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雅3(6月20日、22日、4)


  四

 六月二十二日。今日は久しぶりの晴れの日だ。とはいっても、雲が六割がた空を覆っている。何かのクイズ番組でやっていたが、雲が空の二割から八割を占めているのは「晴れ」になるのだそうだ。ちなみにゼロから二割までが「快晴」で、九割から十割が「曇り」
 何にしても、雨が続いていたから、少しうれしい(勿論、雨も好きだけれど)梅雨明けも近いのだろう。

 昨晩、一通のメールが届いた。鮫島先輩からだった。仲良くなったついでに、何か飛鳥様に関する情報が入ったら教えてもらおうと、この間聞いておいたのだ。
〈火州が話があるらしい。明日昼、屋上〉
「火州」という字を目にして、心臓が跳ね上がる。メールの内容は本当に用件を伝えるだけの簡素なものだった。しかし、それ故より強く目を逸らせない現実を突きつけられた気がした。震える指先で〈分かりました。ありがとうございます〉と打ち、送る。しかし、送った直後に飛鳥様はその時どんな感じだったか聞けばよかったと後悔した。それでも、前と同じように笑いかけてくれることはない、と覚悟しておこう。
 その後あたしは座っていた自室のいすから立ち上がり、ベッドに突っ伏してそのまま寝てしまった。
 夢の中で会った飛鳥様は、二度と振り返らなかった。

 ひどく長く感じた一、二限目に比べ、三限目は驚くほど早いスピードで進んでいった。それは裏切ることなく、確実に心臓の音の速さに比例している。
 授業の内容がまるで残らない。得意とする英語でさえ、指名されても答えられなかった。クラスの人間の薄気味悪い笑い声が耳に入ったが、そんなことも普段なら考えられない程どうでもよかった。
 チャイムが授業終了の合図を告げる。終了したのが本当に授業だけだったかは分からない。
屋上へ向かう時はいつだってわくわくしていた。体が軽くなって、頬が緩みきって、どうかしたらスキップしてしまいそうなくらいだった。今日もいい天気。そんなことさえいちいち有難いと思えるほど、あたしは豊かな人間になれた。
 だから初めてだった。屋上に向かう足が、鎖と鉄球につながれたかのようにひどく重たい。心臓が、常と似ているけれど全く種類の異なる音を立てる。屋上へ続く階段の前で一度立ち止まり、屋外へ出るドアの前でもう一度立ち止まった。
 時計を見る。十二時半。深呼吸をする。そうして、何度も口にしてなじんだその名を呼んだ。




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