七話目
「〜♪〜〜♪♪〜♪〜♪」
授業も終わって放課後帰り道。隣で嬉しそうに鼻歌を唄いながら歩く伊織。
左手にはしっかりと僕の右手が握られている。
正直なとこ、僕としては伊織と一緒に帰るのはとてつもなく危険だから止めたかったのだが、伊織がそれを許すはずもなくこうして二人で帰ることとなった。
それに、
「帰りは一緒に帰ろう!」
と言った時の笑顔に僕はまた見蕩れてしまい、いつの間にか首を縦に振ってしまっっていたのだ。
結局は、伊織を僕の家に住まわすことになった。伊織の後ろに父さんがいる限り、今後僕が敵うことはないのだろう。
こうなったら腹を括って素直に伊織を受け入れるしかない。そう思い伊織がうちに住むに当たっていくつかの条件を出すことにした。
その一つが、今もそうしている通り呼び方を「みーちゃん」ではなく「伊織」にすること。これを一番最初に提示したら…即行で断られた。
伊織が言うには、す、す…好きな人から苗字で呼ばれるのは寂しくて嫌なんだとか。しかし僕からしてみれば、学校で伊織のことを「みーちゃん」と呼ぶ行為は死に等しい。
確実にFCや伊織教の連中に殺される。
なので懸命にお願いし、二人の時はみーちゃん、または美穂ちゃんというように名前で呼ぶから学校では伊織と呼ぶことを許してもらった。
…なんだか、すでに上下関係が出来てきちゃったかも。
そして、次の条件が、僕らが一緒に暮らしていることを誰にも言わないこと。
これに関してはあっさりと承諾してくれた。
流石に周りに知られるのは不味いと理解したのかな、と思ったら
「知られてはいけない秘密の恋。あぁ、私とたっくんの秘密の関係。ウフフフフ。」
なんて呟いてた。
皆の憧れの生徒会長がこんなんでいいのかと思ったけど…気にしないことにしよう、うん。
こうして、学校規模で広まった噂は、真実へと姿を変えてしまったのだ。
「ほう、ここがたっくんの家か。」
誰かに見つかることなく、無事家に帰ることができた。
ウチの学校の奴らときたら、なぜか伊織関係のこととなるとやたらと情報入手が早い。一人にでも見つかっていれば、次の日には生徒ほぼ全員に知れ渡っていることだろう。
「あんまり奇麗じゃないけど、上がってよ。」
「いや、十分綺麗じゃないか。これで綺麗じゃないと言うなら、私の部屋はゴミ屋敷だぞ。」
どんだけ汚いんだよ…
「さてと、僕はちょっと父さんの所へ行ってくるから荷物の片付けお願いね。」
父さんには色々言いたいことがあるし。
「む、それなら私も一緒に行くぞ。義父様と義母様に挨拶をしなくてはいけないしな。」
「ちょっと待った!何その義父様と義母様って!?」
「何って…その通りの意味だ。婚約したのだから、そう呼ぶのが普通だろう。」
「普通じゃない!っていうか、婚約っていつのまにそんなことになってるのさ!」
「昼休みの時に言ったぞ。覚えていないのか。」
覚えているいないの前に、あの時はそれどころじゃなかったからちゃんと聞いていたかどうかすら分からない。仮に聞いてたとしても、それを思い出せるのは不可能に近い。
「その様子じゃ覚えていないようだな、少し悲しいぞ。」
「ご、ごめん。」
あれ?なんで僕が謝ってるんだ?
「とと、とにかく、婚約の話はナシ!みーちゃんは自分の荷物の片付けをしとくこと。いいね!」
「あ、たっくん!」
それだけ言って、僕は家を飛び出しエレベーターへと乗り急いだ。
「ふぅ…。」
強引に出て来ちゃったから、後でみーちゃんに色々言われるだろうなぁ。でも、その分を先に父さんへ色々ぶつけてやるから我慢するか。
伊織にあのことを教えたのは流石に頭にきた。あれを全部言われていたら、恥ずかしさのあまり生徒会室から飛び降りていただろう。それぐらい破壊力をもった内容なのだ。
チーン、という音と共に扉が開く。一階に着いたみたいだ。エレベーターを降り、管理人室――堅城俊彦宅を目指す。
目指すなんて大袈裟に言ったが、管理人室兼俊彦宅は一階エレベーターの向かい側にあるので、降りて二・三歩で着いてしまう。
しかし心境はそれぐらい詰まっていたりする。
扉の前に立ち、深呼吸。
決して父さんが怖いわけではない。ただ、質が悪いのだ。
親である以上、子の苦手な物や弱点を一番知った存在となる。世の親はそれを心の内に仕舞って秘密にしてくれるだろう。
しかし。ウチの父親は違う。僕の弱点や過去の恥ずかしい事を、躊躇する事無く脅しに利用するし、周りに言いふらす。伊織の件がいい例だ。
しかもそれを全然悪いと思っていないところが尚、質が悪い。
「いつかぎゃふんと言わしてやる!」
「ぎゃふんなんて今時使う人いないでしょう。」
「えっ!?」
びっくりして後ろを振り返ると、制服姿の女の子が立っていた。
いかがだったでしょうか。
ようやくまた一人女の子が出て来ました。しっかりツッコんでくれた少女、次話泰斗と絡みます。
それにしても、後書きは何て書こうか悩みますね。まぁ任意の作業なんですが(笑)
よろしければ、次の話もご覧下さい。
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