飛鳥2(5月7日、6)
六
タチの悪い話だ。
ほんの数日前、訳あってケンカした連中に拉致される。あの時は鮫島が一緒だった。しかし一対四では頭数が違いすぎる。夕日の沈みかけた頃さびれた工場の裏にて、ボッコボコにされて意識も失いかけていた時だった。
目の前が急に暗くなり、衝撃で俺の後ろだけへこんだ石油缶にもたれた姿勢のまま、視線を上げた。
そこにいたのは、正面から夕日を浴びて悠然と立っている、小さな少女だった。
その後すぐ、俺は気を失う。覚えていたのは、その少女の背中と、長い黒髪と、その子が手に持っていたバッグに付いた傷だけだった。
その後病院を出てからというもの、海高の連中は二度と絡んではこなかった。病院に運ばれる際、俺の近くに落ちていたという西中の生徒手帳には、その少女の名がはっきりと記されていた。胸くそ悪くて、それはすぐに捨ててしまったが、
助けられたのだと思った。自分が見下して止まない、女というものに。
腹の中に起こったのは、半ば訳の分からない焦燥と、強い憎悪だった。
女は馬鹿だ。
ちょっと調子のいい事を言っておけば、すぐ勘違いして簡単に足を開く。俺が初めて「経験」をしたのは、中二の夏だった。特に年上の三年生だとか、はたまた高校生であっても、身長のある俺はそう子供に見られることはなかった。
甘えるフリをして見下す。猫なで声でささやく女。そうして母親を見下す。
女は馬鹿だ。
だが、その中でも唯一馬鹿の対象にならないのは妹の礼奈だった。俺の汚い部分を何も知らないで、無邪気に「お兄ちゃん」と駆け寄ってくる。年が離れているせいもあり、俺は小さな妹をこの上なく大事に思っていた。
「お兄ちゃん」
ちゃんと手を洗ってから、駆け寄ってくる頭をなでる。
「おう。幼稚園は楽しかったかー?」
へらへらしてんじゃねぇよ! と啖呵を切ってた俺が聞いてあきれる。
この姿を見られたら、マジで、いろんな意味で終わると思った。
「飛鳥様?」
びっくりして一歩後ずさる。
「あ、あぁ」
結局あの後、草進真琴をそのまま帰した。俺自身も不可解な点が(特に草進真琴自身においてだが)多いため、一度出直すことにした。
「そんなに驚かれなくても」
そう言ってふふ、と笑う。目の前に体操服姿の鈴汝がいる。
一階の、校舎をつなぐ渡り廊下。今から教室に向かうというところで、鈴汝とすれ違った。きまり悪く、頭をかきながら「今から体育か?」と聞くと、鈴汝は元気良く「はい」と答えた。
「今日はサッカーなんです」
そう言うと鈴汝は、頑張ってきます、と駆けていった。
腹ん中に引っかかったものがとれない。何をやっても集中力に欠ける。根本を解決しなければ何をやっても同じ事だということに気付き、その日も草進真琴のいる教室に行くことにした。
読者数確認のページを見て驚くことがあります。
1、携帯から読んでくださる人が結構いらっしゃる。
長ったらしい文章をあんなちっちゃい画面でちゃんと読んでくださっているのかと思うと、なんと根気強い方々がいらっしゃるのだろうと驚かされます。
2、ユニークさんが一日に何度も足を運んでくださる。
ユニークに対してPVの数が圧倒的に伸びるんですね。それを見るたびに、大切なのはそこにいるあなたを楽しませることなんだと確認します。
紙で書き始めた頃、読者は2人でした。
多くの方々の目に触れる上で、忘れてはならないこと。
何より今、この瞬間をあたしに下さっていることを後悔させないように。
作品の途中に失礼しました。
ありがとうございます。
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