修行編 第36話 本格修行開始 その8(63)
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「大塚さん、こんなところで織田信長の話が出てくるとは思いませんでした。
その点僕なんかは、まだ夢すら小さくて・・・」
「ハッハハハハ!健一君。若いのに何を言っているんだ。君はとりあえず念願のタイ料理店で働くことができたじゃないか。
それも私が指導した日本料理の腕まで身に付けて。
英語もタイ語も堪能だし、私から言わせれば無敵だよ。
私が、君の年の頃である10年前にはまだ、日本国内にいて、
今のような夢は抱いていなかったなあ。この地に来て5年だからね」
「あっはあ、わかりました。でも大塚さん、落ち着いたらまたご飯を食べに来ますね」
「当然だ。いつでも来たらいいよ。日本料理のことでわからないことがあってもな。
では、改めて乾杯!」「はい、乾杯!」
そういいながら、2人はお互いの夢を語り合うのだった。
翌朝から健一が働くことになった”ターベチェンマイ”は、
主に地元チェンマイの料理を出す食堂で、朝から夜まで通しで営業をしていた。
健一は、早朝から夕方までの勤務となり、事前にタイ料理が作れるとの情報が入っていたので、初日から厨房に入り、シェフの下、調理補助として働き始めた。
もちろん、鍋やフライパンをいきなり触るような事は無く、
勤務初日に始めた事は、バンコクのサイアムプラスの時と同様ゴミの掃除であったが、
今回は厨房のスタッフの対応に“愛”を感じるのだった。
ゴミ掃除から始まって皿洗いなどの洗い物の雑用が中心ながらも、
近くでシェフが鍋を振るっているのを見ることが出来たり、健一がいろいろな質問をしても、忙しくない時は皆優しく教えてくれたので、居心地も決して悪くは無い。
健一は、あくまで青木貿易から派遣された日本料理人の立場であったので、メインは日本料理。ここで作る料理は3品。
”寿司盛り合わせ”と、”てんぷら盛り合わせ”さらに日本風の”寄せ鍋”
メニュー掲載は、健一が店に慣れるのを考慮し、1ヵ月後ということになっていた。
したがって、厨房での雑用をこなしながら、同時にこれらの準備を行うのだった。
日本料理の3品は、健一のほうが指導する立場であった。
料理長をはじめ、スタッフはみんな青木貿易から届けられる食材やそれを使って健一が試験的に作る寿司やてんぷらの手順を興味深く注目し、健一にいろいろ質問を浴びせてくる。
健一も丁寧に説明しながら、試作品を振舞うと、
みんな期待と不安を感じながら食べてくれるのだった。
予定通り、健一が働き始めて1ヵ月後にJAPANメニューとして日本料理3品がデビュー。
この日以降、健一は雑用中心から、日本料理のオーダーを受けると即座に厨房で他のタイ人料理人に混ざって、料理を作り続ける。
社長のウイチャイもその健一の活躍姿を見て、目を細めるのだった。
バンコクの前の店”サイアムプラス”との違いに、
「今回は大丈夫そうだ」と健一も一安心するのだった。
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