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悪魔の恋は『なにいろ』ですか? 作者:柳シンム

エネゼウル

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犬の如く待てのちの食事


「お待たせしました、マナ様。お食事です」

「待ってはおらぬ。サイとお喋りしておったでのう」

「さようで。では、どうぞ、お召しあがりください」

「うむ。主も食べるのじゃ。今宵は長くなる」

「そうですね。では、失礼して……」

 イミフ。ツチイエは帰ってきたと同時に食膳を運んできた。後ろにはカザオニの姿。カザオニも食膳を持って帰ってきた。一膳だけなのでサイの分だろう。

 カザオニは食事をどうするのだろうか、とサイは変なところに気づいた。宿の宿泊者数にカザオニは含まれていない筈だ。宿の人間に見つかったらまずいのでは?

 サイがくだらない心配をしているとカザオニがサイの前に食膳を置き、箸を差しだした。いつもならば受け取るところだが、事前にマナから注意を受けている。

 食事は雇い主と上司が先。まるで飼い主の食事を待てと言われる犬のようだとサイが思ったのは内緒だ。

 カザオニはサイが受け取ってくれないので無理矢理食べさせようとしたが、サイはさりげなく躱して食事中であるふたりの茶を淹れに立ち、終えて元の場所に戻った。

 マナとツチイエに茶を給仕してサイは部屋の壁にもたれて欠伸した。なんだかんだと疲れた。
 疲労を風呂で取り切れなかったのは風呂の回復力より疲労が勝っている為だろうな、とサイは判断し、瞑目してふたりの食事が終わるのを待った。

 途中、カザオニがまた殺気を放出するのを感じたがカザオニはこどもではないので大丈夫だろうと放置した。毎回止めて宥めるのも面倒だったし疲れるのが一番の理由。

「……馳走であった。サイ、食事にするといい」

「承知し……はい」

 先と同様返事をしようとしたサイだったがツチイエに睨まれたので渋々言い直した。言い慣れた言葉をいちいち直すのは面倒臭いなと思ったサイが食膳の前にいき、座ってそしてイミフ。

「カザオニ?」

「……」

 なぜなのか。先は箸を渡そうと、食事をとらせようと躍起になっていたカザオニなのに今はなぜかサイに食事をしてほしくなさそうにしている。……断食刑だろうか?

 カザオニの不可解さにサイは首を傾げる。食膳を見てもどこもおかしなところはない。先ほど見たままでにおいも変わりなく、まだほのかに温かい様子。

「手掴み?」

「……」

 サイの阿呆な回答にカザオニはガクッとなることもなく、必死で反対だと示している。困ったサイがマナを見ると女王はサイの淹れた茶を優雅に飲みながらサイを見る。

 マナは傍観の姿勢だったが、サイはなぜカザオニがそこまでするのかわからなかった。それに反対の仕方が弱い気がした。カザオニは本当に反対する時、体を張って本気で妨害してくる。

 なのに、それにしては弱い反対だった。まるでやめてくれると助かるが、サイがその気なら、いいと賛成しているようでもあった。ことごとくイミフ。

「カザオニ、主を困らせるな。サイ、構うな。食事をしろ、なにしろ、これからだからな」

「なにがか」

「なにも。明日にはすべて忘れている」

 イミフで変なやつである。と、それがサイの感想だった。ツチイエを変人認定したサイはカザオニがツチイエに怒りで唇を歪めた一瞬の隙を衝いて箸を奪った。

 カザオニの無表情が悲しそうに歪むがサイは首を傾げ、言いたいことがあるなら書けとばかり、荷物からメモ用の木簡を取りだした。そして、自分は食事をはじめる。

 汁に箸をひたして、箸先を少しだけ吸ってみるが変な味はしない。普通の一般家庭の味だった。これで食事代を取れるのだから飲食業はずるいなあ、とサイは思いつつ食事を進める。

 シァラ国も食事はウッペのものに似ていて山菜が一番のご馳走になっているようだ。煮物を頬張って、ケプヤを齧り、食事を終えたサイはなぜか、ツチイエが淹れてくれた茶をもらった。

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