放課後
先生があたしを呼んだから、用事を済ませて足早に職員室へ急ぐ。
そんな放課後。
先生ったら、怖い顔しちゃって「お前、こそこそと何をやってる?」だって。わざわざ体育倉庫の裏まで来てくれて。そんなに気にかけてくれてたんだ、ちょっと嬉しいかも。あたしもけっこう好きよ、先生のこと。
職員室に着くと、先生は夕日をバックに窓の前に立っていてなんだか神々しい。先生は相変わらず怖い顔をしたまま「ポケットの中のものを出せ」って言う。あたしはちょっとまずいと思った。なぜって、先生に呼ばれる前に済ませた用事が、ちょっとまずい。ポケットのなかでマッチがカサッと鳴った。
あたしが観念して、マッチを先生に渡したら「それだけじゃないだろう」って言う。あたしは「これしかありません」と答える。さっきまで確かに持っていたけど、運よく使いきったところだ。
「たばこ、やってんだろ?」先生が言う。
「えっ?」あたしは変な声が出た。「たばこ?なんで?」
「臭いでわかるんだよ」
あたしはちょっと考えてから、「てっきり、酷い点数のテストを燃やしていることを怒られるのかと……」
何かに気づいたらしい先生が、急いで振り向き窓の外を見る。先生のポカンとした顔を見て、どんな顔をしたっていい男だなと思った。
先生越しに、窓から見える夕日が綺麗。
燃えるような夕日って、こういうことね。
ああ、よく燃えてる、あたしのテスト。
体育倉庫が燃えている。
そんな放火後。