修行編 第65話 スコータイへ その2(91)
2
「チェンマイ?」それまで奥で大人しく飲んでいた男が健一たちの方向に振り向いた。
健一と目が合い、しばらくお互いが何かを思い出そうとする。
「あ!」2人はほぼ同時に思い出した。
「あんた、チェンマイのコック!」「女性2人といた男前!」そうこの男は健一がチェンマイに居たときに、提供した料理を評価し、気に入ってくれた、背の高い男前の男であった。
実は健一はその前にもバンコクのサイアムプラスで見ていた。その時は激怒して帰ったので余計にインパクトが強かった。もっぱら健一は単なるゴミ掃除をしていただけであったが。
「あなたがバンコクにいらっしゃるのは、転勤ですか?転職ですか?」以前見たアクティブなイメージと異なり、礼儀正しかった。
「ええ、バンコクに転勤になりました。しばらく料理人でしたが、今は料理学校の校長として、指導をしています」
「校長!さすがですね。あなたの料理は本当に美味しかった。昔食べたタイ料理は、辛いだけで不味くてひどいものでしたから、『何じゃこりゃ』と怒った事もありましたが、あなたのおかげでイメージがすっかり変って、今は普通に食べるようになりました。ありがとうございます。あっ申し送れました私の名前は森元と申しまして、横浜の会社でコンピュータのシステムエンジニアと言う仕事をしています」
「私は大畑です。コンピュータのお仕事ですか?私はその世界は本当に駄目で、料理一筋です。ところで、森元さんはお一人でのご旅行なんですか?」今度は健一のほうが質問をする。「いや、彼女たちと一緒ですよ。2人は今エステに行ってまして、一人暇なので近くを歩いていたらこの店を見つけたんですよ。
でも、あなたは常連さんなんですね」
「ええ、そうですね」健一は照れながら答えると、「大畑さん。今思ったのですがなんとなくあなたとは縁を感じてなりません。あっでも、そろそろエステが終わる時間なので、もっとゆっくり話がしたいのですが、私はこれで失礼します。また再会できるよう、私の会社の名刺を渡しておきますね」と言って健一に名刺を渡すと、森元はお金を払うと急いで店を出るのだった。
森元と健一の会話を静かに見ていた源次郎が健一に声をかけてきた。「健一君。本当に顔広いね。君がタイに来てから、本当にいろいろな人が来てね、大抵健一君と関係がある人ばかりなんだよ。まあ、こっちとしちゃ非常に嬉しいだけどよ」源次郎は嬉しそうであった。
健一が、ふと横を見ると天田が眠っていた。
「天田さん、寝ちゃったなあ。そうとしておこう」
この後健一は、一人源次郎と本当に話したかった、原澤の結婚式の模様などを語るのだった。
原澤夫妻は、10日ほど新婚旅行に出かけた。
向かった先はタイの東北部と北部を回ってくるという。
その間、健一は一人で頑張るが、この頃には開校前に育成した講師たちも慣れてきていたので、大きな影響は無いのだった。
翌11月になると、天田はチェンマイに行ってしまったので、源次で姿を見なくなり、突然退職したという国沢紀晶も、チェンマイからバンコクの源次に立ち寄る事も無く帰国してしまうのだった。
この年は、その後、健一の周りでは大きな事も無く終わり、1998年。
短期コースのほうはこれまでに入れ替わりの生徒さん相手に同じような内容の繰り返しになってきたので、やり易かったが、長期コースはそれほど簡単ではなかった。
+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。
この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。