CarO...大切な人
「ごめんください」
あんまり言いなれてない言葉。
違和感を覚えた。
「はーい」
若い女の声。
ガチャ
「あ、へージ君。こんにちわー」
出てきたのは、カズハの親友、ラン・モーリ。
通称「果物屋のランちゃん」と呼ばれる彼女は、街の人気者。
確かに、美人で可愛らしいねーちゃん。
わけ隔てなく人に優しく、身分だからといって遠慮しない、そんな彼女に惚れた、とカズハは言っていた。
「どうも、うちの姫来とる?」
「うちの姫ねw来てるよー」
あかん、言い方悪かった;
なんか変ににやにやしとる。
…まあ彼女は俺らの関係知っとるから、もう隠すことないけど。
「あがってあがって」
招かれた手に逆らえずに奥へ進む。
「へージ!早かったなあ」
「姫…」
あまりのテンションの高さに気が抜ける。
「姫、また城を出て…国王にまた怒られますよ」
「やって…ランちゃんのおっちゃん今日おらへんから、あたしが手伝わんと、ランちゃん一人じゃ大変やろ?」
「・・・」
はあー…
怒る気も失せる。
自分が行きたいから、ではなく、友達の手伝い、といって城を抜け出す姫様がどこの国におるんやろうか。
…実際、ここにおんねんけど。
俺がため息をつくと、カズハが「怒ってる?」といってきた。
その顔が可愛すぎて、怒ってるなんていえなくなって。
「いいえ、俺も手伝います」
そんなことを言ってしまった。
三人で街へ果物を運び、商店街の一角に店を広げる。
ねーちゃんは果物を少し持って、店を離れて街の中へ。
俺とカズハは店番を任された。
道行く人は次々声をかけてくる。
もちろんといっていいほど、みんな姫のことを知っているから、どんどん集まってくる。
しかも、カズハの評判はとてもいい。
「今日もお手伝いかーい?」とか
「この前はありがとう」とか
「また子供と遊んであげて」とか
みんな、相手が国の姫であるということにかかわらず、親しみをこめて話しかける。
もちろん、カズハもいつもどおりに。
ほんとにこいつはすごいやつだ、と思いながらカズハを見つめる。
すると、ひとりの少年がカズハに話しかけた。
「このお兄ちゃんだあれ?」
どきッとした。
カズハは…なんていうんやろう。
恋人、だなんていえないことはわかっとるから。
「この人はね、あたしのとっても大切な人や」
…大切な人、か。
恋人って言われないのは少し悲しいけど。
うれしかった。
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