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聖10(9月21日、2)


  二

 今日も雨。清音が響き渡る中、僕は図書室に向かう。普通雨の日は世界が灰色がかるものだが、今日はところどころ青空も見えている。天気雨、とまではいかないが、何にせよ幾分か晴れやかだ。
 湿度の上がった廊下は、体育館でのバッシュ同様、歩くたびに小気味よい音を立てる。僕はその頭を垂れた草木に目を向ける。

 昼休み。昼食を済ませた後なので、おそらく十二時半ぐらいか。
 そのドアを開けると、途端に蔵書の心地よい香りに包まれる。そうして借りていた本を返却すると、よく行く本棚に足を運ぶ。何度か回った後は大抵ここに落ち着くのだ。時間がない時は始めからここに来る。自分好みの似通った本は、ほとんどこの本棚だけでそろってしまう。
 僕は一旦その内の一冊を手に取るが、その後どうせ借りても読めないことを悟って再び本棚に戻した。そうして出入り口に向かう。その時だ。視界の端に見たことのある人影をとらえた。
 間違えるはずがない。明るい茶髪、秀でた額。その眉間に分かりやすくしわが寄っている。火州先輩は日の差し込む机の一角で、肘をついて何やら本と向き合っていた。
 声をかけようかそのままスルーしようか一瞬迷う。しかし、高崎先輩の助言を思い起こし、勇気を出して声をかけてみることにした。
「あの・・・・・・」
 場所が場所であるため、小さめにそう口にする。すると次の瞬間、その鋭い眼光が僕をとらえた。声をかけた後で言うのもなんだが、やはり一般的には関わりを持ちたくない相手である。
 火州先輩は相手が僕だと分かると、一瞬驚き、その後すぐにいぶかしげな表情をつくった。 僕は「あ、いえ、あの、通りがかっただけなんで」と言うと、そのまま立ち去ろうと試みる。しかし、
 ガタっ。
 ・・・・・・え?
 カウンターの前を通って、教室を出て後ろを振り返る。
「・・・・・・あの、特に要はないんですけど・・・・・・」
「あぁ? ふざけんなよ」
 何がだ。機嫌が悪いのか? いつも以上にガラが悪い気がする。
「ふざけてません。勉強の邪魔してすいませんでした」
 そうしてさっさと立ち去ろうとするが、「ちょっと待て」と腕をつかまれ、連行される。十二時四十分。運の悪いことに、このすぐ上が屋上だった。





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