一緒に花火を見上げるとき、おばあちゃんはいつも泣いていた。
頬を伝うしずくに、色とりどりの火花を映しながら、いつもこうつぶやいていた。
――あの爆弾が、みんな花火だったらよかったのに
突然の空襲警報が、暗い夜空を震わせた。
小さな小さなこの国は、大きな大きな世界を相手に、もうずいぶん長い間戦っていた。
最初は、絶対勝てると思っていた。
兵隊さんたちはとっても勇敢だったから、向かうところ敵なしで、小さなこの国の何倍も大きな国を占領したりした。
だけどやっぱり、世界はとっても大きくて。
気がつけば周りはみんな敵だらけ。
船は全部沈められて、飛行機は全部落とされて。
ブンブンと飛ぶ敵の飛行機を窓の隙間から見上げながら、家の中でみんなうずくまっていた。
敵は、すごい爆弾を作ったそうだ。それ一発で、国がひとつ吹き飛ぶそうだ。
しばらくなかった空襲警報が鳴ったのは、そんなうわさを聞かない人が、国に一人もいなくなったころだった。
敵の飛行機はそれまでと違って、とっても高い夜空の上をまっすぐ飛んできた。
みんな、きっとあの飛行機がそうだ、きっと、新型爆弾が落ちるんだ、そう思った。
だから、兵隊さんが声を荒げて避難するようになんてどなっても、誰も言うことを聞かずに空を見上げていた。
だって、国が吹き飛んでしまうんだから。逃げる場所なんてどこにもないんだから。
だったら、大切な家族と、大好きな友達と、一緒に空を見上げていたい。
小さな国の真上にやってきた、ずんぐりとした敵の飛行機は、その腹から大きな爆弾をポロリと落とした。
それはヒューヒューと風を切りながら、くるくると回りながら、小さな国のたくさんの人めがけて落ちる。
小さな国のたくさんの人は、それが爆発する瞬間から目をそらすまいと、空を見上げる。
そして、まばゆい光が、夜空に輝いた。
そして、大きな音が、人々のおなかをずんと揺らした。
それは――それはまるで、小さな国全部を包み込んでしまうくらいに、大きな花火。
赤や緑や橙の火花が、スーッと淡く跡を引いて、暗い夜空を金銀錦に染め上げて、消える。
それから、最初の飛行機につづいて無数の飛行機が飛んできて、その腹からぽろぽろぽろぽろと爆弾を落とす。
それらもみんな、色とりどりの花火。
小さな国のたくさんの人は、顔を赤や緑の光で照らされながら、歓声を上げた。
だけど一人の兵隊さんが、ごろごろと音を立てながら、大砲をひいてくる。玉を込め、火をつけて――
人々が息を呑んで見つめる中、敵の飛行機めがけて一直線に飛んでいった砲弾は、バーンとはじけて、大きな大きなきれいな花火。
戦争中、東京から広島へ嫁に来たおばあちゃんは、両親を東京大空襲で失い、夫を原爆で亡くした。
私のお父さんを身ごもっていたおばあちゃんは、そのときおじいちゃんの実家に疎開していて、無事だった。
だけど、山の向こうで輝いた閃光と、その後響いた爆音、天に向かって伸びてゆくきのこ雲をはっきりと覚えているって、何度も何度も私に話して聞かせた。
夏になると、何度も何度も花火を観に連れて行ってくれたおばあちゃん。
私は今、一人で花火を見上げながら、おばあちゃんの流す涙を思い出す。
みんな、みんな、花火だったらよかったのに……
(fin)
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