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飛鳥2(5月7日、4)


  四

 五限目が終わると、既に授業終了の十分前から教科書を詰め込んでいた鞄を持ち、教室の外に出た。今は掃除の時間だ。しかし一旦出たはいいが、ふと思い立って教室に戻る。今行っても向こうはまだ掃除をしている頃だろうと思ったためだ。そわそわと落ち着かない。
 それでもしばらく待った後、今度こそ教室を出て階段を下りる。その後一回生のフロアまで下りたところで咳払いを一つした。
 草進真琴は二組だったな。
 よし、とクラスの前で立ち止まり、俺は教室の中を覗き込んだ。

「真琴ちゃんは図書館の掃除担当なんで、まだ帰って来てないですよ」
 教室内にその姿が見えず、とっさに近くにいた人間に声をかける。その結果、そんな答えが返ってきた。
 短髪ででこっぱち。思わずでこぴんがしたくなる。しかし、何かの折にまた頼るかもしれないと思い、一応名を尋ねておいた。草進真琴とは、一緒にバレー部に入った仲だと言う。
「あ、真琴ちゃんおかえりー」
 その後そう言うと「寺岡」と名乗った少女は、俺の後ろに向かって手を振った。振り向くと、そこにはおろおろしている草進真琴の姿があった。
「あ、えと、遅くなってすいません」
 やっとの事でそう口にすると、草進真琴は頭を下げる。
「じゃああたしもう帰るんで」
 寺岡サンはそう言って机のところに行き、バッグを取ると後ろのドアから出ていった。
 草進真琴はまだおろおろしている。何故かと思ったら、俺が教室の入り口をふさいでいるためだった。「悪い」とよける。「いえいえ」と首を左右に振って、教室に入っていく。
 あー疲れる。
 そこでふと思ったことを聞いてみた。
「今日は部活いいのか?」
 バレー部に入っているのなら、今日は木曜日だから練習があるはずだ。草進真琴は自分の机のところに立ったまま視線を斜め下に落とし、左右に振りながらもぞもぞと言う。
「今日は、昨日試合があったんでその振り替えで休みなんです」
「昨日試合? 授業は?」
「いえ、夕方から他校のチームの人たちに来てもらって、練習試合をしたんで」
 徐々に教室内の人口が減っていく。その後一度「真琴帰ろ」と寄ってきた女がいた。人工の力で直線的に引き伸ばされた髪、小さな体。
「うん、ごめん。今日ちょっと話していくから」
 草進真琴がそう言って顔の前で手を合わせると、女は「分かった」と笑ってこっちを見た。そうして俺に強い一瞥を残して、去っていった。
「け、慶子って言うんです。いつも一緒に帰っていて」
 中学の時からの友人だという。これは使えそうだ。腹割るようになればの話だが。
「そうか」
 そう言いながら俺はその前の席のいすを引いて、後ろ向きに座る。そうして真後ろの席と向かい合う形になる。草進真琴もそれを見て、自分のいすに腰掛けた。そうして「あの・・・・・・」と聞く。その目は早々「何の用か」を聞きたがっていた。俺は教室に誰もいなくなったことを見計らって尋ねる。
「もう一度聞く。お前、本当に俺と会ってないか?」





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