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  ずれた毎日 作者:泰兎
「ねえ月冶。気になってたんだけど、どこからそんなに女の子の情報を集めて来てるの?」
「そうだな。半分くらいは噂なんだけどよ……」
「じゃあもう半分は?」
「現地調達」
「それって調べまわってるってことじゃ……」
「まあそうともいうな」
「出歯亀ェ……」
二話目
「おいって、聞いてるか!おいっ!」
隣から聞こえる声に気付き、慌てて返事をした。
「たくよお、自分の世界入り込みやがって。この妄想族めが。少しは周りも省みろよ」
月冶に言われたくないっつーの。
月冶は気の置けない親友であると同時に、一応幼馴染でもある。出会ったのは小学1年の頃で、何かの冗談かそれとも教師の陰謀かは知らないが、今までずっと同じクラスで、更には高校まで一緒に。
伊織と疎遠になってからは、家が近かったのもあってよく月冶とつるんでいる。
月冶は昔から女の子に関する噂話に敏感で、特に伊織関係の話になると週刊誌なみの情報収集率。僕と伊織が幼馴染だと知られると面倒なので、黙っておいたのだけれど。まあ単純に、言う機会がなかっただけって言うのもあるけど。
「お前、小学校の低学年の時会長と登下校一緒にしてただろ。会長ってその時から可愛かったからさぁ、なんとか友達になりたかった訳よ。でも、声掛けようと思ってもいつも隣にお前がいたから声を掛けれずそのまま後をつけるだけの日々を送った、という淡い思い出があるわけよ」
普通に危ないな、コイツ。小学生にしてストーカー予備軍じゃん。淡い思い出、なんて感動的に語るような話じゃないぞ。当の本人は腕組んでウンウンと頷いてるし。
「ま、そういうことがあったから泰斗と会長が幼馴染だってことを覚えてたんだよな」
「ったく、余計なことばっかり覚えてるな…。」
ん?ちょっと待て。月冶が僕と伊織の関係を知っているってことは…
「まさか!」
「わっ!何だよ急に叫び出し「おい、月冶!他の奴らに僕と伊織が幼馴染だってこと話してないだろうね!?」
月冶の言葉を遮り思わず声を荒げて問い詰めた。
「え、あっ、うわっ、ちょっ、まっ待てっ、てっ。お、おちっち落ちっつけって。」
「あ、あぁ、ごめん。ちょっと興奮しちゃって。」
知らぬうちに、僕は月冶の体を前後に思い切り揺さ振っていた。首がガクガクしていたから、あんな途切れ途切れな台詞になっていたのか。
「ふぅ、助かった。危うく首の骨が折れるところだったぞ」
そう言いながら、首をグルグル回してほぐしてる。
「でさ、話したの、話してないの!?」
「…何を?」
バシーンといい音が鳴り響いた。
「いってえぇぇぇぇぇっ」
響いた音は、僕が月冶にビンタをした音だ。ちょっと強くやりすぎたかもしれないけど、まあ気にしない。
「もう一度聞くね。僕と伊織が幼馴染だってことを他の人に話した?」
「痛ぇなー。ちょっとふざけただけだ…ろ、ごめん、俺が悪かった、謝るからその振り上げたを手を下ろして。笑顔だけど目が笑ってないって、怖い、マジで、ねぇ、言う、言うから」
最初からそうしろって。振り上げた右手を下ろすと、3回目の質問をした。
「話した?話してない?」
同じ台詞を繰り返すのも面倒なので端折る。
「…喋っちった。ごめんね?」
僕は再び右手を振り上げた。
今度は、掌を握り締めて。

「さて、この落とし前はどうつけてくれるんだろうね、月冶君」
「ごめんなさい。もう勘弁して」
涙目で頭を押さえている。自分でやっといて何だが、凄く痛そうだ。
しかし、実際問題として真面目に困ったことになった。幼馴染というのが知られたなら、ファンクラブその他諸々が黙ってはいないだろう。
付き合ってるらしいという噂は、あくまでも「らしい」だ。噂の段階なら事実確認のために新聞部や放送部が動く。これが「つきあっている」という断定的な情報だったら、僕はとっくにこの学校から消されているだろう。
ところが、幼馴染という情報はFC会員の月冶が証人として語ったため、正しいものとして広まっている。僕自身はそう思ってないが、月冶が思っているように幼馴染という存在は他人よりもイニシアチブを持っているとものだと思われている。
実際のところはさっき話した通り、すでに伊織とは繋がりはないのだけれど。
「付き合ってるって噂だけでも問題なのに、どうしてくれるんだよ……」
「いいじゃん別に。寧ろ俺は羨ましいぞ、会長と幼馴染で彼氏だなんて。そんなおいしい状況を困ったなんて、お前は男として間違ってる! そして俺と代われ!」
「僕だって代わって貰いたいよ。ファンクラブの連中に何をされるか分かったもんじゃないしさ」
「あぁ、それは確かにな。熱狂的な危ないファンもいるからな。場合によっては襲撃されるかもしれないぞ、気を付けとけよ。俺を含めて。」
「月冶もかよ!半分は月冶のせいだろうが!それに――」
『1年C組の堅城泰斗君、1年C組の堅城泰斗君。至急生徒会室まで来て下さい。繰り返します。1年C組の堅城泰斗君、大至急生徒会室まで来て下さい』
「お呼び出しがついに来たか。頑張れよ」
「人事だと思って…」
あとで覚えてろ、月冶。

「はぁ…、行きたくないなぁ。そういうわけにもいかないけど」
トボトボと階段を上る。
ああいう噂が流れた以上、伊織も無視するわけにはいかなかったのだろう。向こうもいい迷惑だと思っているはずだ。皆の前で付き合ってないってことを表明したいから、僕とそのことについて打ち合わせでもするのかな。
僕としても平和に生活したいし、そうしてくれることには大賛成だ。僕一人が噂を否定しても信じて貰えないけど、会長が言うことなら信用するだろう。釈明する際に大勢の前に出ないといけないかもしれないけど、今後の学校生活を考えれば我慢するしかない。
「ふぅ。それにしても、生徒会室遠いな。高い所に造りすぎだよ」
生徒会室は8階建て新校舎の一番上にある。エレベーターはあるものの、教師または生徒会役員以外は使用してはいけないことになっている。そのため、一般生徒は階段をひたすら上るしかない。
階段を上ること役10分、ようやく辿り着いた。
「ああ、ようやく生徒会室だ」
乱れた息を整え、ドアをノックする。
「すみません、1年C組の堅城泰斗です。呼び出しに応じてやって来ました」
……………。
何の反応もない。向こうが呼んだんだし、居ないはずはないだろう。聞こえてないのかな?もう一度言ってみよう。
「すみま――」
せん、と言い切る前にドアが開いた。
中から現れたのは伊織ではなく、眼鏡を掛けた黒髪でロングヘアーの女性だった。
しかも、美人。クラスの女子のような子供っぽさはなく、OLや教師といった感じのカッコいい人だ。切れ目に眼鏡というのがどこか色っぽい。
年齢は自分と1・2歳しか変わらないはずなのに、とても大人に見える。女子というより、女性と言ったほうが適切かも。
「堅城泰斗さんですね、会長がお待ちです」
と簡潔な言葉。
「あ、はい!」
やば、思わず大きい声を出してしちゃった。でもこんな大人っぽい人に急に話し掛けられば、誰だって緊張してこうなるって。
眼鏡の女性は気にせず、こちらです、と言ってドアを開けてくれた。連れられて入ると……。
また廊下があった。
いかがだったでしょうか。
ようやく女性が一人登場です。
本当は、一話目でここまで話を進めたかったのですが、下手なもので二話目まで延びてしまいました。
次回、会長が登場します。
よろしければ、次の話もご覧下さい。


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