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幼馴染……それは綺羅びやかな出逢いと雅で甘美な思い出に染められた大切にして不可欠な存在であり、互いの手を取り合い共に支え合い、約束の未来へと進み苦楽を分け合う掛け替えの無い特別なパートナー……のはず。 作者:新夜 詩希
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【類友集まるクラスルーム】

「おーぅ林原。今日も相変わらずデカキモイなー」

「オウフwww片瀬(かたせ)氏wwwお主こそ相も変わらぬ辛辣っぷりでござるwww稀代の人形師の腕も健在でござるかwww?」

「まあなー。昨日も一体完成させちまったぜ。ふっ、自分のゴッドハンドぶりがあまりにも眩しい……!!」

「おおwwwこれは良いセ○リアたんwwwペロペロwwwところで片瀬氏、今期は何をチェックしているでござるwww?」

「ク○ワーゼ、ロウ○ゅーぶ、ピンド○、○およろ辺りは安心のブヒアニメだな。○音たん可愛いよ湯○たん。あと個人的にはタ○バニがフィギュアマスターとしての腕を疼かせてくれるってトコか」

『……………………』



 所変わって、私の通う某県立高校の3年2組。日直として相方と朝の雑務をこなしていた私の耳に届いたのは、異次元の会話だった。始業前の清々しい空気を台無しにするのはキモオタ二名。片方は言わずもがな、もう片方はこのクラスで唯一そのアホウと同等の会話を展開出来る自称『稀代の人形師』『フィギュアマスター』『ゴッドハンド』こと『片瀬 信二(しんじ)』。私からすりゃ只のオタクだ。クラスでも爪弾き者……という程ではないが、皆極力関わり合いを避けている感じ。まともに相手をするのはせいぜい一人しかいない。上記の会話が完全に意味不明だったそこの貴方、むしろ正常なのでご安心を。
 因みにこの片瀬、以前何処かで何かにちょっとだけ出演経験があるのだが……それはまた別のお話。『何で突然そんな地味な所を……』『時系列的に有り得なくね?』『それだったらメーティを出せ』などのツッコミは受け付けませんので悪しからず。

「……全く、わざわざ教室でする会話じゃないでしょうに。気持ち悪いったらないわ。ああいうアホって一体何考えて生きてるんだろう。せめて目の届かない所でひっそりやってれば関わらなくて済むのに……ブツブツ……」

「……相変わらずうねうね毒吐いてるねー。幼馴染クンがオタ化しちゃった事、未だに根に持ってるんだ?」

「うっさいわね、アンタには関係ないでしょ、ミミ。さっさとそっちの仕事も終わらせてよ」

「はいはーいっと。『成績優秀で優しく清楚な桜木梨羽』が聞いて呆れる毒舌ぶりだこと。ファンのコ達にうっかり暴露してみたいわ」

「ご自由に。そんな事されても痛くも痒くもないから無駄よ」

「そうねー、むしろその隠れドS気質はマニアにとっちゃご褒美みたいなもんだからねー。そっち系の新規ファンが急増したりして。うん、それはそれで楽しそう♪」

「………………はあ」

 掲示板のお知らせプリントの張り替えをしながらカラカラと笑う相方のテキトーさ加減に嘆息しつつ、教室の観葉植物への水やりを終えた私は未だ謎トークを楽しげに展開しているキモオタコンビをチラ見して、これまた嘆息一つ。ここ数年間、この友人やアイツの所為でストレスの溜まり方が確変しているみたい。
 相方こと『新海(にいみ) 愛美(まなみ)』は私の親友。小学校からの腐れ縁で同じ弓道部に所属し、日々切磋琢磨している間柄でもある。しかも彼女は部長。射は私の方が中てるけど。琉依ほど長くはないが、昔馴染みという事もあり私達の内情をある程度知っている数少ない人間だ。美少女然とした、ものすごーく可愛らしい名前とフワフワ系の容姿に反して、楽しい事大好きなあっけらかんとしたケセラセラキャラの彼女。名字と名前の両方に『み』が入っている事から、小学生の頃に誰かが付けた『ミミ』という渾名が今でも通称になってしまっているのだ。
 昔は恋愛なんて面倒くさくて面白くなーい、なんて言ってた彼女にも、豹変する瞬間が訪れるようになった。それは……

「よっす、いつもながらカオスなトーク繰り広げてんなー、オタコンビ。朝から空気が澱んでんぞ」

「おおwww藤堂(とうどう)氏www椅子を使わせてもらっているでござるwww今空ける故、しばし待たれい(ビシッwwwww」

「おーぅ秋臣(あきおみ)。今日は珍しく結構早いな。雨でも降るかね?」

 琉依が座っていた片瀬の前の席の本来の所有者、『藤堂 秋臣』の登場。あのキモオタコンビにちょっかいを出すクラスでも稀有な存在だけど、それはどうも個人的な利害が一致している為であるっぽい。
 顔・成績・運動神経共に至って普通の特筆すべき点が見当たらないこの藤堂。あるとすれば割と家族思いだという噂と、あの隔離指定人物共の相手を臆する事無く出来る点くらいか。同レベルでのキモオタトークを展開している所は見た事ないけど、何か妙にウマが合う感じは見受けられる。
 因みにこの藤堂、何処かで何かの作品の主人公だったりした事があったらしいけど……それはまた別のお話。『だから何で突然そんな中途半端な所を……』『だから時系列的に有り得ないだろ』『だからそれならメーティを出せと何度』と言ったツッコミは受け付けませんので悪しからず。

「うっせえ。オヤジが今日から出張で朝の支度させられてたんだよ。その影響で早起きしすぎちまった。……ところで信二、例のブツ手に入ったか?」

「おう、アレな。手に入れるのに苦労したぜー」

「ドゥフフwwwアレでござるかwww? アレでござるかwww? フォカヌプゥwww拙者にも回して欲しいでござるwwwww」

 教室の一角で何やら怪しげな取引をする人間レベル的平均点未満トリオ(普通一人、ダメ人間二人でブッチギリ平均未満)。どんなに非人道的なシロモノであれ内容物を確認すればドン引き確定なので、わざわざ暴いてやる必要もあるまい。そんな行為は精神衛生上不必要だ。射で遠距離攻撃を試みたい所でもあるのだが、そんな事したら矢が穢れそう。
 ……そんなおどろおどろしい毒の沼地みたいな光景を、何故かキラキラした瞳で見つめる乙女が一人。

「ねえねえ、藤堂くんってカッコ良くない?」

 私の相方、美少女新海さんが理解不能な台詞を吐いて、頬を染めていた。昔から結構モテる癖に、どうしてこうなっちゃったのか。恋愛なんて面倒くさくて面白くないのではなかったのか。世の中って分からない。

「はあ? どう贔屓目に見たって普通でしょ? 自分でもそう認めてるし。アンタ目がオカシイんじゃないの?」

「そんな事ないってぇ~♪ 絶対カッコイイよぉ~♪ よしっ、今日は部活も早く終わるし、一緒に下校出来るように誘ってみるっ! あたし、頑張るよぉ~!!」

「………………………」

 ……これは誰だ。こんな甘ったるい声を出す親友は知らない。何でこう、私の昔馴染みは人格変貌が激しいんだろうか。昔は皆可愛かったのに。世の中って理不尽。はあ、と溜め息一つ。色々と物申したい所ではあるが、人の恋路を邪魔するほど野暮ではないつもりだ。私に迷惑をぶん投げて来ない程度なら好きにすればいい。

 私は快晴の青空に目を眩ませつつ、再び大きな溜め息を吐き出した―――――





「……ね、ねえ、藤堂くん」

「あー? 何だ、新海か。どうした、オレに用事なんて珍しいな」

「う、うん。えっと……あのね? 今日……部活が早く終わるんだ。もし良かったら……その、少し待ってて……くれないかな……?」

「? 何でオレが待たなきゃなんねえんだ? ……ああ、そうか。そういう事か。もしかしてお前……」

「えっと……その……出来たらでいいんだけど……あ、あたしと一緒に帰っ……」



「オレに日直の仕事押し付けようって魂胆なんだろ。全く、幾らオレが暇そうだからって自分の仕事を他人にやらせようとか図々しいにも程があんぞ」



「……………………」

「あれ? どうした新海? 黙りこくっちまって」

「藤堂くんの……………」

「……ん? な、何か妙な既視感じみたものが………」

「ばかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!」

「ごげぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!?」



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