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三話目
「あれ?また廊下だ」
てっきりドアの向こうには、伊織がいるものだと思っていたのに。
「生徒会室は、あの扉の奥です」
と眼鏡さん(勝手に命名)は廊下の先にある大きな扉を指差した。
僕もそっちに目を向ける。
20m程先にある茶色い扉。よくは見えないが、細かい飾り細工が施されていて所々には宝石の様な石まで埋め込まれている。
あの扉一枚売るだけで、しばらく遊んで暮らせるだろうなー。なんて不謹慎なことを考えていると、
「どうぞ、こちらへ」
と促された。
歩きながら周囲を見渡してみた。よく見れば扉だけでなく、窓枠や壁にも扉と同じ様な細工がしてある。天井には外国の教会に描かれていそうな天井画。
なんとも豪勢な作りだ。ちなみに床には赤絨毯が敷かれている。
恐る恐る歩く僕に対し、眼鏡さんはドンドンと進んで行く。
後ろついてみてふと思う。
この人、背高いなぁ。僕が小さいっていうのもあるんだけどさ。
「背、大きいですね」
何の気なしに言ってみた。
すると眼鏡さんは急に立ち止まり、僕の方に振り返った。あれ?心なしか、顔が怒っているような…
「私はこの身長が嫌なんです。あなたは褒めたつもりなのでしょうが、私にとっては悪意にしか感じられません。なので、止して下さい」
「す、すみません……」
「いえ、こちらこそ失礼しました」
そう言うと、扉の方に向き直してまた歩きだした。
僕もそれに続く。
……………。
沈黙。
床も絨毯なので、足音すらない。
き、気まずい……。
「で、でも、背が高いって格好いいじゃないですか。羨ましいですよ。」
再び立ち止まりこっちへと振り返る。
「あなたが格好いいと思っても、私は思いません。先ほど申し上げた通り、私は自分の身長が嫌いです。第一、女性に格好いいと言うのは間違ってます」
「格好いいは男だけのための言葉じゃないと思いますよ、世の中には可愛いという言葉の似合う男性だっている訳ですし」
「…………」
再び沈黙。けれど、僕は構わず話を続けた。
「女性は須く可愛いくある必要はないでしょう。眼鏡さんがそうであるように、格好いいというのも1つの美しさだと僕は思いますよ」
「……クサいですね。でもそういう考え方も悪くないかもしれません」
「ですよね!」
ああ、よかった。私は思いません、とか一蹴されたらどうしようかと思ったよ。
「しかし、眼鏡さんというのは何ですか?」
「あ、それは、その……、名前が分からなかったんで勝手に……」
「失礼ですね、そんな格好悪い名前で呼ばないで下さい。私には齋藤結という名前があります。今度からはそちらで呼んで下さい」
「は、はい、すみません。さ、斎藤さん」
「結です」
「え?」
「ゆ・い、です」
「ゆ、結さん……」
なんだか、伊織に会う前から疲れてきた…。
生徒会室入り口に着くと、眼鏡さん改め結さんが立ち止まり、踵を返しこちらへと振り向く。
「ここが生徒会室です。先に会長へ声を掛けてきますので、少々お待ちください」
「はい、わかりました」
扉へ向き直し、軽く咳払いをしてから一言。
「会長、結です。よろしいでしょうか」
すると扉の向こうから、「どうぞ」という声が聞こえた。
結さんはその声を確認すると、失礼します、と言って入って行ってしまった。
扉が閉まり一人になると、急に不安になってきた。
うわー、どうしよう、これから伊織に会うんだよ、なんて言おう。久しぶり、とでも言おうか、いやいや、伊織が僕のことを覚えてるとは限らないし、ここは一応知らないフリをしといた方がいいのかな、うん、そうしとくのが得策かもしれない。よし、そうしよう。
「決まりましたか?」
「うわぁっ!」
いつのまにか結さんが後ろに立っていた。ホント、いつのまに……。
「えっと…いつからそこに?」
「会長が僕のことを、という辺りからですね」
僕、声に出してたんだぁぁぁ、しかも聞かれてたなんて。聞かれてまずい内容じゃないけど、恥ずかしい。
「そんな頭抱えてしゃがみこんでないで下さい。何度も言いますが、会長がお待ちですよ」
「はい、すみません……」
「では、どうぞ」
そう言うと、結さんはおもむろに扉を開けた。
生徒会室の中は普通だった。むしろ、質素と言っていいぐらいだ。ゴテゴテしい飾りなどはなく、あくまでも生徒会室として機能するため最低限の設備で整えられている。
けれど、伊織らしいといえば伊織らしい。
昔から飾りとか装飾品の類は嫌いだったっけ。
昔、伊織から貰ったバレンタインのチョコレート。デコレーションどころか、ラッピングもなく型に入れたまま渡されたことがある。
まあ美味しかったんだけどね。
「何をニヤついている」
はっと我に返り、正面に立つ女性に顔を向けた。
…………………。
「どうした?」
「どうしました?」
伊織、結さん二人同時に訊いてきた。
「あ、あぁ、何でもないです、はい」
やばいやばい。まさか「伊織に見蕩れてました」なんて言える訳がない。朝会とかで遠目になら見たんだけど、こんな近くで見るのは小学校の時以来だ。
成長した伊織は、どんな賛辞でも表現しきれないほどの容姿だ。少なくとも、僕の語彙力じゃあ、褒めることすら適わない。
この人を見て何も思わない男は、そうそういないだろう。
開いた窓から風が入り込む度に、肩まで伸びた髪が揺れる。光の具合で茶色の髪が明るく光り、輝く。
背は僕より断然高く、モデルの様な体型をしている。(ありえないけど)抱きつかれたら顔が胸の部分に埋まってしまう程の身長差。
「さて、揃ったことだし本題に入ろうか」
いかがだったでしょうか。
しばらくは伊織中心に話を進めていくつもりですが、ほぼノリで書いているので違った方向に進むかもしれません(笑)
よろしければ、次の話もご覧下さい。
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