37話
アカムトルムとは、巨大なモンスターである。
どれくらい巨大かというと、グラビモスを捕食対象と出来るくらい巨大で、ケルビを食ってるナルガクルガやポポを食ってるティガレックスとは一味違う。
そんなアカムトルムに比べ、俺たち人間のなんと弱く儚い事か…
「…で、言いたい事はあるか?雄二」
「正直悪かったと思ってる…」
俺は怒っている。何に対して怒っているのか…
「…まさか、5分も持たないなんて…」
「すいません…」
一葉のセリフにただただ謝る雄二。
雄二はたった一人であっという間に3回死んでしまった。
どこまでも死にたがりなやつだ…
ー2戦目。
「頼むから、今度はちゃんとしてくれよ」
「…次は、勝ちたい」
「任せとけって!俺だってダテにティガ2頭を退けてきたわけじゃねぇ。今までは力をセーブしてたんだよ。しかし…次はその封印を解く…」
雄二は何か思いつめたような表情で、そんなセリフを呟く。
「隠すほどの底力はないと思うんだが…」
「…隠してて負けちゃ、本末転倒…」
「はい!そこの二人茶々を入れない!」
雄二は自信ありげだが、信じていいんだろうか?
「立ち回りで縛りをかけているようには見えなかったが…」
「…でも、武器も防具もあれ以上のものあった?」
一葉の意見はもっともだ。やつの装備はギザミSにフクロダタキ。
現状考えられる最高峰の武具を装備しているように思える。
「お前らそんな事言ってないで、ちゃんと見とけよ?目ん玉かっぽじって見とかねぇと見逃しちまうぜ?」
「目ん玉かっぽじるのか…」
「…痛そう…」
「そうやって揚げ足とって上から目線でいられるのも今のうちだ!今まで黙ってたけどな…」
「…なんだよ?」
「…(ごくり)」
雄二は静かに口を開く…
「俺は今まで…足に6キロの重りをつけた状態で戦っていたのさ!!」
そう言って足から重り付きバンドを取り外す雄二…
「「…………」」
そのころ、ムービーを終えたアカムが、力強く咆哮していた…
ー10分後。
「次ふざけやがったら、もう連れてってやんねぇからな!!」
「…(コクコク)」
「…俺は真剣だったのに…」
「足が軽くのなったからってうまくなるわけねえだろうが!!座ってやってんだぞ!!俺たちは!」
「ごめんなさい…」
俺も一葉もいい加減うんざりしていた。
2度の敗北にでも、雄二の6死にでもない。
あまりにも進歩のない展開にうんざりしていた。
「みろ!向こうはもうおわってるじゃねぇか!あ、おい汐!俺のベッドで寝るな!」
「だって〜まだですかぁ〜」
「遅すぎだよ〜キョウくぅん」
「あ、あはは…」
恐らく俺のイライラを感じ取ったのだろう。夏希だけが乾いた笑い声をあげている。
「次で決めるぞぉ!!」
「お前が言うな!!」「…君のセリフじゃない」
「…はい…」
俺だけでなく、一葉からも鋭いツッコミを受け、雄二はシュンとしながら小さな返事をした。
ー3戦目。
「雄二」
「なんだ?恭介」
「アカムは必ず攻撃対象を正面に見据えて攻撃するんだ。それはわかるな?」
「…??」
「…いいたいことがあるならはっきり言え…」
「どういうこと?」
「だから!アカムは攻撃の前にこっち向くだろ?」
「そんなの当たり前じゃん。何当たり前のこと言ってんの?」
「うわ!こいつマジむかつく」
人がせっかく親切に助言してやろうとしてるのに…
「…その振り向いている最中はアカムは無防備なの」
俺に代わって一葉が説明を続ける。
「無防備?」
「…えぇ。だから、その時に攻撃をして、完全に振り向いてしまった時にはもう回避する。それが一番いい戦法」
「まぁ、そういうことだ」
一葉の意見に同意する。俺も全く同じことを言おうとしていた。
「でも…お前ら二人とも休まず攻撃してるじゃん」
「俺たちはランス、ガンランスだからな。いざとなったらガードできるし、足もとで攻撃できるから危険な攻撃も少ない」
「…なるほど…」
「…あなたはハンマー。一番危険な頭を狙う武器。チャンスは少ない。それを確実に拾わないと…」
「おぉ。なんかそれカッコいいな」
「「うまくいけばな(…うまくいけば、だけど…)」」
「…」
俺と一葉のセリフがダブる。雄二は少しの間黙っていたが
「…よし。やってみる!」
今度こそ真剣な目でそう言った。
アカムとの3度目の対峙。
俺たちは手慣れた動きでスタート位置から離れ、奥の広場へと走る。俺や一葉はともかく、雄二は初期位置では戦えない。広い場所でなければハンマー使いが立ちまわれないからだ。
武器構成は、当然ガンランス、ランス、ハンマーの3人。だれがどの武器などいまさら言う必要もないだろう。
俺は龍属性のガンランス『ガンチャリオット』
一葉は雷属性のランス『雷槍‐タケミカズチ‐』
そして雄二も雷属性のハンマー『フクロダタキ』だ。
俺と一葉はアカムの腹にもぐりこみ、アカムの腹や右後足に攻撃を集める。足に攻撃を集めるとアカムは転倒するからだ。さすがに二人同時にはなかなか攻撃できないので、片方は足、もう片方は腹を担当する形になっている。
そして、雄二は…
「あ!おい待て!!そっち向くな!!」
必死になってアカムの頭を追いかけていた。追いつく気配はあまりないが…
「雄二、俺や一葉に比べて、お前は手数があまり多くない」
「…?」
「モンスターってのはたくさん攻撃してくるやつをよく狙う傾向にあるんだ。だから俺や一葉のいる位置をよく見とけ。アカムはそっちを向く可能性が高い。それで、先回りしてぶん殴れ!」
「先回りだな…よッし…」
「…がんばって」
雄二は俺たちの言葉を受け、目に見えて集中力を増していく。
その時、アカムは足もとにいる俺に攻撃するため、時計回りに顔を振る。
しかし、それを読んでいた雄二がすでにアカムの正面に立っていた。振りかぶられたハンマーは強い光を放っている。
「ドンピシャ!!」
強力なため攻撃がアカムの顎に直撃する!!
「雄二避けろ!!」
「へ?」
「…はやく!!」
「お、おう!」
アカムは雄二の攻撃など気にもとめず、必殺のソニックブラストを繰り出す!!
「あっぶねぇぇぇ!!」
雄二は間一髪のタイミングで回避に間に合ったようだ。
「でも、今の攻撃はよかった」
「…その調子」
「おっしゃぁぁ!!任せとけ!!」
その後も雄二の攻撃は少しずつだが確実にヒットしていく。
そして、俺の攻撃により、アカムが4度目の転倒をしたとき…
「喰らえぇぇ!!!」
転んで動けないアカムに、ホームランをぶつける雄二!!
ピギャアァァ!!
目を回して倒れるアカムトルム。
「おお!!」「…!!」
俺と一葉は目を丸くするが、すぐに
「「…奇跡だ!!」」
同時に叫ぶ。
「前も聞いたことあるぞ!!それ!!」
雄二は怒って文句を言うが、奇跡なんだからしょうがない。
俺はこのとき確信した。
この勝負…勝てる…と。
俺たちの間にはあるジンクスがある。
雄二が奇跡を起こし相手から気絶を奪った時は絶対に負けないのだ。この勝負ももう勝てる!!
「このまま一気に行くぞ!!」
「…了解」
「おっしゃぁ!」
その後も俺たちは攻撃を続け、順調に転倒→攻撃を繰り返していった。
そして、5分後…
ピギャアァァァ!!
もだえ苦しむアカム。頭上からは大きな肉塊が降ってくる。
そう、アカムの尻尾が切断されたのだ!
「尻尾が!!」
「一葉、さすが!!」
「…もう少し…」
ここまでくれば、もう負けることはない…
俺はガンチャリオットの銀色の砲身を水平に構え、必殺の竜撃砲を放つ‐
‐ドゴォォォォン!!!
ピギャアァ!!
足に命中した竜撃砲。再び転倒するアカム…
「いける!!」
俺たちは一斉攻撃を仕掛ける。そして―
『クエストを達成しました』
「よっしゃぁぁ!!」「やったか」「…ふぅ」
俺たちはそれぞれに歓喜の声をあげる。クエスト終了…なんとだれも死なずの勝利だ。
といっても、これまでも雄二以外は死んでいないんだが…
「これで俺もG級か~」
「後は俺と黒川だけだな」
「…すぐ、行く?」
「…そうだな。調子がいいうちに決めてしまおう」
そのあとすぐにアカムを2連戦する。
なんとそこでも雄二は死ななかった。珍しい…明日は雪でも降るんじゃないだろうか…
「ね?雄二、結構うまくなったでしょ?」
クエスト中、夏希が小声で語りかけてくる…
「まぁまぁだな」
俺はそれだけ言って、PSPの画面に集中した。
…この日、俺たちは全員、G級ハンターとなった。
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