第四十四話 嵐の前、黒いナニカ
第三者視点
「それでは予選。開始ィィィィィィ!」
朝倉によって予選の開始が宣言された。
それぞれの思惑が混ざり合い、まほら武道会は混沌と化す。
「おぉぉぉぉ!前年度ウルティマホラ優勝者の古菲選手!たった一人で次々と選手を場外に!」
A~H組まで分けられた8つの戦場、D組には古菲と真名、他はほぼ一般人なので本選出場者は火を見るよりも明らかだ。
それぞれの組に上手く実力者が別れ、驚異的な実力を見せる。
そして一際注目を浴びる、-----いや浴びたグループが一つ
A組 シン・F・ハント、鈴科百合子
ゴオオオオオオオオ!とA組にのみ、超局地的台風が訪れる。
「「「「「うわぁぁぁぁぁ!?!?」」」」
「おおおおおお!謎の突風が選手を吹き飛ばす!どういう原理なのか!?」
朝倉は何とか持ちこたえながら実況を続ける。
「ここからは理解不能領域です。」
百合子は誰にも聞こえない声で呟く。
「くそ!なんだこの風!?・・・・・でも敵は減った!そこの優男!お前も場外に出てもらうぜ!」
シンと百合子の他の者、その巨体に伴った体重故か、何とか残ったボディビルダーのような筋肉達磨はある人物を狙う、世界に数人しかにない聖痕持ち、聖人を。
「ん?俺に来るか?」
ヒュン!!
「-----------え?」
シンはだるそうに二メートルはある筋肉だるまが放った拳を掴み、空き缶を捨てるように後ろに放り投げる。
「「「!!!!!!!」」」
その間一分半、約90秒という時間でA組は決着が付いた。
A組本選進出者、シン・F・ハントと鈴科百合子は畏怖の視線を気にせず退場する。
「初めのは風力使いか?それとも風のベクトル変換か?最後の筋肉塊がお前じゃなく俺に襲いかかってきたのは視覚阻害だろうが。」
「さて?」
「なんですか、あの雰囲気!後から出てきて!」
「ちょ、ちょっと刹那さん・・・・」
そして、全ての組の予選が終了した。
「お疲れ様です!これで全ての予選が終了し、本戦の組合せが決定しました!(何故か、予選前にトーナメント表は出来てたけど・・・)」
「本戦は明朝八時!場所はここです!それでは先にトーナメント表を発表しましょう!どうぞ!」
朝倉の横にある布のかけられた巨大な板が姿を現す、それはこの先の戦いを最も早く知る物。
第一試合
村上小太郎VS佐倉愛衣
第二試合
クウネル・サンダースVS長瀬楓
第三試合
シン・F・ハントVS中村達也
第四試合
龍宮真名VS古菲
第五試合
高音・D・グッドマンVS田中
第六試合
ネギ・スプリングフィールドVSタカミチ・D・高畑
第七試合
神楽坂明日菜VS桜咲刹那
第八試合
エヴァンジェリン・A・K・マクダウェルVS鈴科百合子
「いきなりタカミチとーーーー!?」
「アイヤー、いきなり真名アルか、しかもその後はシンさん・・・」
みな、各々の感想を口にする、しかしその中でも異彩を放つ二人が。
「戦うのは決勝になりそうだな、・・・・エヴァ、別荘借りるぞ。」
「あ、ああ」
シンはそう言って、会場を出ようとする。
「そんな数時間で勝てるほど私は甘くないですよ?」
一番奥にいた百合子ボソ・・・と言う。
「数時間ならな・・・」
百合子はエヴァの別荘、時間の流れをねじ曲げた空間を知らない。
「シンさん!」
シンは木乃香の呼びかけに答えず会場を後にする。
「貴様、何者だ。」
シンがいなくなったことでネギ達の視線は百合子に向く。
中には裏の世界の実力者もいるが、百合子はそんなこと気にもせず
「私は、・・・・ただの科学者ですよ。」
百合子はさっぱりと言うように手を広げ、首を振る。
しかし、それはネギ達を煽ることになった。
「巫山戯るなっ!」
刹那の百合子に近づき叫ぶ。
「貴様鈴科百合子とか言ったな・・・・どうやらシンと戦う気らしいが初戦は私だぞ?」
エヴァは激昂する刹那を押さえ前に出て、初戦の自分の存在を再認識させる。
しかし、600年の時を生きる真祖の吸血鬼の威風も、百合子には意味がなかった。
「決して切れない時の鎖に縛られ、輪から外れた過去の遺物が?」
空気が凍る。
「な、なんてことを・・・・」
「死んだな。」
周りの者はがく然とする、600万$の賞金首の不死の魔法使いにそんなことが言えたからだ。
とうの本人は俯き、プルプルと震えている。そして顔を上げると
「ハハハハハハハハ!齢15にしてこの私にそんな口がきけるとは!!!褒めてやろう!だがしかし!・・・力の差という物が見えてないようだな。・・・・・明日ゆっくり教授してやる。」
エヴァは笑う、それが怒りを越えた故か、本当に認めたのか分からない。
しかし他の者の脳裏に浮かぶのは、明日の虐殺だけだった。
「それでは」
と不気味な笑みを見せた百合子はシュン!と空間移動を使い、会場を後にした。
「フッ!・・・・ハッ!」
シン・ファナリス・ハントはこの学祭の大部分をこの別荘で過ごしている。
元々、学祭を楽しむ気はあまり無かったし、一緒に回るなどの約束もない(北欧に行っていて、刹那達が誘い損ねた。)
今エヴァの別荘にはネギ達もいる、しかし刹那や木乃香でさえシンの元には行っていない。
シンは自分が修行している所一帯に人払いの魔術結界を張っている、エヴァやネギも魔術の結界には気づけない。
今回の大会、シンは必要以上に刹那達を避けている。
しかしそのことにシンは気付いてない、邪魔無く修行したいのか、単に刹那達を巻き込みたくないのかは分からない。
しかし1つ分かっていることがある。
シンは無意識に、百合子と戦うことを楽しみにしていた。
それはまだとある魔術の禁書目録を読んでいた頃、物語の登場人物はシンにとって憧れの主人公の一人だった、その生き様、その強さに憧れた。
それと同じ能力の持ち主であり、非常に酷似した人物、鈴科百合子と戦うと聞いた時、シンの中は異世界人としてのケジメを付けるという使命感と共に『一つの感情』が目覚めていた。
それは喜び。
『一方通行という能力に挑戦できる』という喜び。それは後にネギがナギに抱く感情に近かった。
それに加えてある願望がカフェでの百合子との会談で生まれ、急速にふくれあがる。
『未元物質と戦いたい』
『超電磁砲が見たい』
『原子崩しを打ち破りたい』
『念動力に力で勝ちたい』
『窒素装甲を破壊したい』
『空間移動を捉えたい』
『心理掌握から逃れてみたい。』
もしかしたら百合子が使えない能力があるかも知れない。
だがシンは願う、望む、祈る、期待する、希求する 切願する 懇願する、熱願する。
『超能力と戦いたい』
初めはただの憧れだった。
後に生まれた感情は黒く、深い。
しかしシンはこの感情に悦楽を見いだす。
止めどなく湧き出る黒い感情は、憧れさえも飲み込み、シンを内側から染めていく。
そして明朝
「それでは選手と観客の皆様!ご入場して下さい!」
朝倉の声で龍宮神社の大門が開いた。
ある者は父の背中に追いつくため
ある者は友との約束を果たすため
ある者は好敵手と決着を付けるため
ある者は裏で暗躍する者を監視するため
ある者は2つの幻想の戦いの果てを知るため
ある者は、異邦人としてのケリを付け、自分に生まれた黒き願望を叶えるため。
1つの地に集う、
幾つもの思いが交差する地で、真の戦いが始まる。
「さぁて、幾つの能力を数えられるかねぇ?シン・ファナリス・ハントよ・・・」
次回から本選です。
ページ稼ぎが三連続くらいありましたが
華麗にスルーして下さい。
+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。
この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。