飛鳥5(8月2日、5)
五
「前に花火あったろ? あのとき俺、鮫と行ったんだけどな、その帰り際に、あいつなんからしくないこと言ってたから」
俺は自然と前のめりになる。
「うん。『面白い奴見つけた。水島っていうんだけど、どうやら雅ちゃんのこと好きらしいんだ』って」
え、と思う。
水島って・・・・・・真琴のクラスメイトの奴じゃないのか?
そいつが、鈴汝を?
「なぁ、どう思う火州?」
「あ? あぁ」
鮫島はあの時水島に会ったのか? 鈴汝も? その時高崎は一緒じゃなかったのか?
俺は動揺が隠しきれない。
その時やっと注文したものが届く。そうして喜ぶ高崎を、うまく話しに戻すよう仕向けると、高崎は再び話し始めた。
「一見したら、ただ単に人の恋愛にチャチャ入れて、からかってるようにしか思えないかもしれんが、あの鮫が、だぜ?」
そう言ってパフェを一口食べる。その頬がだらしなく緩む。
ちょっと待て。何を言いたいのか、よく分からない。高崎はぼんやりしている俺を見て、自身の考えを噛み砕きながら、丁寧にしゃべる。
「鮫が気に入った人間以外に全く関心を示さないのは、お前も知ってるだろ? なら無関心な人間の事情なんて、わざわざ口にしないだろ?」
何故だか不穏な空気に包まれる。たぶん俺だけ、包まれる。首元がザワザワする。
「水島、なんて単語は、俺もそのとき初めて聞いた。そもそも関わりのない相手に鮫が自ら近づくなんて、お前が自ら女に寄ってくのと同じくらいの怪奇現象だぜ?」
そう言って、高崎はニヤッと笑う。俺は、苦笑いする。
「じゃあ例えばそれが、誰か、を通じて知り合った相手だとするなら?」
俺は、やはり分からない。脳が、分かりたくない。
「仮に」
高崎は上体を反らし、首をねじって後ろを振り返る。視線の先は、ファミレスの入り口。
そうして鮫島がいないことを確認すると、再びテーブルにぶっとい腕を乗せる。
「雅ちゃんを挟んで、の間柄だったとしたら?」
俺は、鮫島が言っていたことを思い出す。
〈雅ちゃんはさ、構って欲しかったんだよ、きっと〉
〈なぁ火州お前、いい加減どっちかにしてやれよ〉
〈あのままじゃ、かわいそうだ〉
鮫・・・・・・島・・・・・・?
「だーもう、暑いっつの! マジで、ありえねぇ、ありえねぇ」
半そでの袖をさらに捲り上げて、鮫島が戻ってくる。
高崎がそれを受けて「今日はおうちん中で過ごす日だぜ」と笑う。その傍らで、俺は鮫島をまっすぐ見れない。
「はい、お待たせ。続き話していーよ」
鮫島は再びどっかりと腰を下ろすと、タバコのビニールをはがす。
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