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幼馴染……それは綺羅びやかな出逢いと雅で甘美な思い出に染められた大切にして不可欠な存在であり、互いの手を取り合い共に支え合い、約束の未来へと進み苦楽を分け合う掛け替えの無い特別なパートナー……のはず。 作者:新夜 詩希
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【悲嘆渦巻くブレイクファースト】

「おお、お早う梨羽ちゃん。今日も朝練頑張っていたようだね」

「あ、お早うおじさん。毎朝騒がしくってゴメンなさい」

「ははは、いいんだよ。梨羽ちゃんだって僕の娘みたいなものなんだから。遠慮なんてするもんじゃない」

「ふふふ……貴方はいつも梨羽ちゃんには甘いんだから。娘を産んであげられなくてスミマセンでしたねー」

「そ、そんな事言ってないじゃないか。全く、母さんは何年その事で責めれば気が済むんだろうねぇ……」

「あははっ、仲のいい証拠じゃない。あ、私も手伝うよ、おばさん」

「いいから座ってお父さんの相手でもしてなさい。あとは並べるだけですからねー」

「はーい。朝練したらお腹減っちゃった」

「朝から元気いいね。母さんの料理が美味いからって食べ過ぎると太るよ」

「おじさんっ、女の子にそんな事言ったらホントなら嫌われちゃうんだからねっ?」

「ははは、スマンスマン。梨羽ちゃんに嫌われてはショックで寝込む事に……」

「ドゥフフwwwキタコレwwwネ申スレに遭遇してしまったと言わざるを得ないでござるwww>>1乙wwwコポォwwwww」

『……………………』



 朝食の時間を迎える林原家のダイニング。爽やかで微笑ましい家族の会話(私は実子じゃないけど)を展開しているにも拘らず、それを携帯眺めてニヤニヤしながら独り言を呟いている一体の巨オタがブチ壊す。空気ブレイカーのスキルは日本有数かも。
 いつも通りの朝食を開始したはいいけれど、林原夫婦と会話するのは専らご近所さんの私で、当の息子は会話に参加どころか携帯を注視しているだけで目を合わせもしない。それだけならまだしも、変な独り言で空気を破壊に掛かったりもする。これならいっそ居ない方が気楽なのだけど……自分の家でもないのにそんな事を申言出来るほど偉くなった覚えはない。

「フォカヌポゥwww拙者は激しくzipを所望でござるwwwww」

 だから何語だそれは。知り合いにこんな異次元言語使いはいない筈なんだけど。

「みwwwなwwwぎwwwっwwwてwww来wwwたwwwww」

 もうツッコミ入れるのもバカらしい。いっそ本当に射の的にでも括りつけてしまおうか。二~三射撃ち込んでジェノサイドしてみたら、むしろそこから脳がクラッシュののち初期化して正気に戻るかも知れないし。……うん、試す価値はあるかも。
 などと声に出さず物騒な計画を立てていると……

「ああああああっ!! 何でこんなキモイ子に育っちゃったのかしらぁぁぁ!? 私の育て方が悪かったのかしらぁぁぁぁ!?」

 これまたいつもの病気が始まった。題して『息子の莫迦さ加減を呪う狂気の母親症候群《ママンクレイジーシンドローム》』。あかりさんがこの小説の不条理……もとい、二次元にドハマリしあっちの世界から帰って来ないバカ息子のキモグロぶりを嘆き憂いて発狂してしまう、1日に数回の頻度で発作を起こす謎の奇病である。回復の兆しは今の所ない。まあ病原も回復法も分かり切ってはいる訳だけど。自分の息子をキモイ呼ばわりとか流石にどうかとも思うが、これがまたガッツリ同意出来てしまうから始末が悪い。あ、育て方云々はあかりさんに責任ないと思うよ、うん。

「昔はあんなに可愛かったのにぃぃぃぃ!! こんなキモくちゃ梨羽ちゃんのお婿さんに相応しくないじゃないのぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 同じテンションでさめざめと泣き崩れるキモオタの母。ご安心召されい、こんなのを婿に貰う気は毛頭御座いませぬ。

「ぽいぽいぽいぽぽいぽいぴーーー!!! アンタ○して私も○ぬぅーーーーー!!!」

「オウフwww今日も母上は荒振ってござるなwww鷹でござるかwww? 鷹でござるかwww?」

 私のキャラ崩壊も結構なはずだけど、この御方には敵わない。若々しくて家事も上手く、射も一流と非の打ち所がないかのように思われていたあかりさんにも、かような欠点が存在するという有り難ーいお話。取り敢えず、そのフレーズはマズイと思いますよ、あかりさん。

「はっはっは、今日も朝から二人とも元気がいいなぁ。会社勤めでストレス満載の僕としては羨ましい限りだよ。少しその元気を分けて欲しいくらいだ」

 ものっそい他人事のように、目玉焼きを食べながら義雄さんがのんびりと発言する。目玉焼きに梅ドレッシングという通なんだか味覚障害なんだか分からない食べ方で、優雅に朝食を嗜んでいらっしゃっていた。……この人の動じなさもかなりのものだ。最早達観の領域だろう。

「………。んまあ、いつもの事ではあるけど。いい加減頃合い見計らって何とかしないと不味くない? おばさん、その内自我崩壊しかねないんじゃ……」

「大丈夫大丈夫、母さんのヒステリーは今に始まった事じゃないしね。生理現象みたいなものだよ。山を越えれば落ち着く。そして何より、観てて面白いじゃないか。止めるなんて勿体無い」

 あっはっはー、と快活に笑う中年タヌキ。そのおおらかな性格と意外な……と言えば失礼だけど、卒のない仕事ぶりで会社では管理職として一目置かれているらしい。この人達の馴れ染めってどんなんだろうか。凄く興味があるけど、未だに訊いた事がない。あのおばさんとこのおじさんの事だ、きっと一癖も二癖も、もしかしたら異世界冒険譚辺りにまで発展しそうな程面白い馴れ染めに違いない。今度折を見て根掘り葉掘り訊き出してやろうっと。



「ええ……そりゃあ逢いたくて逢いたくて震えるってなもんよ……。タマシイぐらいレボリューションしちゃうわよ……。そうでしょう? だって魔法の言葉で楽しい仲間がぽぽぽぽーんだもの……。ムスコでしょうか? いいえ、ヲタクです。………ブツブツ………ガガ様ブラボー…………」

「ヌポォwwwこれまた良スレでござるwwwこれは全力で保守せねばwwwww」

「ご馳走様でした。おじさーん、私今日日直でもう出なくちゃいけないから、片付け頼んでもいいー?」

「了解。行ってらっしゃい、梨羽ちゃん。勉強頑張っておいでー」



 色々とツッコミ所は多いけど、これが私の日常だから仕方がない。さて、今日も一日頑張りますか―――――



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