飛鳥10(9月22日、30日、2)
二
「それが・・・・・・赦した理由?」
「・・・・・・」
俺は迷った末、高崎に伝えた事を前提として話すことにする。
あの時から何か変化があったのか、あったとしてもそれは口にしていいほど確かなものか分からない。その代わり、この前提に関してはおそらく覆らない。
「・・・・・・憎んでるのは確かなんだ。でもそれを打ち消す思いが存在するのも確かで」
「だから赦した?」
「いや、赦してはいなくて」
「火州、じゃあさ」
鮫島はため息一つ、しゃがんで側溝にタバコを押し付けると、再び立ち上がって俺を見た。
「その『打ち消す思い』って何?」
一瞬強い風が吹きぬける。それが現実のものなのか、俺の脳内で作り出されたものなのかは分からない。
俺は目を見開いたまま、左を向く。
「いや・・・・・・それは」
「もういいじゃん。分かってる事なんだから。それが『好き』なんだろ? 言い訳すんなよ」
鮫島はフッと遠くを見やる。俺はきまり悪くて軽く視線を落とす。
「・・・・・・分かった。俺、お前が惹かれた理由と赦した理由別個にして、後者だけ聞こうとしてたけど、そもそもそこが間違ってたんだよね」
鮫島は新しいタバコを取り出そうとしない。その両手を組んで、はるか前方を眺めている。緩やかに頬をなでる風は、その髪を控えめに揺らす。
オレンジが、ゆっくりとさよならを告げる。俺はその白さを取り戻していく肌を食い入るように見つめる。
「元々切り離して考えちゃいけないことだったんだよな。それにそれなら『赦したから好きになった』以上に、『好きになったから赦した』の方が納得できるに決まってるわな」
再びその目が俺を捕らえる。
「残念だけど、その建前もう使えないと思うよ。好きになった時点で、全部ひっくるめて受け入れちまってんだから」
その目がうれしそうに細まる。そうして同時にその口元もゆるむ。「そうだろ?」とでも言いたげな。
〈食っちまって、腹ん中で飼育したいぐらい〉
俺は急に目の前が開けて、俺の中に渦巻いていたものの全貌が見えるようになる。高鳴る心臓が痛い。鮫島の言っていることが本当なら、あの時思わず口にした気持ちがしっかりと的を得ていた。無意識の内に俺は真琴を『全部ひっくるめて受け入れ』ていた。
ふわり、とその笑顔を思い浮かべる。しかし
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