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飛鳥12(11月8日、3)


  三

 ということで、長いようで短い、遅いようで早い日曜日がやってくる。
 十一月八日。天候は晴れ。約束は十三時であるにも関わらず、俺は朝からそわそわしていた。そんな俺の様子を見てか見ずしてか、礼奈もそわそわし始める。
「おっ買い物っ。おっ買い物っ。お洋服っ」
 口にする単語の語尾にイチイチ小さい「つ」がつく。唯一今回関わりのない楓だけが例の如く「うるさい」と言って図鑑を広げていた。今はもう秋の虫のページにシフトしている。
 俺は少し反省して、畳のど真ん中に座り込んでいる楓の向かいに座ると、礼奈を膝に乗せて一緒に図鑑を見た。
「ねー、コオロギってゴキ○リの仲間―?」
「しっ、後でな」
「えー、だって似てるー」
「コラ礼奈、静かにしないと・・・・・・楓君に食べられちゃうぞー!」
 そうしてきゃはははと二人して笑い転げているのを見て、とうとう楓の雷が落ちた。
「静かにしろよ!」
 俺たちは別室に移って、礼奈のお人形さんと遊ぶ事にする。

「こんにちは」
 日曜のただでさえ混雑する改札の先で、真琴はにっこり笑って頭を下げた。俺は気恥ずかしくて「おう」と答えてすぐ目を逸らしたが、その姿はやはり一瞬で脳裏に焼きついた。
 内側の淡い桃色に、グレーの細身の上着。髪はゆるく結んで、左肩の前の辺りに落ちかかっている。
 それだけでもいいのだが、何より
 チラリ、ともう一度見やる。真琴はかがんで礼奈に挨拶をしているところだ。
 スカート! 白の膝丈のふわふわ!
 いろんな意味でこっそりガッツポーズをしてしまう俺は、自重を覚えるべきだと自分でも思う。
「初めまして、草進真琴です」
 幼稚園児相手にも生真面目にフルネームで名乗る。すると礼奈はこそこそっと俺の後ろに隠れて、じっとその姿を見つめた。
 俺は苦笑いする。
「とりあえず、出るか」
 真琴は「はい」と答えた。




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