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修行編 第26話 いざ、チェンマイへ その4(53)


「おー大畑君。ちゃんと来てくれるとは!
まあ信じとったが、でも先に連絡してもらわんと。急に来たらビックリするがな」
健一は頭を下げ、「申し訳ございません。ぎりぎりまで悩んでいたものですから、
昨日バスでチェンマイに来ました」

「そうかいな。来て間がないと思うけど、どうやチェンマイは?」嬉しそうな中堀の問いに、「確かにノンカーイより都会ですが、バンコクほどでもなく、住みやすそうですね。
昨夜は旧市街で宿を取ったのですが、堀に囲まれていて、城壁のような物も残っているんですね」

「そうやなあ。まあ、バンコクと違って歴史を特に感じる町やなあ。でも嬉しいわ。
大畑君が来てくれたさかいに」「早速ですが部長」健一は真顔になる。「部長いうのはやめてよ。今は部下やないんやから中堀でええよ」

「あっでは、中堀さん、ノンカーイで話をしてくれた食堂の件はどうなりました?」

中堀は、しばらく考えるしぐさをしながら「ああ、それなあ、先日チェンマイの日本人会の会長さんにおうて、聞いてみたんや。
すると探してくれる事になったんやけどな、この前言った通り、ビザの問題があるやろ。
だから悪いけど、とりあえず週3日ほど日本料理店で研修を受けて欲しいんや。

「日本料理?いやあそれはちょっと・・・・」
チェンマイに来ていきなりタイ料理とは全く違うことをやるように言われて暗い表情になる健一。

「だから、探すいうてるやろ!
とりあえずな、ノンカーイでも話をしたとおり、そのままタイ料理店への就職は無理なんやて。
だからな、表向きだけでも日本料理のシェフ言うことにせんとあかんのや。
それ話したらな、健一君を研修生として受け入れてくれるところがすぐに見つかったんや。
ほんま運ええで。だからな、日本料理も学べるおもて、プラス志向で考えんと!」

中堀の怒声に近い説教に、健一は、唯静かに聞くしかなかった。
「そういうて、いいところは急には決まらんからなあ〜研修の無い日はゆっくりしとき」
「はあ」少しため息を吐く健一。

「あ〜生活のことかいな、それはわいが面倒見たるで」中堀が笑顔に戻り健一の右肩を軽く叩く。
「あっそうや、どうしてもタイ料理も勉強したいんやったら、
近くに屋台出しとるタイのおばちゃんがいてな、そこはほんまにおいしんや。
研修の無い日。2日ほど頼んだら手伝えるかもしれんな。
まあ給料とかは期待できんけど、手伝い言うことでな。
もちろんその間は、わいが、あんじょう考えるさかいに」

健一は、途端に嬉しそうに「それは是非お願いします。日本料理だけだと、方向性が変りそうな不安もありますし、新しい職場で僕が使い物になるかどうかもわからないので、例え少しだけでもそういう時間があれば」

中堀笑いながらは、「ハハハア!よっしゃ、そうしたらついといで」と事務所を出た。
健一はその後をついて行く。ビルの下の駐車場に置いてあった車に乗り込み、約5分ほど走った所に市場があり、中に入っていくと、食堂の屋台が並んでいるところが見えるのだった。

その中の1軒に、やや年老いた感じの女性が、やっている屋台を目指すと、中堀は親しそうに、「ディナおばちゃん。調子はどう?実は日本の若者が週2日ほど、料理の勉強がしたいいうて、屋台を手伝いたい言うてな、朝からお昼過ぎまで手伝わしてくれんかなあ」とタイ語で声を掛けた。

屋台で作業をしていたディナは「ああ、でもお金とか出せないけど、それでよければ」話の中に健一も入り、タイ語で「サワディクラップ。始めまして。僕は今、タイ料理の修行をしています。新しい仕事先のレストランが見つかるまで手伝わせて下さい」
ディナは何度もうなずき話はまとまった。
こうして健一は、週2回、研修の無い日から無償で屋台を手伝う事になった。

「ここは、1週間に1回は食べにきとるんや。ディナのおばちゃんの麺本当に美味しいんやで」中堀は得意そうに言うのだった。


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