プロローグ:この世界で約束を。
――――紅い、紅い血が滴り落ちる。
自分の血のはずだった。
この手を伝う血は――――
「ごふッ!」
最愛のヒトの血。この身が愛したヒトの、血。
「ぁ………………、な、ぜ? なぜ? 何故ッ!? 君の爪が私を貫く方が早いはずだッ!
何故! 私の剣が君を貫いて! いる、んだ……。なぜ――」
――君はそんなにも優しく微笑んでいるんだ?
「ふぅ……、は、ぁ……。言った、はずだぞ? 『生を求めるな。死を求めよ』と。
愛したお前に殺されるのだ。これ以上に幸いな死を、我は知らん。」
――それは、君が教えてくれた事。
「それは……。~~~~ッ!」
――君は、幸いを持って死へと向かう。ならば、何故泣き顔でいられようか。
無理やりにでも、微笑む。それが、君への餞なのだから。
「……ふふ……。最後だ、我侭を一つ、いいだろうか。」
剣をその胸に突き立てた私の腕の中に収まりながらも、君の妖艶な笑みは、私の心臓を高鳴らせた。
「……! あぁ。構わないよ。」
「……我の子で、双子が居てな。力を持っているやもしれぬ。何時の時代に生んだかは定かではないが、
おおよそ、鎌倉時代であろう。陰陽師や、あるいは同族にも狙われかねん。
頼まれては、くれぬか。」
心当たりがある。俺が、私として生まれた場所。最初に愛した、あの子が居る時代。
「…………名前は? いや、それは過去の話だ。行く術がない。」
彼女の元に行くには、絶望的なまでの時間を越えなくてはならない。そんな事は私には不可能だ。
君が魔術を使っても、それだけの時を超える事は出来ない。
「70年ほどなら、遡れる。本来なら不可能だが、この場で行使すれば、届く。なに、死ぬゆく身だ。最後の命を燃やし尽くそうとも問題はあるまい?」
千年城。この城の名。この城のでの一年は外での千年。だからこその、千年城。
「名は、夜風と夜水だ。大体52年ほど戻ればいいだろう。」
隔絶した世界だからこそ、君を封印出来た。そんな場所。
「……分かった。」
行かねば、この身は存在し得ない。ならば、行くのは必定。頼まれたのは俺との子ではないけれど。最初に愛したヒトだから。私を人からヒトにしてくれたヒトだから。そこに、不満はない。
君は陣を組み上げる。死に掛けで、尚その速度は異常。恐ろしく緻密で、脆い、魔方陣が組みあがる。
理解しきれない。だが、そこに不安はない。
視線が絡み合う。唇が触れそうなほどの、至近。
陣は組みあがり、君の送る魔力が術式を起動させる。
「では、な。」
「ああ。」
不意に君は言う。
「あぁ、餞別だ。くれてやろう。」
「え?」
唇がそっと、触れる。最後の口付けの味は。
――――鉄の味がした。
誤字とかあったらどこが間違ってるか教えてくださいorz
+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。
この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。