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ワンチャンきびい! 作者:のりのりのりこー
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EP14 超大手スーパーホワイト企業

※ギャル語監修…零崎

あれから2日が過ぎた…

アイカと漆原さんは毎日欠かさず顔を見に来てくれている。

これまでの出来事が夢だったと思えるくらい世界が変わっている。
いや、世界が変わったんじゃなくて、僕のポジションが変わっただけなんだ。

ベッドの上で上体を起こし、ボーッとそんな事を目覚めてから毎日、考えていた。



























「晃くん、体調はどう?」
「お陰様で、歩きたいくらいです」

白衣に眼鏡の艶っぽい女性がそう声をかけてきたのでそう答えた。
彼女は僕の主治医で南静香という名前だった。

南先生が続ける。

「そうね…そろそろ歩いてもいいかもしれないわ」
「本当ですか?」

アイカや漆原さん、南先生からも聞いた話を統合すると、僕は丸3日、再生ポッドという物に入れられていたそうだ。
たぶん、あの水の中にいた時がそれなんだろう。

目を覚ましたので、コンディションを見て、4日目にベッドに移動された。
あの日、漆原さんと山王寺社長から詳しく聞いて、僕はネオライン・ジャパンのヒーロ―となった事を知った。

振り返って考えていると、南先生が歩行器を持って来てくれたのでお礼を言う。

「ありがとうございます」

捕まって恐る恐る立ち上がってみる。

「あれ?」

思わずそう口にした。
病院で見かけるリハビリが必要な人くらい弱っているかと思っていたのに…

それを聞いた南先生が心配そうに声をかけて来る。

「どうかしたの?」
「いえ…歩行器なしでも大丈夫そうです」

少し病室内をうろうろしてみる。
そんな僕を見て、南先生が自慢気に話す。

「うふふ…すごいでしょ?うちのナノテクノロジー」
「はい、信じられないです。それにリハビリが必要なくらいなのかと…」
「晃くんの場合、今日でまだ6日目よ?風邪引いて寝込んで1週間で、体が動かなくなったりしないでしょ?」

そう言われてみればそうだ。
そのまま僕は屈伸をしたり、アキレス腱を伸ばしたりしていると彼女は続ける。

「社長が上手に君のお腹だけを貫いてたから、臓器の損傷も少なかったしね」
「そうなんですか」

思い出してゾーッとする。
そんな僕の気持ちを無視して、彼女はさらに続ける。

「胃を中心に膵臓、脾臓、肝臓、横行結腸を傷付けたけど、腎臓、大動脈、大静脈は避けて即死しないように刺してたわ」
「うわぁ…やめてください。思い出すと痛いです」
「あら、ごめんね、うふふ」

いろいろあって、あっと言う間だったけど、僕はヒーローになってまだ23日。
1か月も経っていない事に気付く。

漆原さんとの付き合いも23日、アイカとの付き合いは9日。
すごい長い時間、一緒に居た気がするのは何故だろう?

17日間は、旧ヒーロー組織、6日間はネオライン・ジャパンで過ごしているのか。

不思議だ。

自動販売機ルートセールスをクビになったのがまだ24日前なんて、信じられない。

内容が濃いからだろうか。
記憶がたくさん増えているから、だから長く感じるのだろうか?

病院内を歩きながら、そんな事を考えていた。




























休憩スペースに座り、付いているテレビを見るとキャスターが話している。

『次は株式市場です。ネオライン・ジャパン株式会社が4日前の宣言により依然注目を集めています』

やっぱり現実なんだ。

『その時の代表取締役社長会見の模様です』

山王寺社長が映り、語り始める。

『ついに!ついに当社はこの日本市場にて、唯一無二の会社として確立されました!これも一重にスポンサーの皆様のご理解とご尽力…そして、当社ヒーローや開発、技術スタッフたちの努力の賜物、皆で掴み取った未来だと…私はとても誇らしく思っています!』

テレビなんて久しぶりに見たな。

『これからもネオライン・ジャパンは、成長し続け、皆様の身近なヒーローであり続ける事を約束します!あははは!』

テロロロロン…テロロロロン…

効果音と共に画面が切り替わり、また別の黒いスーツを着たキャスターが映り、説明を始める。

『ここで緊急速報です。羽田空港に向けて太平洋上を飛行中のベトナム航空のゴーイング844の第二エンジンで爆発火災が起きました。領空内のため、ネオライン・ヒーローズが救援に向かっております』

映像が切り替わる。
何だ、あれ?

バッバッバッバッバッバッ…

『こちら現場です!5人のヒーローが、飛行機の速度に合わせて飛んでいます!あ!何か合図がありました!』

ヘリコプターからなのか風を切る音が鳴り響く中、少し遠くから飛行機を捉えた映像と共に別のキャスターが告げていた。

ネオラインのヒーローは空も飛べるのか。
あの羽みたいな物すごいな。

『1人が飛行機を前から押しています!残り3人は下で支えているようです!1人は炎上しているエンジンに何かしております!』

エンジンに何かしているヒーローがアップになった。
あれ?あの蝶をモチーフにしたような仮面にリボン、それに全身白にピンクの模様…
間違いない、アイカだ。

『飛行機が減速しているようです!おっと!エンジンの炎上が止まりました!ご覧ください!凍っています!』

少し興奮気味のキャスターはそう語り、映像が凍った部分を映していた。
爆発しないように冷凍したのか。

『前から押していたヒーローとエンジンを消火したヒーローも下に入りました!この後、どうするのでしょうか?現場からは以上です!』

アイカもちゃんとヒーローしてるんだな…
そんな事を思っていると画面が切り替わり、スタジオが映ると黒いスーツのキャスターが続ける。

『はい、ありがとうございました。この後、どうするのでしょうか?スタジオでは、ネオライン・ジャパン広報部長の山田さんにお越しいただいております。よろしくお願いします』
『よろしくお願いします』

カメラがもう1人の声の主を映し出した。
あれは中野支店長…

『広報部長 山田彦成』

スーパーでそう表示された名前を見る。
あの人の和傘が凄まじかった事を思い出していると元中野支店長が続ける。

『ご覧いただいた通り、あのまま羽田空港へ時刻通りにお届けする予定です。エンジン爆発という事でしたので、まずは誘爆回避のために、原因部位の凍結を行い、ヒーローのモニターとリンクさせているテクニカルモニターを通し、本社におります専門スタッフが関連部位のチェックを行い、安全確認いたしました』

ネオライン、凄すぎる。

『速度を下げたのは、ヒーローたちの負荷を抑えるためです。彼らが運びますので、持ちやすくした…というところでしょうか』

ふと気づいた。
もしかして…

超大手スーパーホワイト企業に偶然だけど勤めちゃったんじゃないか?
市場独占、上場、注目株、労基厳守、福利厚生完備、最先端技術…
そして、やりがいのある仕事。

『乗客の皆様、並びに乗組員の皆様の安全は我々ネオラインが保証します!そして、予定時刻通りの着陸による、この事故はなかったかのように皆様のスケジュールも守る事をお約束しましょう!』

恰好良いな。

そう思って見ているとキャスターが話し始める。

『山田さん、ありがとうございました。続いてのニュースは…』

僕は病室に向かって歩きながら、ヒーローらしいヒーローに感動していた。
悪者と戦うんじゃなくて人々を守る、救う。
これがヒーローなんじゃないだろうか。

昨日見たアイカが活き活きしていた。
漆原さんも楽しそうに仕事しているようだし、この病院にいる先生も看護婦も患者もみんな明るい。

こんな世界があったなんて…

そういえば、最初に亜空間行った時もこんな風に思った事を思い出した。

ヒーローに関わってからは、本当に刺激的な事ばかりだ。
早く僕も、仕事をしたい!

そう思った。
























夕方になるとアイカがやってきて、元気に声をかけてきた。

「よっ」
「テレビで見たよ」
「はぁ?何勝手に見てんの?ストーカーかよ、まぢキモいんだけど」
「アイカ恰好良かったよ」

彼女は頬を長い付け爪でカリカリしている。

「僕も早く…仕事したいって思わされた」

右手の拳をグッと握り締めながら、そう呟いた。

「安心して。明日退院、職場復帰よ」
「南先生、本当ですか?」

その言葉と同時に、南先生が現れ、検診を始める。
質問した僕に南先生は答える。

「ええ、もちろん、おめでとう」
「まぢかよ?」

僕の反応より先にアイカが嬉しそう答えた。
するとすぐに表情を切り替え、僕に向かって彼女は言う。

「ぢゃ、帰る」
「え?もう行くのか?」
「これでもちょー忙しいんだけど」
「そうだよな、ありがとう」

手をヒラヒラさせながら、アイカは出て行った。

「なーおいデブー!晃、明日退院するってさー」

廊下の向こうでアイカが叫んでいた。

「愛されてるのね、晃くん」
「そうなんですか?」

脈を測りながら、南先生はそう言った。
僕には意味が分からなかった。
























「おめでとう、晃くん」
「漆原さん、ありがとうございます」

そう言いながら漆原さんが病室に入ると入れ替わりで南先生は軽く会釈して出ていった。
お礼を伝えると缶コーヒーを渡される。

「いただきます」

カチッ…ゴクゴク…

そう言って、早速缶コーヒーを開け、飲んでいると漆原さんが続ける。

「アイカくんのあの浮かれ様、こっちまで嬉しくなってしまうね」
「いろいろご心配をおかけしました」
「やめてくれたまえ、もう僕は君の上司じゃない」

明日からヒーローとして仕事を再開できるんだ…
嬉しい気持ちから、ここ数日考えていた事を口にする。

「まだ、ヒーローになって1か月経ってないんですよね」
「うむ、僕が君にブレスレットを渡してから20…23日になるのかね」
「はい」
「僕のせいで散々だったがね、本当に申し訳ない」

漆原さんがうつむく。
そんな彼を見て、慌てて僕は伝える。

「いえいえ、そういう事じゃないんです。まだそれしか経っていないのに、漆原さんやアイカとは、今までに出会った人とは比べ物にならないくらい一緒にいた時間が長く感じていて、信頼しています」

照れくさくて、窓の外に視線を逸らし、会話を続ける。

「それが何でなんでしょう…そう、不思議で」

ズズズッ…

缶コーヒーをすすりながら、彼は答える。

「一緒に大きな困難を乗り越えた仲だからではないかね」

漆原さんも外を見ていた。
そして、彼は会話を続ける。

「僕は相対論が精神、心にあると思っている」
「相対論、聞いた事あります」
「簡単にいうと現象を起こした者と現象を観察した者の時間には誤差があるとでもいえばいいのか」

どういう事だろう。

「忙しく働いている人の8時間は短いが、それを見ている人の8時間は長いと思わないかね?」
「そう感じると思います」
「現象の原因、現象を起こす側にいると時間は加速するのだ」
「なるほど」

ズズズッ…

缶コーヒーをすする音を挟んで、漆原さんはさらに続ける。

「特に男女愛、恋愛は非常に面白い。感情が強く動くため、逢えない時間は超減速して非常に長く感じマイナスエネルギーを発生させ、逢って楽しく過ごしている時間は超加速してプラスエネルギーを発生させるのだ。この作用には、相手との物理的距離が関連するのも非常に興味深い」

確かにそうかもしれない。

「感情が強ければ強いほど加速、減速の幅は大きくなる。逆に弱いほど加速、減速は起きなくなる。変化に富んだ生活、感情が動く生活をしていれば、その分、加速、減速による時差を繰り返し起こし、記憶の量が増え、他者とは違う時間軸を描く事になる」

面白い話だ。

「しかし、感情がまったく動かない人間はいない。だから人は…指針として時間という概念を共有して生きているのだが、実際は個々で全く違う次元を歩いているのだね。それを管理しているのが心だと僕は考えているのだよ」

深い話で、僕は自分の理解力が付いていけているのか不安になった。

「そして、相性という概念は、僕の見解では…心の時間軸の近さが関係していて、ジャストで重なるタイミングが存在しているのではないかと考えているのだよ」

難しい話だ。

「例としては、幼い頃に相性抜群で意気投合していた親友と、長い期間、同じ経験や感情を共有しないでいると当時の相性を感じなくなる現象や、逢って間もないのに十年来の親友のように何でも語り合える仲になってしまう現象などだね」

漆原さんがニヤりと僕を見て、自慢げに言う。

「そして、そういった感情の動きをエネルギーに変換したのが精神エネルギー変換」
「僕らのバトルスーツですね」
「うむ。そして、君とアイカくんはお互いに感情を高め合っているため、近くにいると加速、エネルギーをプラスに大きく産み出す…アイカくんのスペックアップ現象や君のフォルムチェンジ現象。あれがその結果なのだよ」

ズズズッ…

漆原さんは缶コーヒーをすすり、しばらく黙っていた。
そして、口を開く。

「僕は研究者として、このメカニズムが正しい事を証明してくれた君たちに感謝している。おかげで現在、ネオラインの全ヒーローに精神エネルギー変換機構の換装が承認され、研究の予算も大きくなり、公に広まった」
「そうなんですか?」
「うむ。換装については、予算やヒーローのスケジュールもあるから徐々にだがね」

漆原さんは立ち上がり、僕を見て言う。

「さて…明日から職場復帰だ、ゆっくり休みたまえ」
「はい」
「では、僕は行くとしよう」
「ありがとうございます」

彼を見送った後、ふと思った。
今の話だと、僕とアイカが恋愛している前提の内容に聞こえて、なんだか恥ずかしくなった。
退院した僕の前にアイカ。
再会する秋葉原支店長。
そして現れた大空…

次回!【ネオラインキャッスル】!

ワンチャンきびい未来が、君を待ってる…
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