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真琴10(10月2日、5)


  五

「でもその津山って子が何するにしても、最低限あんたの友人を抱きこむ必要があるわけでしょ? その子の思惑一つで何もかも動くわけじゃないもの。そこはあんたにも何かしら落ち度があったんじゃないかしら」
 あたしは言われて自分の行動を思い返してみる。
 慶子・・・・・・そもそも最近、慶子とあまり話しをしていない。部活の関係もあって、ほとんど関わる機会がなかったのだ。そのこと自体、問題と言えなくもない。
〈ちょっ・・・・・・ねぇ、真琴〉
 その時はっと思い出す。師匠に呼ばれて出て行くときに、見上げられた目。
 慶子はあの時、確かにあたしの身の危険を案じてくれていた。しかし、千嘉ちゃんの言葉に甘えてその手を振り払ったのは、あたし自身だ。あの時振り払ったのは、本当にその手だけだったのだろうか? あたしは今さらながら背筋が寒くなるのを感じる。
 慶子が寄ってきてくれることをいい事に、あたしはその場その場振り返ることもせず、ただずっとそこにいてくれるものだと思っていた。
〈あたし、ミヤと食べるから〉
 前提が崩れる。
 気付かぬうちに、亀裂はじわじわと入っていた。

 慶子。
 やり場のない感情が溢れ出る。あたしは急に揺らいだ世界を手で覆って、しゃっくりをあげた。とめどなく、溢れる。失ってからしか気付けないなんて、何て愚かな事だろう。
〈真琴〉
 あたしはその最後の笑顔を、一体いつ見た?
〈うん、と、師匠〉
 めまぐるしく変わっていく世界に目を取られて、あたしは何を見ていた? あたしはただの高校生。それ以上でもそれ以下でもないはずなのに。
しゃっくりをあげながら、次々と落ちていく涙を拭う。そうしてあたしはひたすら自身の落ち度を呪った。
 その時ぽん、と頭に体温が加えられる。それは優しく乗せられたまま、時折左右に動く。
 鈴汝さんは何も言わない。何も言わないまま、ただ静かにそうしていた。
 本当に長い間、そうしてくれていた。




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