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真琴2(6月15日、4)


  四

 教室に着く。危なかった。水島君はもう支度を終えて、教室を出るところだった。あわてて呼び止める。
「み、水島君」
 振り返る。口から心臓が飛び出そうだ。
「何?」
 視線を合わせることが出来ず、おろおろしながら、
「あ、あの・・・・・・今日の・・・・・・宿題が、あっ、国語の。まだ水島君出してなかったみたいだから・・・・・・」
「今日、出せる?」と、やっとの事でそこまで言うと、目を上げる。
 水島君は「あ」と言うと、右手の人差し指で頬を掻いた。今度は水島君の視線がさまよう。その手の内にある事実を告げられない心情を察して、「あ、忘れたんだったら」と助け舟を出すと、水島君は顔を上げた。
 えっと、出せない人がいた場合、先生が言ってたのは・・・・・・あ、そうだ。
 ポン、と手を叩いて言う。
「いい度胸してるな」
 一瞬、二人の間の空気が有り得ない温度で凝固する。
 あたしは、自分自身が言ったことを理解するまで、たっぷり五秒の時間を要した。水島君は目を見開いたまま、片方の口の端だけを不自然に吊り上げた。頭にカーッと血が上る。
「あ、えと、そうじゃなくて」
 手がわたわたとせわしなく動き回る。
「あ、ああ明日! 明日お願いね!」
 やっとの事でそう言うと、水島君は「はは、ごめん」と言って、部活に行った。笑ってはいなかった。手を振る。水島君が教室を出て行くと同時に一つ、浅いため息をついた。金山君と山本君はもう教室に残ってはいなかった。あー、明日先生に謝らなければいけない。明日は朝早めに学校に来よう。

 それにしても。あの言い方はないだろ。自分で自分につっこむ。
 部活、行かなきゃ。
「草進真琴いるかー!」
 あぁ! 助けてこの現実!
空が分厚い雲で覆われているため、暗くなるのがいつも以上に早く感じる。強い雨音だけが、やけに耳に残る。
「今日は部活があるんです」
 ドアから出てもらう。
「そうか。じゃあまた明日な」
 そうして明日の現実が約束された。




ようやく戻ってきました。まずはここまで読んでくださってる方々に感謝を。
ありがとうございます。

さて、「1」で起承転結の「起」を。「2」で「承」を。そして次回から「転」をお送りしたいと思います。だからといって「4」で終わることはありません。基本「18」までで考えているんで、当分終わらなさそうです(笑)
これからもお時間の赦す限り立ち寄っていただけたら幸いです。
ご縁のある方々、ではまた作品内でお会いしましょう。


速水詩穂


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