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飛鳥3(6月20日、2)


  二

 身体はさっきよりだいぶ楽になった。にらみつけるように見上げて「お前、このやろ」と言う。鮫島はタバコをくわえたまま、口の右端を吊り上げた。
「俺ちゃんと言ったもん『後で文句言うなよ』って」
 俺の前にしゃがみこんで、「な、お前聞こえただろ?」とでも言うかのように首を傾げる。
 言われてみりゃあ微かにそんな記憶もないわけではないから罰が悪い。それでも鮫島は一言「悪かったな」と口にした。そうしてタバコと一緒に買ってきたのか、上着のポケットから携帯灰皿を取り出すとその中に灰を落とした。再びそれをくわえる。
 そのタバコが丸々一本なくなるまで、俺たちは何も言わなかった。ただじっと、その沈黙の中を佇んでいた。
 白い煙のかかった、沈黙だった。

「なぁ」
 鮫島は携帯灰皿の中に吸殻を落とすと、ふたを閉めて言った。
「何があった?」
 高崎が、いろんな人のいろんなことを漠然とした興味で知ろうとするのに対して、鮫島は自分が興味を持った相手について詳しく知りたがる。その代わり、高崎が自分のことをほとんど話さないのに対して、鮫島は必要とあれば自分の情報を惜しげもなくさらす。
 自身と他者の考え方が根本的に違っているのだろう。しかし、俺含め、そうして互いが互いを同じように必要と感じているのだけは、何があっても変わらないと思っている。そのことだけは、根拠のない自信があった。何故かなんて分からない。でも、あった。
 俺は鮫島が好きだった。だから話す。
「あいつを、見つけた」
「あいつって? あの草進とかいう子に何か関係あるのか?」
 鮫島はヤンキー座りが疲れたのか、そのまま後ろにケツを下ろす。その顔が次の瞬間はっ、と強張る。
「え、おい、まさかあん時の・・・・・・?」
 早い。最小限の発声だけで読み取った。
「あぁ。近いうちに高崎にも話す」
 鮫島は続けて聞く。
「え、じゃあ、あん時お前を助けたって子が草進・・・・・・」
「あぁ」
 鮫島の洞察力は、時に恐れを感じるほど鋭い。こっちが口にするまでもなく、事実が色をなして鮫島の口から紡がれていく。




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