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悪魔の恋は『なにいろ』ですか? 作者:柳シンム

トェービエ

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着々


 雨の音が聞こえる。

 雨は夜が明けても聞こえ続けていた。隠れ家の中でサイはぼんやりと目覚める。一番に目に入ったのは火が消えた焚き火。その奥には青年の体が横たわっている。

「……ココリエ」

 サイがココリエを呼ぶ。
 なんとか目覚めてほしいと願っての呼びかけ。

 ただ、もし目覚められたら、と想像してサイは頬を赤らめて悶えた。したことを白状するのが恥ずかしい。勝手に口づけていたことを白状しなければならない。

 そう考えると、サイはもうしばらくは、解呪までは起きなくてもいいと思ってしまった。

 ココリエの顔を眺め、そんなことを考えていたサイはしばらくして消えていた焚き火に火をつけた。

 昨晩同様ケプヤを串に刺して焚き火で炙る。それが温まるまでの間でサイは干し肉を噛みはじめる。

 しばらく噛んで柔らかくしたそれをココリエにまずは与える。その日はじめての口づけで胸が痛んだ。精神的なことではなく、もっと物理的に、だ。

 胸の痛みがサイの神経を刺すが、サイはとりあえずココリエの口に噛みほぐした干し肉を押し込んだ。青年の喉が鳴って、干し肉が飲まれる。

「……ぅ、く」

 身を起こしたサイは胸の痛みに呻く。胸の辺りにある肌着の布を掴んで深く呼吸し、痛みを和らげようとするが、おさまらない。着物を脱ぎ、肌着をずらしてみると昨晩にはほくろのようだった暗緑色の小さな点が花の花弁のように紋様となって胸の中央に広がっていた。

 呪いの転移が順調に進んでいる。そのことを確認したサイは紙の裏を見た。十一の数字が歪み、十になった。

 紙を膝の下にはさんだサイはさらに干し肉を噛む。

 一枚ずつ口に含んで噛みほぐし、ココリエに食事を与えていく。ケプヤがじんわりと温まったのを触れて確認し、それも噛みほぐす。飲み込めるまで噛んでから与える。

 朝餉をココリエに与えたサイは続いて自分の食事をとる。しかし、そこでひとつ異変を覚えた。肉の旨みとケプヤのほのかな甘みが薄らぼけている気がしたのだ。

「味覚の麻痺が早くもではじめたか?」

 肉を噛み、ケプヤを頬張りながらサイははてなしたのだが、疑問を確信として処理し、今後は味の一切が感じられなくなるのだろうと考えた。ココリエのように。

 あのしっかりした味つけの肉アレブイヤベースっぽいもの、アレがわからないと言うのだから相当だ。
 舌先の快楽は人間が共通的に楽しめる娯楽であると思えるだけにそれがないのは少し淋しい気がする。

「……アホ臭」

 自らを阿呆のにおいがするように言ったサイは食事を終えて雨のやみ間を待った。雨がやんだら今夜の薪を取りにでる必要がある。あまりココリエをひとりにしておくわけにはいかないが、それでも必要なものである。言い聞かせて不安を拭ったサイ。今はただ待つのみ。

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