真琴3(6月20日、4)
四
六月二十日。午後十二時四十五分。天気予報は当てにならない。雨は強くなる一方だ。
保健室の先生は「外出中」になっていた。めずらしい。この時間でも校内にいるわけだ。大変だなぁ保健室の先生も。あたしは勝手に開けて入り、
「大丈夫ですか?」
ドアを閉めてそう尋ねる。
次の瞬間、つかまれていた手が開放され、代わりに胸ぐらを捕まれ、上に引っ張り上げられた。その時見た「目」は、以前階段のところでみたものと同じ種類のものだった。違うのは見上げているか見下げているかだけ。
「え、鈴・・・・・・」
「呼ぶんじゃないわよ。あんたごときが」
高いはずのアルトが地を這う。
ぐん、と遠心力によって引っ張られ、奥にある真っ白なベッドにふくらはぎをぶつける。ベッドは丁度膝の裏の高さで、ともすれば座ってしまいそうだ。身体が強張る。今自分の身に起こっていることに対して適応するのに必死になる。先輩は続けた。
「関わってくるだけで・・・・・・いいご身分ね」
キレイなだけに、凄みを増して恐ろしい。あたしは今自分の身に何が起こっているのか理解が出来ない。
力としては決してそこまで強くない。しかしされるがままでいるのは、ただ単純にここにある目が怖かったためと、下手に振り払った後のことを考えたためだった。
先輩は胸ぐらをつかんでいた手を離す代わりに、左手で乱暴にあたしの髪をつかむと、右手で何かを探した。
「痛っ・・・・・・」
つかまれ、引っ張られた頭皮が痛みを覚えて思わず声が漏れる。そして視界の端に先輩が何かをつかむのが見えた。
「や、やめっ・・・・・・」
ジャキ。
バラバラと髪が落ちる。痛みから解放される傍らで、先輩の手にはつい今まであたしの一部だった髪が握られているのを目にする。不揃いになった髪の一部が視界の端で揺れる。
「他は?」
先輩は持っていた黒をその場に落とすと、うめくように言った。絶対的な恐怖に支配されたあたしは、先輩から出る言葉の一つ一つが金縛りの効力を持つことを知る。
「他に、飛鳥様はあなたのどこに触れたというの?」
その右手には、手元の黒い、大きなはさみを握ったままだ。薬品のにおいのせいではないが、吐きそうになる。
「・・・・・・そう。手首」
あたしは、強くつかまれていたためジンジンしていた手首を、無意識のうちに押さえていた。
「ち、違っ・・・・・・」
先輩の左手があたしの腕をつかむ。
恐怖で腰が抜けそうになった、そのときだった。保健室のドアがガラリと開いた。
先日書き方についてご指摘いただきましたので、前半の一部、訂正させていただきました。
とはいっても書き方の問題なので内容自体は全く変わってませんが、少しでも読みやすくなればいいな、と。
書く側になってしまうと、読んでくださってる方の視点が分からなくなってしまうので、こういったご指摘はとても有難いです。
ほんの一部しか訂正できなくて申し訳ないのですが、その他の事もこれから書いていく上で参考にしていきます。一撃必殺!さんありがとうございました。
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