ブックリスト登録機能を使うには ログインユーザー登録が必要です。
真琴2(6月15日、1)


  一

「大丈夫なの、真琴?」
 机の上に突っ伏していたあたしに向かって、声がかけられる。顔を上げると、慶子が机の反対側にしゃがみこんで、こっちを見上げていた。
「軽く大丈夫じゃないかも」
 目を閉じて眉間にしわを寄せ、むぅ、とうなる。それを見て慶子が「何だかお坊さんみたい」と笑う。
 四時間目が終わった。今日は次の授業で終わりだ。体育。頑張れ自分。
「大丈夫、あと一時間は元気でいても」
「その後はどうしたらいい?」
「耐える」
「・・・・・・」
 再び机に突っ伏した。
 何故こんなにテンションが低いのかというと他でもなく、金髪のあの怖そなお兄さんが、ほぼ毎日ここへやってくるようになったためだ。以前五月の七日に会って以来、ほぼ毎日だ。エブリディイエー。
「ほらほら。水泳だから早く行かなきゃ、遅れちゃうよ」
「えー、今日本当にやるのかなー?」
 六月十五日。キンキンキラキラ月曜日。外は雨。
 夏本番に備えて、草木がここぞとばかりに一気飲み。一気飲みという程の量でもないか。
 
 蛍光灯の照らす室内に比べ、窓の外はひどく暗い。灰色がかった世界はやたら寒そうに見える。ここから見ている分にはいいのだが、これでプールなんかやったら大変だ。凍死だ凍死。
「やるよ。だって変更の連絡ないもん。ほら行くよ」
 右腕を引っ張られてなおも軽く抵抗するが、結局あきらめて更衣室に向かった。うぅ、風邪ひきたい。
 着替えて更衣室を出ると、やはり外は肌寒かった。雨の匂いが鼻の奥まで染み渡る。その上プールサイドに行くまでにはいくつもの水溜りを通り、はたまた冷たい雨を体中に浴びなければならない。天然シャワーひー。
 しかしメガネがないのは致命的だ。超ド級の近眼であるため、慶子に近くにいてもらわなければならない。ある種、おばあちゃんの気持ちを体感できる。
「ほら、急いで」
 慶子の後をあわてて追う。その時、隣の男子更衣室から出てきた人と変なところでタイミングが合ってしまい、衝突してしまう。
「ご、ごめんなさい」
 急いでるのもあって、半ばパニック状態で頭を下げる。お互いド派手にこけることもなく、ただ単にぶつかっただけで済んだため「あぁ」という返事を聞いた瞬間、再び慶子の元へ走り出した。コラ、学べよって話だよね。
 プールサイドに続く階段の一段目に足をかけて、半眼になりながら慶子が言う。
「あんた、わざとでしょ」




+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。