真琴1(4月7日、2)
二
始業式が終わり、クラスでの自己紹介が終わり、連絡事項を聞き終わると、今日のところは下校となった。左から三列目の前から四番目。席に座ったまま頭を動かし、窓の外を眺める。一階なので、成長しきった木々が邪魔をして空は見えない。代わりに青々と生い茂った草木がなんとも優しい音を立てた。
緑は癒しの効果を持つと聞いたことがある。ゴルフをしていて視力が回復した例も実際にあるそうだ。しかしはたしてそれは本当に色としての緑による効果なのだろうか。そうだとしたら草木は太陽の光を受けて飲み込めない色を外に出している訳だから、草木にとっての「緑」はある種毒なのかもしれない。毒だなんて大袈裟か。あたしは肌色を毒だなんて思ったことがない。そんなことをぼんやり考えていると、
「真琴、帰ろ」
慶子がバックを肩にかけて机の前に来た。慶子の名字は「上地」だから、左から二列目の前から二番目の席。さっき全体の自己紹介が終わった後、早速左隣の人としゃべっていた。人見知りしないのは本当にうらやましい。
「うん。ちょっと待ってね」
どっさり配られたプリントをファイルに詰め込む。B4の用紙は折ろうかそのまましまおうかいつも迷う。結局いつも折らずに入れて帰る。それでいつも四つ角の先っちょがしわしわになって出てくる。学べよって話だよね。
高校生になって一歩大人になったのだから、と入れる前にB4を二つ折りにしてファイルに入れる。そうして何だかどうでもいい高校生としての第一歩を踏み出した。
「ごめんね、行こうか」
用意を済ませて立ち上がる。座って見上げると大きく見えた慶子は実際百五十センチそこそこ。急に元に戻って何だか笑えた。その時だった。
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