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厄病女神寄生中
作:雑草生産者



拗ねてる先輩と厄病女神


 矜持を傷つけられた先輩はとってもねてしまいました。
 ぶすーっとした顔ですぱすぱすぱすぱ肺を虐めるが如く煙草を吸い続けたのです。私はその側に立っておろおろとするしかありませんでした。
 放っておいたら恒久的にその状況が続いていそうでしたが、
「いい加減、帰れよ。てか、ドア直すの手伝ってくんね?」
 と、ドア修理中の部屋の住人に言われ、私達はすごすごとその部屋を後にしました。

「先輩、先輩、今日の夕飯はどーしますか?」
「………………」
「お刺身なんてどーですか? 先輩好きでしょう?」
「………………」
「あ、お寿司を食べに行くなんてどーでしょう? たまには外食もいいですよね?」
「………………」
 私はしきりと話し掛けますが、先輩の反応はありません。
 煙草を銜えたまま九本壮の廊下をずんずん歩いていきます。木造建築なので灰を落とさないで欲しいです。火事になったら困ります。ここの住人の方達が。

「あ! あ、ああー、お、おはよう!」
 九本壮を出ると、いきなり京島さんに挨拶されました。何で彼女がここに?
「何故、京島が?」
 私と同じ疑問を感じたらしく先輩が尋ねます。
「あ、あー。た、たまたま通りがかってー……」
 京島さんの返答を受けた私と先輩は黙ってじと目で彼女を見つめます。京島さんは観念したように答えました。
「……偶然ではない」
 そりゃそうです。こんな都合の良い偶然などあるはずがないのです。
 京島さんが言うに、彼女は私と殆ど同じ道程みちのりを辿ってきたようでした。
 何の用でか木暮壮に行った彼女は二十日さんに先輩の留守と家出を聞かされ、先輩の捜索を決断。私と同じように大学構内をうろつき、うすむらさきさんと遭遇。同じように二つのヒントを貰った彼女は先に九本壮へ来たそうです。あと十数分でも私が遅れていたら先輩を発見したのは京島さんだったかもしれません。危ないことです。
 だって、もしも、弱りきった先輩を京島さんが見つけたら、どーなることでしょう? 流れによっては2人の仲に重大な変化が起きる可能性があります。場合によっては私にとって不都合なことになることも考えられます。
 私は密かに安堵の息を吐きました。そういった事態にならなくて安心したのです。
 しかし、先に先輩を見つけた私が先輩とそういった仲に発展せず気まずいことになってしまったのは何故でしょうか? 不思議不思議。
「はあ……帰る……」
 先輩は疲れきった顔で紫煙と共に呟き、とぼとぼと歩き始めました。
「あ、何故、彼はあんなにも元気がないんだ?」
 京島さんが小声で私に尋ねて来ました。
 私は同じく小声で答えました。つまり、昔、先輩が付き合っていたという檜さんたる人のことを聞き出そうとしたら、先輩は部屋を飛び出し、それを追跡して、更に追及した結果、何だか先輩を傷つけてしまい、先輩は不貞腐れてしまったということです。
「ああ、彼はプライドが高いからな……」
 京島さんはそう呟き先輩の背中を見つめます。
 私はその京島さんを伺い見て不機嫌に思います。むー。見るな見るなー。何だか京島さんに先輩を取られそうで嫌なのです。

 私たちは先輩の部屋に戻ってきました。
 相変わらず先輩は窓辺で煙草を吹かし、京島さんは私が出されたお茶を飲みながら、ちらちらと先輩を見やり、手持ち無沙汰な私はとりあえずテーブルを拭いたりしていました。
 部屋には微妙に気まずい空気が満ちています。
 一体全体、どーすれば、先輩の機嫌を直すことができるのでしょうか?
 私の不機嫌は先輩が優しい言葉を投げかけてくれたり、ちょーっと触れ合ったりしてくれればすぐに直るのですがー。私がそれを先輩にしても彼の機嫌が直るとは思えません。
「はあ……。どーしたものでしょう?」
 私は口の中で呟きます。
「ん?」
 私はすぐにあることに気付きました。
 私は気付いたばかりではないですか。私は知ってしまったばかりではないですか。
 先輩の不機嫌や怒りは他の感情を隠すものだということを。
 じゃあ、私が優しい言葉を投げかけたり、触れ合ったりすることも、実は先輩は嬉しいのかもしれません。いや、そうに違いないのです。
 私はニヤリと笑いました。


ごめんなさい。短いです。申し訳ございません。
つ、次は、頑張りまふ……。











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