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雅17(2月24日、25日、1)


  一

 最初に目にした光景で腰が抜けていてもおかしくなかった。ただ、それでもそんな甘えた事を言っていられない状況であるということは把握していた。
 最初に連絡を受けたのはあたしだった。それは青い顔をして職員室から出てきた真琴の友人と、生徒会室を出て帰ろうとするあたしが偶然鉢合わせたためだ。その子は真琴から送られてきたメールを見せると、それを受け取った数分前の時間を口にした。あたしはすぐさま水島に連絡を入れると、同時に屋上に足を運ぶ。高崎先輩は試験が終わってもうのんびりしているはずだった。
 慶子、と名乗る子が受け取ったメールの中に「火州さん」という文字が見えた。嫌な予感がしたのはそのためでもあった。
 飛鳥様はケンカが強い。そうしてケンカっ早いことを知っていた。外に多く敵をつくっていることも知っていた。そこにあの子が巻き込まれているとしたら。
 背筋が凍る。あたしは丁度階段を下りてきた高崎先輩に声をかけると、すぐさまその車に乗り込んだ。押し留められる事は分かっていた。想定していたそれと、全く同じ理由で来ないように言われたものの、わざと場所を割らない事で同席する事を余儀なくさせる。
 移動中に送ったものらしく、目的地こそ特定できなかったけれど、途中から何かを納得したように高崎先輩は車のスピードを上げた。それはまるで見えないものが見えているかのように何の疑いもなく選んだ道を走り抜けていく。

 現場に着くと同時に車から飛び降りる。既に開いていたドア先から悲鳴が聞こえてくる。声の高さからして女性のものであるようだ。しかしそれは必ずしも真琴のものではなかった。
 天井の高い倉庫の形状をしたそこに入ると、まず黒い獣が暴れているのが見えた。近く、ほぼ全裸の女性が映りこむ。その時、隣から声がした。
「鮫!」
 その声は強く、悲鳴を潜り抜けてその名を持つものに届く。鮫島先輩は、水島の後ろで口の端を吊り上げると「ステイ!」と叫んだ。途端に好き放題暴れ狂っていた獣達がその場に伏せる。
 あたしはそのタイミングを見計らって、まず被害者だろうと思われる目の前の女性を外に連れ出そうと試みる。しかしその腰が抜けている。半ば引きずるような形でその手を引くと、近くにいたヒゲの男が気付いてこっちに向かって来た。
「悪い、音無しくしといてくれ」
 しかし高崎先輩にその首根っこをつかまれ、それ以上歩を進められなくなる。
「んだテメェは!」
 そうして次の瞬間、振り向きざまに殴りかかる。だが鈍い音がしたかと思うと、その場に横倒れになった。その間、おそらく一秒にも満たなかった。ビンタで横倒れになるのは、初めて見る。あたしがごくりと喉を鳴らして固まっているのを見やると、高崎先輩は「早く」と手で合図した。その後はっとして自分のするべき事を思い出すと、すぐさま女性を外に引きずり出した。




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