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雅12(11月4日、6)


  六

 試合が終わった直後、館内は未だざわめきを残したままでいた。
 当たり前といえば当たり前かもしれない。うちのバスケ部は元々そんなに強くないのに、たかが球技大会でこれだけのものを見れたのだから。
 落ち着かない大半は、やはり女子だった。
「ねぇ、あの人誰? 誰?」
「え、知らない。でも三回生の人でしょ?」
「じゃああっちの人は?」
「あ、あの人知ってる。生徒会の」
 キャピキャピ声が聞こえる中であたしは立ち上がると、まだポーっとしたままの真琴を引っ張って立たせ「出ましょう」と言った。人ごみは想像以上に体力を奪う。あと精神力も。そうしてふぅと息をつく、そのときだった。
「おい弟子! ちょっと来い!」
 館内に大きな声が響いたかと思うと。鮫島先輩は足を踏み鳴らしてやってきて、あたしの隣にいる真琴をヘッドロックな感じで捕まえると、「オラどけどけぇ!」と言って人ごみを掻き分け掻き分け出て行った。
 あたしは突然のことにただ呆然とその姿を見つめる。しかし、それだけでなく、それと同時に何か不穏な脈を感じ取った。

〈殺すぞ、お前〉
〈火州は真琴ちゃんのことが〉
 どくん。
 水島だけじゃなく、飛鳥様だけじゃなく、鮫島先輩までもあの子を
 それは不満。
 鮫島先輩も水島も、見ているのはあたしであるはずなのに、どうして皆あの子を気にかけるの?
 それは不満。
 黄色い声が飛び交う中、あたしはともすればねたみを一身に受けなければならない程のポジションにいるはずなのに
「え、あの子誰?」
「『弟子』って何? どういう関係なの?」
 真琴がスッと奪っていった。水島だけを見つめていたはずのあの子が、鮫島先輩を。
 急速に広がる「何」
〈いい? 水島君に近づいちゃダメだよ。それは、俺が赦さない〉
 そう言っていたはずなのに、自分はいいの?
 それはあたしが言いたかった。あたしを見て。あたしだけを見て、と。
 ゆっくりとまばたきをする。
 そうしておもむろに視線を流した先で、遠く水島と目が合った。しかし、水島は常に似合わず目を逸らすと、向こう側のドアから体育館を出て行った。
 きっと一気に人が減ったせいだ。急に風が通るようになる。そして
 やけに寒い、と思った。




次回は特別編で高崎です。まったりお待ちください〜。
ではまた。


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