動、これは悔やんでも悔やみきれず……。
 もう、これで会えないのかな……。
 まだ図書館通いはするつもりだったが、何も借りていかなかった彼、後残り少ない夏休みの間にやってくる確率は低いような気がして……。
 学校が始まったら、こう毎日図書館に通いつめる訳にはいかないし、彼も来るかわからないし……。
 もしかしたら、終わってしまったのかもしれないことに、残念がる彩花。そしてまた一方で、いや、本好きなら……あの本の選択は、本好きじゃなきゃ出来ないこと……きっとまたいつか来るはず、これで終わりと決めつけちゃいけない、とも思い……。
 そうして、彩花は気を取り直すと、
 柚月祥、柚月祥。家はここからすぐ近く……。
 何も知らなかった状態から一歩進めたことを思い出し、これだけでも良しとしなきゃと、忘れないよう名前や住所を何度も心の中で呟きながら、少し盛り返した心で彩花は図書館へと向って戻っていったのだった。
 そうして、夕闇が迫りくる頃の時間。
 ウキウキと喜んだり、また逆に少し落ち込みを見せたりしながら、帰途をたどる彼女の姿があるということだったのだ。
 今は、もう会えないかもしれないという、少し落ち込みを感じている時。
 高校生なら、せめて制服を着ていてくれれば学校も分かったかもしれないのに……。
 だが、そうは思っても今は夏休み、流石にそれも考え難く……。
 そうして、そんな複雑な気持ちを抱えたまま、彩花は家の前までやってくると、
 いかん、いかん、これじゃいかん! 
 心を切り替えて、
「ただいまー!」
 元気の衣をまとった声を上げ、玄関の扉を開けてゆく。そして、少し何かの音の漏れてきている、居間の方へと彩花は顔を出すと、
「お兄ちゃん、ただいま!」
 何事もなかったかのよう、明るい表情で居間の中に向って、もう一度そう声をあげる。すると、
 やはり、海斗は居間におり……。もれてきていた音とは、どうやらテレビの音だったらしい、のんびりそれを眺めながら、ソファーでくつろぐ彼の姿がある。そうして彼は……どうやらテレビに夢中になっていたようで……突然のそれに少し驚いたよう振り返りながら、
「ああ、彩花か。随分とゆっくりだったな」
「うん。ついつい勉強に集中しちゃって」
 少し遅くなった理由。実は祥のことをうだうだ考えて……なのだが、まさかそんなこと兄に言える訳がない。なので、明るくそう言って彩花は誤魔化してゆくと、
「荷物片付けたら、すぐ夕食の準備するね」
 軽やかに身をひるがえし、彩花は居間を出ていった。少しして聞こえてくるのは、タッタッタッタッ、という、軽やかに廊下を駆ける彩花の足音で……。
 しばし続いていたその足音、だがやがて、音は止まって静けさが訪れると、今度はバタンという扉の閉まる音がこちらの方まで響いてきて……。
 それに海斗は、
 部屋に、入ったか……。
 その物音でそれを察し、再びテレビへと向って意識と視線を戻してゆく。すると……。
 そう、それからほんの少しも経たないくらいに、
「旦那様……」
 不意に脇から聞こえてくるそんな声。
 それに、何事かとそちらの方を見遣ると、うすぼんやりとした、あの断髪の悪霊の姿があり……。
「どうした? 何かあったのか?」
 あまり芳しくない彼女の表情に、海斗もつられるよう表情を曇らせると、その女性霊は、
「はい。先程、柚月海斗の家に放っていた悪霊から報告がありまして……」
「報告?」
「はい。霊感の強い彼の同級生らしき少女が、家にやってきたと。彼女は柚月祥と我々の何かをつかんでいるようなので、念のため帰りに後をつけてみたが、霊能力によって途中ではね返されてしまった、と」
 その言葉に海斗は腕を組んでうーんと首を傾げ、
「また、神谷修子の仕業か?」
「いえ、それはなんとも……」
 今までのことは祥の中の悪霊から聞いて、大体把握しているが……。今回の件は……。
「交信してみますか? 奴の中の悪霊と」
 そう言って、あの合宿の時のように、手で輪を作ろうとする女性霊。だがその時……その存在を示すよう、タイミングよく彩花の部屋の方からガタゴトという音が聞こえてきて……。
「いや、今は時間がない。彩花がきてしまう可能性があるから」
 それに女性霊はうなずき、
「では、後で」
 それもいたしかたないだろうと、海斗もコクリとうなずき、
「またもや神谷修子、か……? 本当に厄介な奴だ」
 忌々しげにそう呟いてゆくのであった。


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