初めまして、泰兎です。
始めて書いた作品で、至らない点が多々あると思いますが、よろしくお願いします。
一話目
「でさぁ、泰斗。実際のとこどーなのよ?」
――昼休み。校舎の隅にある教室で、弁当を食べている途中。
あまり日が入らず、少し湿っぽいけれど滅多に人が来ないので静かなのだ。
そのためいつもここで決まって友人と昼食を食べることにしている。購買からも意外と近いので便利。僕らだけが知っている穴場。
そのお決まりの友人からの突然フリについていけず、僕こと堅城泰斗は、はぁ?と眉間に皴をつくりながら言葉を返した。
「いや、はぁ?じゃなくてさ。だからどーなのよ?」
昼食のパンを齧りつつ変わらずに問い詰めてくる。
突然に、どーなのよ、と聞かれても意味が分からない。それに、1番重要な『どーなのよ』の中身をはっきりさせてくれないと答えられないし。
「どーなのよって何が。てか、口に食べ物入れたまま喋るなって。喋る度に中が見えて汚い」
「おぉ、悪い」
だから喋るなってのに。しかも少しも悪そうじゃないぞ。
「で、どーなのよ?」
正面に座る友人、斉藤月冶は咀嚼したパンを飲み込むと同時に3度目の『どーなのよ』を聞いてきた。
「だから、どーなのよ、だけじゃ意味が分からないって。日本語は清く正しく美しくって習ったでしょ」
「清くと美しくは関係ないだろ…。いや、それ以前にそんなの習わないし。お前はいつそんなセリフを習ったんだよ」
「そんなの義務教育の間に決まってるじゃないか。そうだ、知ってた? 義務教育っていうのは子供が教育を受ける義務があるんじゃなくて、親が子供に教育を受けさせる義務があるってことらしいよ」
「へー、知らなかったー…ってそんなことはいいんだよっ。昼休みになってまで教育について語り合う気はないし、俺が聞きたいのはそんなことじゃない!」
ちっ、気付いたか。
「俺が聞きたいのは、お前と、会長のことだよ!」
突然立ち上がると、演技でもしてるのかというくらい大袈裟に腕を動かした。おまけに声も大きい。
「どうして月冶が僕と伊織のことを聞いてくるんだよ」
そんなに語気を荒げて。僕と伊織の間になにがあったっていうのさ。
「どーしてもこーしても、お前と会長、付き合ってるらしいじゃん。え?」
と言って顔を一気に近づけてきた。
正直、この動きはウザイ。
「はぁ? なにそれ? どこからそんなわけわかんないこと聞いてきたんだよ」
「どこって、泰斗お前知らなかったのか? クラス中、それどころか学校中で噂になってるぞ」
「…はぁ?」
妙に視線を感じたのはそのせいか。しかし、まったくもって意味不明だ。いったい誰がそんな根も葉もないデマ話を流してるんだ?しかも学校規模って。
面倒なことになりそうだな。
伊織美穂。1年生にして生徒会長に選ばれるという、異例なことを成し遂げた人だ。これだけでも凄いことなのに、加えて容姿端麗・成績優秀・運動神経抜群といった完全完璧スーパーウーマン。
当然注目度は高く、憧れる人が多いため告白する人が後を絶たない。
月冶情報によると、3日ほど前に告白した人数が100人を超えたらしい。…女子も含めて。会長はその全てを断ったとか。
たしかその時は、月冶が「100人斬り達成!」とか騒いでたな。煩いから蹴り飛ばしたけど。
ファンクラブ(非公認)や親衛隊(これも非公認)、それに伊織を崇める宗教的なグループ(もちろん非公認)まで存在するようだ。
兎に角、いろんな意味で注目の的となっている彼女と、なんで僕が付き合ってるという噂が流れたのかが不思議でならない。
「でもよ、お前と会長って幼馴染だったよな。ならその噂もあながちウソじゃないんじゃねえの?」
「嘘に決まってるだろっ!それにっ、なんで僕と伊織が幼馴染だって知ってるんだよ!」
そう、会長――伊織と僕は幼馴染だ。いや、だった、と言うべきなのか。友達に期限が無いように、幼馴染にも期限なんてあるわけないんだろうけど、今現在伊織と一切の交流がなくなったのも事実。その一番の理由が、伊織の転校だ。
伊織家とは、家族ぐるみで付き合いがあった。親が言うには、両家ともに全くの他人だったのだが、僕と伊織が仲良くなったから親同士でも付き合いが始まったそうだ。
いつから一緒にいたか記憶にはないけれど、昔の写真を見る限りでは幼稚園に上がる前にはすでに出会っていたようだ。
だけど、年齢が上がるにつれだんだん話す回数も減り、気がつけば名前でなく苗字で呼び合っていた。
一緒に遊ぶこともなくなり、共に同性同士で遊ぶのが普通な状態。
こんな関係ではあったけど、完全に隔絶した訳でもなかった。会えば簡単な話もしたし、冗談を言い合うぐらいはした。ただ、滅多にそんなことはなかったけど。
そして小5になる頃、伊織は転校した。親に聞いたところ、父親の仕事の都合で、だそうだ。
引越しの見送りに行きたい気持ちもあったのだが、疎遠となっていた上に平日で学校があったため行けず仕舞い。
この引越しで、僕と伊織の繋がりは完全に断たれた。
ところが高校生になって、伊織が戻ってきていることを知った。しかも、同じ高校に通っているということも。生徒会長な上に、あんなにも有名なのだから嫌でも気付く。
伊織は僕が同じ高校にいることを知っているのだろうか。そして、こんな噂が流れていることもすでに気付いているのか。
もし気付いているなら、どう思っているのだろう。
いつのまにか僕は、遠い存在となった幼馴染のことを頭に思い浮かべていた。
いかがだったでしょうか。
私自身ベタベタな展開が好きなので、その傾向になるかもしれません。
よろしければ次の話もご覧下さい。
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