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聖18(3月6日、13日、4)


  四

 視線の先が再び握りこぶしの上で留まる。一方的に嫌悪していた相手と自分は、他人から見たらまるで同じ状況に立たされていた。違う、と叫んだところで自分でもその根拠を説明しようがないのだから仕方がない。それは「数」で決まることではないのだ。そうした僕の心情を察してか、しばらくしてからその口を開いた。
「いや、でも後腐れとか、そういったもんがない分はそっちの方がマシなんだろうが」
 顔を上げる。その頬が困ったようにゆるむ。前髪を書き上げると、背もたれにその身体を預けた。
「いや、こっちのことだ」
「・・・・・・別れ、られたんですか?」
「・・・・・・まぁ、何とか、な」
 その顔が向こうを向く。カーテン越しに影が映った。鳥か何かだろう。それはスッと横切ると、斜め下に消えていった。
「奈良には、いつ行かれるんですか?」
「・・・・・・今月の終わりだろうな」
「具体的な日時は決まっていないんですか?」
「ああ」
 僕は枕元に飾られた花を見やると、ゆっくりと息を吸う。
「草進さんはそのことを・・・・・・」
 互いに異なる視線の先。それでもその姿はしっかりと映る。きっと、その人は笑ったと思う。
「知らない」
 その場違いなほど落ち着いた物言いに、僕の方が取り乱す。
「何で・・・・・・」
「知らせる必要がないからだ」
「そんな・・・・・・だってあなたは」
 向き直る。その眉はやはり困ったように下がっていた。
「お前にとっては、いいんじゃねぇの?」
 びくり、と身体を強張らせる。そんなこと、微塵も思わなかった。それよりも言っている意味が分からない。
「な・・・・・・んで」
 かすれた声でようやくそう口にすると、火州先輩は肩をすくめた。
「無理、だ」
「何で」
 その目が寂しげに細まる。
「自信が、ないからだ」
 室内をとめどなく覆っていたざわめきが遠のく。風が入らないはずの窓の傍で、カーテンがゆらりと揺れた。




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