今まで矛盾とかないかなぁ。もし有ったら教えてくださいorz
第八話:妖怪嫌いの村で。
百年以上も退治屋をしていれば、時には非常に腹立たしい依頼とてある。
コウは妖怪の山を下山し、幻想郷を離れて100年近く日本全土を当てもなく渡り歩いていた。年号も保安2年|(1121年)という、やはりいつなのかわからない時代になった。
その旅も目的地が思い浮かばなくなれば、妖怪の山に行って鬼子母神と共に萃香に稽古という名のイジメを施されたりなど、適当なものだった。
鬼子母神に絞られるのが萃香だけではなくコウもであったのは忘れたい記憶だ。萃香の憔悴を見てれば自分の苦行は苦行ではないと思い知らさせるが。
「――――か!?」
「聞いているんですか!?」
――あぁ、余りの煩わしさに嫌な記憶を思い出して現実逃避してしまった。
「あぁ、聞いている。だが退治する必要があるのか? その"鬼"とやらがあなた方に危害を加えた訳ではないだろう?」
偶然立ち寄った村は妖怪の山の南にかなりの距離を行った所にあり、幻想郷と呼ばれる妖怪の巣窟の様に思われている土地からは多少外れる位置にある。
「必要だって!? あれは鬼なんですよッ!? 妖怪と一緒に暮らしていたなんて!」
「そうよ! 今まで騙していたのよ!? いつ襲ってくるか……!」
話は簡単だ。捨て子だった子を拾ったはいいが、余裕のある家なんてほとんど無く、面倒を見ていたのは独り身の女性が一人。それでも村の仲間だと仲良くやっていた。だが、いつの間にかその子の頭に角が生えていた。つまり妖怪である。
妖怪の脅威に晒されながら生きているからだろうか。"妖怪"であるならばその時点で恐怖の対象なのだろう。
「はいはい、私なりになんとかしよう。それで構わないね?」
気持ちも分からない訳ではないが、こうまで一方的なものは些か以上に腹が立つ。
「ええ! お願いします! あの化物が居なくなるんならそれで充分ですよ!」
これ以上ここに居たくはない。その母屋を出て、立ち去る。
――彼らの話ではその"鬼"という子は北へと行ったとのことだが……。
とりあえず、その子と会わなければ何も出来ない。村を出て北へと足を向ける。しかし、そこに一人の女性が駆け寄ってくる。まだ何か言いたいことがあるのだろうか。
「お、お待ちくださいませ、退治屋様!」
息を切らせながらもはっきりとした口調で呼び止めてくる。立ち止まり、話くらいは聞いてみようと考え直す。他の村民とは雰囲気が違う。
「……私は様付けされるような者ではない。ただの退治屋だ。」
「では、その退治屋さんにお願い申し上げます。」
その瞳に映し出されているのは、覚悟。深々と頭を下げて
「あの子を、見逃しては頂けませんか?」
僅かに震える声で、懇願する。
北へ行った。その情報を頼りに北へと向かったのはいいが、その北とやらに竹林があるのだが。いや、もはや竹で出来た森だろう。規模が図りきれない。上空から見れば違うんだろうが、そんな事までしなければその全容は把握できないだろう。
「しまった。………………迷った。」
これでは探しようがない。仕方ないので風を作り出し空に出ようと風生成器官を起動しようとした瞬間に、視線を感じた。視線の主を探せばそこには、
――兎?
そこでこちらもじっと見つめているのは、兎。だが、問題はそこではない。
――何匹居るんだ……?
視界に居るだけで50匹は居るだろう。その全てが自分へと視線を向けているという異常事態に対応を考えるが、思い浮かばない。しかもつい、現状の悩み事が口を出てしまった。
「すまないが……、角を生やした子供を捜しているんだ。知らないか?」
話してから自分の行動を省みて、意味の無い行動だと思い自嘲的に小さく笑う。
「…………馬鹿か、私は。」
しかし、口に出したと同時に、意味の無い行動ではなかったのだと示すかのように兎たちが一斉に動き出す。バラバラに散るのではなく、全ての兎が同じ方向を目指しいてる。
「これは……!?」
しかも、一定距離離れると進まずそこで止まってコウを見つめてくる。まるでついて来い、と言うかのように。その瞳に急かされるかのように兎を追っていく。
一体どういう事なのかは分からない。だが兎が確固たる意思を以って対応している事は確かだと分かる。
――ついて来い、ということなのだろうか……?
なんらかの罠かもしれない。ただ善意で案内してくれているのかもしれない。その判断は難しい。だが、あからさまな悪意というのも感じられない。
それしか手がかりが無いのも事実。なのでついていく。もし本当に連れて行ってもらえるなら御の字だ。
駄目で元々なのだ。
10分ほどだろうか。余り長い時間ではないが、短くもない時間走り続け、漸く視界に竹林以外の景色が映る。生い茂る竹林の隙間から覗ける色は黄色。
――なんだ、あれは。
隙間から見える僅かな彩りではその全容を把握できない。しかしすぐこの竹林を抜けられる。そう判断できるような位置まで走れば、先導してくれていた兎達は散り散りに竹林の奥へと引き返してゆく。ただ一匹を残して。
その残る一匹に対して走りながら感謝の言葉を送る。何が目的であれ、迷っていたのを助けられたのだ。
「案内ご苦労! 感謝する!」
言葉を送った兎はもう視界に入らない。
――抜ける。
開けた視界にまっさきに映る景色は黄色一色。
眼の前に在る訳ではない。だがそれでも視線を送らざるを得ない。そこには、それ程までに美しいひまわり畑が広がっていた――。
「案内ご苦労! 感謝する!」
そんな言葉を言いながら走り去ってゆく男を見る兎たちのリーダー、てゐは苦笑する。
――ひまわり畑に送った事を感謝されてもねー。
始めは迷い人を契約通りに永遠亭に近づけさせぬように追い返す。ただそれだけだった。だが、その男の溢した言葉の"角を生やした子供"ならば見覚えがある。ほんの少し前に白い長い髪の人間と一緒に居たがこの"迷いの竹林"で迷っている様子はなかった。
向かっている方向がひまわり畑だったから良かったがあの人間が永遠亭の方向に向かうのならばなんとかして追い払わねばならない。そうはならず助かったのは自分なのだろう。あの人間は人間なのに"妖気"を纏っていた。"知恵"を授けて貰って日の浅い自分でどうにか出来るとは思えない。
そんなヤツと一緒に居た子供を探しているなんて時点で危険人物だ。あの男が迷っているのを探しにこられたりしては堪らない。この竹林の外のイザコザは外で解決してもらうのが一番いいのだ。
その向かう先に非常に強力で恐ろしく好戦的な妖怪が居ようとも。
――まぁ、どうなってもあたしには関係ないしね。
そう考え、てゐは兎たちの統率に戻った。
竹林を抜け、少し先に在る見る者を圧倒するひまわり畑に到着したコウは身を潜める。目的のひまわり畑を眺めるには絶好の位置にある巨木では三人の者たち相対している。
――どういう状況だ!?
目的の子供は木の根元で身体を隠すようにして対峙する二人を覗いている。対峙するのは銀髪の女と翠色の髪をして日傘を差している女。
記憶で見たのが二次元の絵であろうとも、普段であれば気づいたかもしれない。対峙している二人が藤原妹紅、そして風見幽香であると。
だが今は"角を生やした子供"の保護をしなくてはならないという目的を優先したが故に、その二人の隙を窺うのみで済まし、見逃した。その二人が誰なのかを。
幼い、角を生やす少女――上白沢 慧音は絶望も中に母を見た。
自分を拾ってくれた村の人たちが、優しくしてくれた人たちが自分に向ける眼に。昨日まで、一緒に遊んでいた友達。仕事をすれば頭を撫でてくれた大人の人たち。その全てが態度を豹変させた。
優しいかったはずの眼は、恐怖に濁っていた――。
村人は皆妖怪の恐ろしさを知っている。自分も教えられた。北に行けば妖怪の山という鬼神の治める山があるから、絶対行ってはいけないと。そう言っていた時と同じ眼。
そんな眼を向けられ、ただひたすらに否定する。自分は妖怪ではないと。襲ってくる妖怪なんかとは違う、自分は人間だと。だが、誰一人として、話などしない。それどころか、眼をあわせようともしない。
そこまでされて思い出す。自分を愛してくれる母が居る。母なら自分を人間だと認めてくれるはずだと。
家に帰り、母に主張する。自分が人間だと。妖怪ではないのだと。
その言葉を聞いた母は自分事を抱きしめてくれた。頭を撫でてくれた。自分の愛する娘だと言ってくれた。嬉しかった。今まで生きてきた短い人生の中で、一番だと確信出来る程に。
だから愛してくれた母のために、愛する母のために村を出ることを選んだ。
妖怪退治をしている人が村に来た。その人は真っ白な髪と、真っ赤な眼をした綺麗な女の人だった。妹紅さんと言うらしい。他の村人が私の退治を依頼したと教えてくれた。
母が懇願してくれた。自分はどうなってもいいからこの子に手を出さないで欲しい、と。嬉しかった。けれど、とても悲しかった。母が自分の代わりに死ぬ事を望んだことが。自分がそんなにも迷惑を掛ける存在なのかと悔しくなった。
「安心しな。あたしはその子を殺すつもりなんてないよ。私と来るか聞こうと思ったんだよ。」
だから、妹紅さんが言った事が理解出来なかった。
「安心しな。あたしはその子を殺すつもりなんてないよ。私と来るか聞こうと思ったんだよ。」
藤原妹紅はその少女を想う。
妖怪である。それは人間から排斥されるに足る理由なのだろう。しばらく容姿に変化が全くない。ただそれだけで人は自分を危険視した。その時に向けられる感情は恐ろしいものがある。
こんな幼い少女一人では、母が護っていても限界があるだろう。ここに居ても辛いだけ。それどころか、害意は自分だけでなく、護ってくれる人にも向けられる。そうなって先にあるのは破滅だけだ。
「なん、で……?」
震える声で尋ねてくる。口で答えても信じてはもらえないだろう。だから見せる。己の人外の証を。
「あたしも似たような経験をしたからね。」
小太刀で首を掻っ切る。その異常な行為に、親子は息を呑む。悲鳴を上げないのは人死に慣れているからだろうか。
「……大丈夫。ほら、な?」
そういって見せるのは確かに切ったはずの傷の無い首。
「あたしはね、随分と昔に不老不死になったんだよ。ただの人間だけど、老いもしなければ、死にもしない。誰もが口を揃えて『化物』って罵るんだ。」
「あたしはね、随分と昔に不老不死になったんだよ。ただの人間だけど、老いもしなければ、死にもしない。誰もが口を揃えて『化物』って罵るんだ。」
そう言って、自分で掻っ切った首をさする妹紅さんは自嘲気味に笑られました。
「妹紅さん、とおっしゃいましたね。貴女は娘を、慧音を護れますか――?」
この方は、娘を非難しない。なら。
「ああ、あたしが居る間は確実にな。あたしが居なくても、独りで生きていけるように、最低限の力の使い方は教えるさ。」
あぁ、良かった。断言してくれた。もう私ではこの子を護りきれません。誰かに頼るしかないのも、頼れる方が尋ねてくださったのも、何かの運命なのでしょう。
「では、妹紅さん。娘を、お願い致します。」
「あぁ、わかった。」
ありがとうございます、妹紅さん。これで、憂い無く逝けそうです。
「お母さん!?」
ごめんなさい、慧音さん。弱い母でごめんなさい。貴女を護りきれない情けない母でごめんなさい。ただ、願うなら。
「慧音。貴女は妹紅さんについてお行きなさい。母は貴女が幸せに暮らしていける事を願っていますよ。だから、貴女は私の事を忘れなさい。」
「ぅあ……お母さん……。ごめんなさいッ!。こんな私でごめんなさい! でも、忘れません! 私はお母さんの事を、愛しています! いつまでも、愛していますからッ!」
今、この母を愛すると涙を流してくれる貴女に、
「……仕様のない子ですね、慧音さんは。私も貴女の事を愛していますよ――」
――天下無敵の幸福が在らん事を。
二人が隠れながら、去った後。
「カカさん、あの"鬼"っこはどうした? 退治屋さんは?」
「退治屋様でしたら、北に逃げたあの子を追って行かれましたよ。」
「逃げただぁ!? あんの妖怪めッ! 今丁度別の退治屋さんが来ているんだ! こっちにも頼むぞ!」
「おうさ!」
訪ねてきた村人の皆に嘘で答える。
――あぁ、慧音さん。もう一仕事やらねばならないようです。
「お、お待ちくださいませ、退治屋様!」
――どうか、貴女が幸いだと誇れる人生を送れますように。
どんどん文章量が増えている……! そして更新ペースが落ちる、と。これは孔明の罠だッ!
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