AdissalE...深海
夕方。
他の店も徐々に閉まり始め、商店街は店じまいを迎えた。
「二人ともありがとうwお礼に夜ご飯ごちそうするわ」
「ホンマにー?じゃあランちゃん家に行…」
「姫、そろそろ城に戻らんと」
「「えぇー」」
二人してそんな顔すんなや。
一応俺、仕事中なんやからしゃーないやろ。
「残念。じゃあまた今度、遊びに来て」
「ごめんな、ランちゃん。また来るわあ」
「うん、カズハちゃんの大好きなお好み焼き作って待ってるね」
「ありがとーwほなまたなー」
「またねー」
二人とも、互いの姿が見えなくなるまで手を振りあっとる。
女の子ってこーゆートコかわええよな…
二人で薄暗い街を歩く。
「なあ、へージ」
「なんや?」
「寄り道してもええ?」
「え、どこに…」
「こっちや!」
カズハが俺の手をひっぱって走る。
一生懸命にひっぱるカズハは、めっちゃ可愛い。
このまま止まって抱きしめたいくらい。
どのくらい走ったんやろうか。
城に戻る少し手前の道を曲がり、光の届かない森の中の道を二人で走っている。
行き先のわからないまま。
俺は、二人だけの世界への道に続いていたらいいのに、と何度も心の中で思った。
「カズハ…まだ走るん?」
「もうちょいやで」
道の向こうに光が見えた。
いきなり森が開き、ここは丘の上。
いままで来たことがないところ。
それ以上にびっくりしたのは…
月の光に反射し、きらきらと光る海。
「こんな所あるなんて、知らんかった…」
「やろ?ランちゃんに教えてもらったん」
さざ波に耳を傾ける。
「小さいころはよく一緒に海行ったやろ?」
「そやな…よく二人で城抜け出してな」
トーヤマ国の一部は海に面していて、夏はよく一緒に遊びに行っていた。
俺が仕事についてからは、カズハと二人で行くことはなくなっていたけど。
「また、へージと見れてよかった」
「…ん」
何年かぶりに見る海。
しかも、知らない場所で。
見たことがない夜の海。
「カズハ」
「なあに?」
「ありがとな」
やさしく、小さな背中を抱きしめた。
やっぱり、二人だけの世界に続いていた道。
その道の先では見える月は。
きらきら
きらきら
俺ら二人だけを照らしていた。
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