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真琴7(8月13日、5)


  五

「お前、誰好きなの?」
 さくさくと歩く途中、細い背中から声が降ってくる。
「え・・・・・・え?」
 あたしは突然のことに驚いて目を丸くする。
「な、何がですか?」
「誘ったのは火州だろうが、お前が目的としているのは別のヤツなんだろ?」
 心臓が喉元で鳴りだす。その動揺は、声だけできっと伝わってしまっているのだろう。
「雅ちゃんと仲良しなわけじゃないんだろう?」
 あたしは若干ムッとして言う。
「いえ、仲良しです。昨晩仲良くなりました」
「昨晩・・・・・・だったら少なくともここに来る以前は、雅ちゃんがらみでついて来たわけじゃないんだろ?」
 う。バカ正直な自分のバカ。
 あたしは返答に詰まり下を向く。
 海のはるか上空を旋回する鳥の、甲高い声。わざとそれに合わせるかのように、鮫島先輩は口を開く。
「俺、か」
 砂が、熱い。
「高崎、か」
 太陽が、熱い。
「それとも、水島、か」
 顔が発火するような気がした。
 あたしは熱くなった頬を両手で押さえる。
 この人、分かってたんだ。わざわざ遠まわしに言わなくてもいいのに、分かってて口にしたんだ。
「・・・・・・ビンゴ」
 いつの間にか振り返って見下ろしている鮫島先輩は、口の右端を吊り上げて、目だけ残して笑った。

「いいよ。手伝ってあげる」
 キラキラと全身に太陽の光を受けながら、鮫島先輩は言う。
 さっきと今のこの変わりようは何だ。ついさっきまで「ヤダ」とかちっちゃい子みたいに人の話も聞かなかったくせに。
「い、いえ、いいですよ。手伝うだなんてそんな・・・・・・」
 余計なおせっかいは必要ない。それが逆効果になるケースだって少なくないのを知っているからだ。某友人二名含み。
「別に深入りするつもりはないし。するっつっても、お前らを一緒にいさせてやることぐらいしか出来ないし」
 おぉ。何だその魅力的な提案は。
 あたしは前のめりになって、その話を聞く。
「そうだな、うーん」
 歩調を速めてその横顔を覗き込むと、鮫島先輩はあごの辺りを指先で覆うようにして、何かを思案していた。その口元がうれしそうに吊り上がる。
「うん。完璧」
 そう言うと、鮫島先輩はこっちを向いて「任せとけ」と言った。
 何だかよく分からないが、あまり関係のないあたしのためにそこまでしてくれることが有難くて、「ありがとうございます、師匠!」と敬った。
 鮫島先輩は一瞬驚いたようだったが、まんざらでもないらしく、「よし、ついて来い、弟子!」と言った。
 案外、ノリのいい人である。





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